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#鬱展開
Mist-404
1,165
mogyumogyuGemi
646
GENESIS・中央制御区画
ビーッ――! ビーッ――!
赤い警告灯が一斉に点灯する。
《GENESIS PHASE II――最終工程開始》
施設全体が大きく振動した。
「進化……?」
ソウヤが暗闇の人物を睨む。
イレイダはすでに刀を構えている。
その隣にはアリス。
さらにネリクマ。
結衣とタジ、千太も後方で警戒していた。
「ソウヤ、下がってろ。」
イレイダが前へ出る。
ソウヤは首を振る。
「俺も戦う。」
「無茶するな。」
「分かってるって。」
イレイダは小さく笑う。
暗闇の人物が静かに手を上げた。
「予定外の能力者が増えた。」
「特に――」
視線がネリクマへ向く。
「破壊能力者。」
ネリクマは無表情で返す。
「知らない人に能力分析されるの嫌なんだけど。」
「同感だ。」
イレイダが踏み込んだ。
三人の連携
ダンッ!!
床が砕ける。
イレイダが一気に距離を詰める。
横薙ぎ。
人影が後退。
しかしイレイダは逃がさない。
身体を反転させ、その勢いのまま二撃目。
ギィィン!!
今度は何かに弾かれた。
「障壁か!」
その瞬間。
「止めます!」
アリスの右目が輝く。
Space-time Operator――時空操作。
――世界が止まる。
空中の破片。
点滅していた警告灯。
イレイダの髪。
全てが静止する。
ただし――
アリス自身は動ける。
「今よ……!」
能力対象として干渉されたイレイダが再び動く。
「助かる!」
停止した世界。
敵の障壁へ向かってイレイダが刀を振り上げる。
だが――
アリスが目を見開いた。
人影の指が、
僅かに動いた。
「え……?」
完全停止しているはずだった。
直後。
アリスの右目に激痛。
「っ……!」
時間停止が解除される。
ゴォッ!!
世界が再始動。
「アリス!」
イレイダが振り返る。
アリスが右目を押さえて膝をつく。
「大丈夫……まだ……。」
「無理をするな!」
ネリクマ
その横をネリクマが歩いていく。
「じゃあ次、私。」
人影が障壁を展開する。
ネリクマは拳を振り上げない。
走りもしない。
ただ――
障壁へ手を置いた。
strāgēs(破壊)。
ピシッ。
「……!」
人影が初めて明確に反応する。
亀裂が障壁だけを走る。
バキバキバキバキッ!!
バァン!!
障壁が崩壊。
ネリクマはそのまま相手へ手を伸ばす。
だが――
「危ない!」
千太が叫んだ。
ネリクマが即座に身体を反らす。
ズバァン!!
目の前を黒い何かが通過。
背後の壁が大きく抉れた。
ネリクマが振り返る。
「……。」
珍しく表情が険しくなる。
「今の、当たったらヤバかった。」
イレイダがネリクマの横へ並ぶ。
「一人で突っ込むな。」
「イレイダもよくやるじゃん。」
「私はいいんだ。」
「なんで?」
「……今それ話すか?」
ソウヤ
敵の視線が二人へ向いている。
ソウヤはその隙を逃さなかった。
「今だ!」
走る。
人格転移は使わない。
自分自身の身体で。
レイが指示する。
「左から入れ。」
ソウヤが軌道を変える。
「三歩。」
一歩。
二歩。
三歩。
「今だ。」
ソウヤが拳を振り抜く。
ドゴォッ!!
初めて――
拳が人影の顔面を捉えた。
相手が吹き飛ぶ。
「入った!」
だが。
ソウヤの表情が変わる。
拳に残った感触がおかしい。
「……人間じゃない?」
倒れた人影の顔面に亀裂が入る。
表面が剥がれ落ち――
その下から機械構造が露出した。
タジが叫ぶ。
「アンドロイド!?」
偽物
機械人形がゆっくり起き上がる。
口から、先ほどと同じ声。
「観測終了。」
ソウヤが歯を食いしばる。
「じゃあ最初から……!」
「ここにいたのは端末にすぎない。」
「本当の目的は、お前の観測だ。」
ソウヤの背筋に寒気が走る。
「俺の……?」
機械の顔がソウヤを見る。
「そして――」
「お前の中にいる人格の観測。」
レイが低く呟く。
「……やはりそうか。」
タジの侵入
「だったら!」
タジが端末へ手を伸ばす。
「こっちからも調べてやる!」
目を閉じる。
意識が現実世界から切り離される。
Invader(侵入)。
タジの意識がGENESISのネットワーク内部へ飛び込む。
膨大な情報。
研究記録。
能力者データ。
人体実験記録。
タジの脳へ一気に流れ込む。
(多すぎる……!)
鼻から血が流れる。
結衣が気づく。
「タジ!」
しかしタジは止めない。
(探せ……!)
(ソウヤのデータ!)
検索。
TRANSMIGRATIO
ヒット。
「……あった!」
しかし――
ファイルは何重にも封印されていた。
さらにその奥。
タジは別の文字を見つける。
GENESIS
その下には、
人物名ではなく――計画情報として記録されている。
(やっぱり……。)
(GENESISは人間の名前じゃない。)
さらに深部へ。
そこでタジの意識が止まった。
「……何だこれ。」
名取家・地下戦線
同時刻。
名取惣一、千藤院刹那、夜鳴鵺夢幻。
三人の前に、黒い靄が凝縮していく。
夢幻が前へ出る。
「来ます!」
黒い塊が人型へ変化。
一体。
二体。
十体。
刹那が刀を抜く。
惣一が静かに周囲を見る。
「数が多いな。」
「問題ありません。」
刹那が構える。
夢幻も口元に僅かな笑みを浮かべる。
「三人いれば十分です。」
惣一が前を向く。
「行くぞ。」
ここには能研はいない。
NWOも。
ハルシオンも。
名取家だけ。
三人の単独戦線が、本格的に始まる。
東京湾・グランVS間宮
ドゴォォォン!!
間宮の身体が海面へ叩きつけられる。
グランが追撃。
だが間宮は複数の障壁を展開する。
バキン!
一枚。
バキィン!!
二枚。
グランは止まらない。
三枚目を拳で粉砕。
間宮が距離を取る。
「相変わらず……規格外ですね。」
グランの赤い片目が間宮を捉える。
「終わりか?」
「まさか。」
間宮が笑う。
「むしろ――」
GENESISから巨大な光柱が空へ伸びる。
ゴォォォォォォン!!
マランが振り返る。
「何だ……!?」
ペインも笑みを消す。
グランだけが間宮を見続けている。
「これがお前の目的か。」
間宮は答える。
「第二段階です。」
ハルシオン
艦橋が激しく揺れる。
「隊長!GENESISから高出力反応!」
「結界を最大出力!」
フランが即座に命令する。
ハルシオンを中心に巨大な防御領域が展開される。
その時。
オペレーターが叫ぶ。
「別の反応!」
「何だ。」
「GENESIS内部に――」
画面を見る。
「Space-time Operatorとstrāgēsを確認!」
フランが僅かに笑う。
「なるほど。」
「あの二人か。」
既知の人物。
だから驚きはしない。
むしろ――
「なら、まだ勝負は終わってない。」
タジが見つけたもの
GENESISネットワーク最深部。
タジは一つの記録を見つめていた。
それはソウヤのデータではない。
レイでもない。
Azの研究対象一覧。
膨大な能力者の名前。
その中に――
タジが知っている名前がいくつも並んでいる。
能研。
NWO。
ハルシオン。
マスタークラウン。
そして――
ネリクマ。
「こいつら……。」
タジの表情が青ざめる。
「最初から全部調べてやがったのか……!」
さらに画面が切り替わる。
最上部。
特別指定された対象。
TRANSMIGRATIO
タジがファイルを開こうとする。
警告。
《ACCESS DENIED》
その瞬間。
画面に別の文字が浮かんだ。
《侵入者を確認》
「……やべ。」
現実世界
タジの身体が激しく痙攣する。
「タジ!?」
結衣が支える。
「戻ってきて!」
ネットワーク内部。
無数の防御プログラムがタジへ襲いかかる。
(まずい……!)
逃げる。
だが出口が閉じていく。
その瞬間――
現実世界でネリクマがタジの接続している端末を見る。
「これ壊せば戻ってくる?」
イレイダが叫ぶ。
「待てネリクマ!コイツごとどうなるか分からない!」
「じゃあどうするの?」
ソウヤがタジを見る。
「タジ!」
反応はない。
そして――
GENESIS内部の全モニターに間宮トオルの顔が映った。
『侵入は感心しませんね。』
ソウヤが振り返る。
「間宮!」
東京湾でグランと戦っているはずの間宮が、画面越しに微笑む。
『見てはいけないものを見た。』
『ですから――』
タジの身体が跳ねる。
『彼には、ここで退場していただきましょう。』
「タジ!!」
ネリクマの表情が変わる。
アリスが右目を開く。
イレイダが刀を構える。
ソウヤの拳が震える。
その瞬間――
レイが静かに告げた。
「ソウヤ。」
「今だけは――」
ソウヤの瞳が変わり始める。
「私に代われ。」
transmigratio――人格転移。
ソウヤの口元から表情が消える。
立ち方が変わる。
呼吸が変わる。
そして――
その場にいる全員が感じ取った。
さっきまでのソウヤとは、
まるで別人。
イレイダが目を細める。
「……レイ。」
人格が切り替わったソウヤが、ゆっくり顔を上げる。
その瞳に迷いはない。
「タジを連れ戻す。」
その声も。
その言動も。
完全に――レイだった。
第79話 完
コメント
1件
いやあ、もうね……第78話、すごかったです。複数の戦線が同時進行する中で、特に印象的だったのはやっぱりネリクマの破壊能力の描写ですね。「障壁に手を置くだけ」であの亀裂の入り方、そして崩壊。能力の名前が「strāgēs」というのも、語源っぽくて設定好きとしてはたまらなかったです。あとソウヤの拳が初めて入った!と思ったらまさかのアンドロイド。ここで「観測用の端末」だったって明かされる、あの構成が本当に巧い。そして最後のレイへの人格転移……「今だけは私に代われ」の一言で空気が変わる感じ、現場にいたら震えたと思います。タジの退場劇も含めて、一話の中で感情がジェットコースターだった。続きが気になって仕方ないです。