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柴田
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#バイオハザード
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──なるほどなぁ。これを狙っていたのか⋯⋯?
蒸気に埋め尽くされた地上で、イルヴァは腕組みをして考える。メチャクチャな作戦に思えるが、一応理には叶っている。完全に見失ってしまった。
(ま、問題はなかろう⋯⋯アイツも俺と同じ、互いに狙いあっているんだ。待っていれば⋯⋯)
突如、ぐわんとイルヴァの視界が強烈に歪む。これは⋯⋯。
「幻覚魔術か!」
かなりの高魔力を練って作られた幻覚世界。抜け出すのは骨が折れそうだ。
「カグア、引っ込んでろよ!!」
「ひぃぃっ!」
精神属性中位魔術──『幻牢・極』!
イルヴァの目に映るのは、これでもかというほどの、大量のダミーアステル。すべて幻覚だが、どうやら偽物が持つ剣だけは、ちゃんと用意したらしい。持ち手を離れて、フヨフヨと僅かに浮かんでいた。
(岩を拾って剣に見立てたが、拾えた岩の数は少ないし、刺せはしないだろうな⋯⋯ま、そこはまた別のトリックで⋯⋯!)
イルヴァがドコドコドコッと棍棒のように剣で殴られる。俺が操る剣だ。多少のダメージは入るんだが⋯⋯すべてその身で受けやがった。
「お前だな。1本だけ俺の身体を貫通したぞ!」
そう言うとイルヴァはアステルに手を伸ばし、アッサリと捻り潰す⋯⋯が、その身体は霧散して消えてしまった。後にはフワフワと浮かぶ魔剣だけ⋯⋯。
「ざーんねん、それも幻覚だぜ!」
火属性上位魔術──『煉獄門』!
イルヴァの身体を獄炎が包み込み焼き続ける。
幻覚の俺に本物の魔剣も渡しておいたのである。これなら本物の俺を探すのがより難しくなったわけだ。
術を解除すると、服が焼け落ちたイルヴァが健在だった。フッとかつてユウマが着ていた制服に変わり、イルヴァは『魔力刃』を大量に生成する。
「チッ⋯⋯ずいぶんと舐めてくれる。ならば、すべて消し飛ばすまで!!」
「幻覚だって言ってるだろ⋯⋯」
(下手な鉄砲も数打ちゃ当たる、かな⋯⋯俺を意地でも見つけようってか)
だがまぁ、それなら都合がいい。あのやり方じゃあ、本物の俺は見つけられないぞ⋯⋯?
アステルから高魔力をもらったカグアは、少し離れた場所で『幻牢・極』を常時展開しながら、ハラハラと見ていた。
アステルから頼まれたことは2つ。1つ、できる限りのダミーの幻覚を見せ、時間を稼ぐこと。2つ、本物のアステルが存在しないように見せること⋯⋯。つまり、イルヴァには本物が見えることはないのである。カグアの幻覚が解除されない限り⋯⋯!それにしたって⋯⋯。
(なんであの人は結界も、氷壁ひとつすら張ってねぇんだ!? 狙われないとはいえ、まぐれで喰らったりでもしたら⋯⋯!)
『氷鏡界』や『絶対防御』を張っていると、防いだときにバレてしまう可能性がある。それはカグアにも分かる。ただ、あまりにも危なすぎる作戦だった。現に、アステルは肩や足に掠り傷を負っている。それでも、そこまでするのは、きっと⋯⋯。
アステルはずっと、探しているのである。ユウマが残したであろう、ユウマの遺言たる、『黒空』の術式を──。
あの洞窟にあった手紙に残っていた、魔力の残滓。それが『瞬時空間転移』の術式であることは、なんとなくだが察していた。断片的にしか残っていなかったが、再現できれば、対イルヴァには有効な突破口になるはずだ。ずっとその身体に接近し、術式の記憶を読むことを狙っていたのである。そして、今がまさにそのチャンス。
アステルはイルヴァの背後に接近し、触れるか触れないかのギリギリで頭に手を伸ばした。そしてそのまま、精神世界へと入り込む──。
──ユウマ〜、いるのか? いたら返事してくれよ。なぁ! ミユたちもいるんだぞ⋯⋯ずっと待ってる。帰ってこいよ⋯⋯⋯⋯俺も、
「!」
アステルは悟ったように前を見つめた。ありふれた記憶のなかに浮かぶ、それは⋯⋯。
──あぁ、分かった⋯⋯ありがとう。
全てを理解したアステルは、イルヴァから離れて念話をかける。覚悟は決まった。
《カグア。もう、解いていいぞ》
《⋯⋯⋯⋯はい》
イルヴァの視界が現実へと戻る。大量のダミーは消え失せ、その後に本物のアステルがユラリと現れた。ガラガラと剣を模した岩も、地面へと落下していく。
(すべて偽物だった⋯⋯? 肩に掠り傷⋯⋯あ? じゃあ何か? いないように見せるだけで、防御すらしなかったってのか? まったく、このガキは⋯⋯)
随分と楽しませてくれる。
「どうした? かくれんぼはお仕舞いか?」
「あぁ、もう十分だ。理解できた」
「ククッ、長かったなぁ⋯⋯やっとわかったか。そうさ、君が俺に勝つことは⋯⋯無い」
勝ちを確信しているイルヴァは、心底楽しそうに、ニタニタと笑った。ユウマの顔でそれをやるのだ⋯⋯本当に、反吐が出る。
「なぁ、死ぬ前に教えてくれよ『天子』⋯⋯なぜお前がここまでする必要がある? ユウマと知り合いだったか? それはないだろう⋯⋯ユウマの記憶にも、お前の顔はないからな」
「⋯⋯」
「それとも何か? あの異邦人どもに情でもあるのか? そんなわけもあるまい⋯⋯キミは俺と同じだよ。何かが欠けている⋯⋯そうさ、『魔族』と同じなんだ」
イルヴァは酷い笑みで、声で続けた。
「コチラへ来い、『天子アステル』! この国を、世界を、混沌へと導こうじゃぁないか!」
俺とキミなら、それができる。
「ハァ⋯⋯お前には分からないんだろうな」
そう言って俺はチラリと下を伺った。森ではみんなが戦っている気配がする。
「人は弱い。だから積み重ねてきた。積み上げてきた。それが剣でも、魔術でも同じだ。一つ一つの技には、込められた思いがちゃんとある⋯⋯叶えたいと思った、『夢』が」
それが醜い願望でも、ちゃんと技として受け継がれるんだ。
「お前の『夢』⋯⋯いや、欲望には、それが微塵も感じられないんだ。あくまでもそれは『目的』だろう? その先にあるものはなんだ?」
「⋯⋯貴様に教えるようなことではない」
「だからだよ。だから単純で、ツマラナイ」
魔力刃も呪言も、やろうと思えば俺にだって使える。脅威に思えるのは、威力が馬鹿げてるからだ。ただ、それだけ。単純に強いだけなんだ。そして、唯一無二の、その技すらも⋯⋯!
「フン、よくわからんが、まぁいい。そんなに死に急ぎたけりゃ⋯⋯『死 』っ!?」
イルヴァの『呪言』。それを最後まで言い切る猶予は与えない。
二重の六角形──ダブルヘキサゴンの黒い線が、俺を囲む。発動したのは⋯⋯
──『黒空』──。
「ガァァァア!?」
俺はイルヴァの懐に転移し、腹にコークスクリューパンチを決める。『巡息術』で強化済み。華麗に決まったそれは、イルヴァを地に倒れ伏す結果へと導いた。
「ハッ、今のパンチに魔力は使ってないぞ⋯⋯? 『巡息術』だ。まぁ、『剛身』で臓器から何まで、耐久性を高めてやった結果だがな⋯⋯」
(っ巡⋯⋯!? なんっだ、それは!! いや、問題はそこじゃない⋯⋯!)
「人間はどこまでも進化するぞ⋯⋯? 現に今、俺がお前にやっと一撃喰らわせたように、な⋯⋯」
(このガキ⋯⋯なぜ、なぜ俺の『黒空』を使えてぇ⋯⋯!!)
「さぁ、今度はお前だ⋯⋯あと何回、あとどれだけ追い詰めれば、魔族の進化とやらを見せてくれる? ずっと⋯⋯ずっと、待ってるんだ⋯⋯」
──なぁ、返せよ。
コメント
2件
ダブルヘキサゴンの意味は 「長寿」「繁栄」「安定」「調和」そして「幸運の広がり」。非常に縁起の良い吉祥文様です
うわっ今回も熱すぎた…!!🔥 アステルがユウマの記憶から『黒空』を受け継ぐ流れ、めっちゃエモかった…😭✨ ずっと探してた術式を掴んだ瞬間、鳥肌立ったよ!! 「お前の『夢』には微塵も感じられない」ってアステルの台詞、グサッときた…。イルヴァの空虚さが際立つ良い対比だね。それにしても防御すら張らずに近づくアステルの覚悟、カッコ良すぎでは??次回が待ちきれないよ〜!!