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数分後
洗面台で入念に手を洗い
いつもの柔らかなパイル地の部屋着に着替え終えた純一が、リビングのドアを勢いよく開けた。
「終わったよっ!りひとさん……っ!」
まるで百点満点のテストを提出する子供のように瞳を輝かせながら
ソファに腰掛けていた俺の元へと突進してくる。
そして、俺が引き止める間もなく
俺の膝の上へとぴょんっと軽やかに跨り、正面から満面の笑みで見つめてきた。
太ももの裏に触れる純一の体温が、部屋着越しでも驚くほど熱い。
「りひとさん…っ、えへへ…ちゅーしよっ……♡」
「ん、いい子だね……純一」
その健気な期待に全力で応えるように、俺は彼の項を手で支え、そっと唇を重ねた。
最初は、驚かせないように優しく触れ合うだけの、挨拶のような軽いリップ音。
しかし、純一が「んぅ……」と切ない鼻声を漏らして俺の首筋に両腕を絡めてきた瞬間
それは一気に深くて濃厚なものへと変貌を遂げていった。
細い腕が微かに震えながら、しがみついてくる感触がたまらなく愛おしい。
チュッ、ジュル……と、静かなリビングに濡れた淫らな音が響き渡る。
互いの舌を深く貪り合うように、何度も角度を変えて絡ませ合う。
純一の口内は、さっき食べたケーキの甘さがまだほんのりと残っているような気がして
俺の脳の飢餓感をどこまでも煽ってきた。
「んっ、むぅ…ぁ…はぁ、んむっ、はぁ……っ♡」
「純一の可愛い唇、早く堪能したくて仕方なかったよ…」
「ぼ、ぼくも……んっ、りひとさんとのちゅーが、せかいでいちばんしゅき……っ♡ んぁっ♡」
息継ぎをする暇すら与えないほど、激しく深く求め合う。
そのたびに純一の割り切れない感情が、甘い吐息となってこぼれ落ちていく。
それは蕩けるような甘美な声と共に、心理士としての俺の脳の奥深くに響き渡り
客観性という名の防壁を跡形もなく揺さぶってきた。
(……なんて可愛いんだろう)
夢中で熱い口づけを交わすうち
俺の指先が、純一の火照った頬を伝う冷たい涙の跡に触れた。
ハッとして薄く目を開けると、彼の長い睫毛が濡れ、大粒の涙がポロポロと零れ落ちていた。
高次脳機能障害の特性でもある
感情の失禁──
激しい快感や、一日中張り詰めていた緊張からの解放感が、涙腺のコントロールを失わせているのだ。
俺はゆっくりと唇を離すと
その真珠のような涙の粒を指先で優しく拭いながら、声を落として問いかけた。
「純一、大丈夫?…ちょっと、激しすぎた?」
不安にさせてしまったか、脳が疲れてしまったかと心配したが
純一は真っ赤になった顔をさらにふにゃりと歪めて、幸せそうにはにかんだ。