恵菜と純が正式に恋人同士となった翌週。
二人は、横浜へドライブに来ていた。
恋人としてデートするのは初めてという事もあり、彼が、横浜に行こうと言ってくれたのだ。
横浜に到着したのは正午を少し回った頃。
ランドマークタワーの駐車場に純の愛車を止め、みなとみらい、山下公園を散策した後、赤レンガ倉庫まで足を伸ばして、ウィンドウショッピングを楽しんでいる。
天気も良く、三月に入ったのに、外はかなり暖かい。
青い空に、桜木町駅から運河パークまで繋がっているロープウェイ、色とりどりの景色が恵菜の心を弾ませる。
恋人と一緒にいるせいなのか、彼女の瞳に映るもの全てが、彩度と明度を増して見えた。
「横浜に来たのは久しぶりです……!」
「俺も。学生の時に来て以来かもしれないな……」
恵菜の手は、純にしっかりと握られ、時折、彼が彼女を見下ろし、穏和な笑みを見せてくれる。
「あ……」
赤レンガ倉庫内のジュエリーショップの前で、彼が足を止めた。
「純さん? どうしたんですか?」
「あ……ああ…………いや……何でもない。ってか、腹減ったから、メシにしようか」
恵菜が小首を傾げながら純を見上げると、彼は照れたように、はにかんでいる。
彼女はそのまま手を引かれ、純は一つ上のフロアにある、和洋折衷の雰囲気が素敵なカフェに入っていった。
(純さん、何だか慌ててカフェに来た感じだったけど…………どうしたのかな……?)
ダークブラウンの内装がシックな店内を通り過ぎ、二人は、テラス席に案内されると、みなとみらいと横浜港が一望できる景観に、恵菜は『すごい…………素敵……』と感嘆の声を零していた。
「俺も横浜は久しぶり過ぎて……。カフェとかショップとか、事前にリサーチしておいたんだ」
彼の気遣いが、恵菜にとっては嬉しい事この上ない。
店員が二人のテーブルに来ると、純はビーフシチューのライスプレート、恵菜はグリルチキンのライスプレートを注文した。
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