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羽海汐遠
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#王国
星崎 ヒロア
333
天音ろっく
275
妖術師とは、人類の脅威となる妖と犯罪者である魔術師を討伐する事を生業とした人物。
その役割に人生を捧げ、幸せに生きる事を選べず、ただ誰かの道具として人間の為に戦い続ける術師。
「道具として扱われた妖術師の果て、とでも言うのかな」
『あぁ、最悪だな』
妖術師であった父親“八重垣 肇”も同じ。
東京大規模魔法事件の首謀者を探す為にSaofaを設立したが、税金の無駄使いだと政府によって解体された。
しかしそれでも魔術師を探し求め、人々を救おうと身を粉にして戦い続けた。
「その結果、妖術師は孤独と共に歩む羽目になった」
『あんな奴ら助けたって、なんの役にも立たねェのに』
妖術師は駒だ。いいように扱われ、人としての尊厳は踏み躙られ、誰からも理解されない。
「政府の為に死ぬほど戦ったって言うのに、たった一回の魔術師の演説でコロリと寝返ってしまうとはね」
『やっぱり人間はクソだ。大きな肉塊、喋る憎悪だ』
妖術師は敵だ。今の世間では妖術師を含むSaofaの術師は敵と判断され、魔術師が正義側へと回っている。
それもこれも全て魔術師の狙い通りなのだろう。思い描いた道筋を綺麗に通り、思った通りに物事が進んで行く。
「………気に入らないな」
『―――もう辞めちまえよ 』
―――それを、俺は許すのか?
妖術師として、何よりも一人の人間として、悪事を働き世の人々を脅かす存在を野放しにして安心出来るのか?
「私はこの不条理が気に入らない。彼に全てを押し付けたこの世界も、そしてそれに甘えていた私自身も」
『………疲れたんだよ。俺は』
まだ悲鳴を上げている人が居るかもしれない、助けを求めている人達が居るかもしれない。
偽・魔術師によって奪われた命が、いまこの瞬間に増え続けているかもしれない。
それでも、俺は許せるのか?
こんな理不尽な状況に追い詰められ、無垢の陰陽師と戦うことになり、外の状況すら分からず半分諦めかけている“俺”を許せるのか。
「だから、私は彼に遺す。唯一の希望とこの先の救いを信じて」
『これ以上戦って何になる?全てを魔術師に渡しちまえば事は収まる』
勿論、答えは否だ。
許せる訳がない、許す慈悲など俺は持ち合わせちゃいない。
俺にはまだ、やるべき事が多く残っている。その全てを終わらせるまで、死ぬことは決して許されない。
それが、俺の背負った罰でもあり、宿命。
「さぁ立て、妖術師。今度は独りじゃない、みんなが君と戦う」
『お前は、俺は孤独だ。誰にも必要とされず、ただ一人で進み続ける道具でしかない』
雑念を振り払え、戦う意志を叫び続けろ。何人たりともこの手から零さず、魔術師を全員殺して見せろ。
俺は妖術師だ。魔術師と妖を狩る事を生業とした、世界にたった一人だけの妖術師。
『諦めちまえよ』
声に惑わされるな、進め。
その声は俺じゃない。俺の意思で発せられている言葉じゃない。
『…………止まれば楽になれるのにな』
止まれば楽になる。
それは間違いだ。
俺は楽なんかを求めちゃいない。
ただ進み続けて道を切り開き、後からついてくる者たちへ希望を齎す。もしそれが苦であるなら、俺は“ソレ”を求める。
「―――本人がこう言ってるんだ、邪魔をするな。どんな戯言を述べようと、彼の意思は変わらない。彼が妖術師である以上、諦めは無いと知れ」
じきに目覚める。
次の“遡行”地点は恐らく、『黒鶫』によって精神世界が崩壊した後の場面。戻ってすぐに戦闘開始となるだろう。
だから、俺はもう躊躇しない。躊躇などしてられない。―――俺は無垢の陰陽師を殺してみせる。
「また会える。その時は、起きた出来事全てを面白おかしく話してくれ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「………、ているのか、聞いているのか。妖術師」
目を開けてすぐ、視界に映るのは無垢の陰陽師ただ一人。
案の定、目覚めた地点は『黒鶫』で精神世界を崩壊させた直後。
「…………。次の地点はここか」
どんどん死ぬ度に、“遡行”の間隔が短くなっているのを感じる。
とはいえ、“遡行”の法則性を完全に見破った訳ではない。平均的にみて、そう感じるだけだ。
実際に、リスタート地点が直前だった時もあれば、凄く遠かった瞬間も存在する。
なんにせよ“遡行”の回数が有限である可能性が高まった今、手短に不明の魔術師と対峙し、全ての事を終わらせる必要がある。
「さっきから訳の分からん事を………この精神世界を破った程度で図に乗るなよ」
絵に書いたようなやられ役のテンプレ構文だが、この無垢の陰陽師はやられ役などではなく、本物の実力者。
特にあの刀。………いや、正式に刀と呼べる造形はしていないが、“天叢雲剣”と呼ばれている神器。
起きた事象を完全に決定する。なんてふざけた奇跡を起こせる規格外な力を保有している。
アレをどうにかしない限りは、無垢の陰陽師の攻略はほぼ不可能に等しい。
「図になんか乗っちゃいねェよ。精神世界の破壊なんざ第一歩に過ぎねェ。こっからが本番だ」
見ろ。今の俺に出来る事は、無垢の陰陽師の攻撃を見極め、次に活かす。
なるべく“遡行”はしたくないが、今回はせざるを得ない。俺に許された時間を全て使って、無垢の陰陽師の弱点を見つける。
「―――なら、私の全身全霊。その身で受けてみろ」
喋り終わる寸前に、無垢の陰陽師が動く。
力強い踏み込みに、洗練された無駄のない構え。長年生きて戦ってきた事実を技で表していた。
だが、それは俺も同じ。
無垢の陰陽師ほどではないが、“遡行”を何度も繰り返したおかげで、強敵相手との戦い方がある程度分かって来た。
「『黒影・深層領域』」
俺の影が蠢き、無垢の陰陽師へと迫る。
手足を拘束しようと触手のように伸びた影はあっさりと回避され、その根元から“天叢雲剣”で断ち切られた。
無垢の陰陽師は踏み出した速度を維持したまま、俺の頭を目掛けて“天叢雲剣”を振るう。
「………おうっと!!」
俺は咄嗟に“太刀 鑢”を影から取り出し、“天叢雲剣”を真正面で受け、激しく火花が散る。
ほんの数秒、たったの数秒だけでも反応が遅れていたら、今の攻撃は受けきれずに死んでいたかもしれない。
それ程までに速い動き。並の術師であれば手も足も出ないが、俺はもう既に知っている。
「………右脇腹」
互いに刃で押し合い、少し距離を取ったのもつかの間。先程よりも速く的確に“天叢雲剣”が、俺の右脇腹へと襲いかかる。
普通の術師であれば、反応出来ずに即死となる攻撃。
だが俺は、前回の戦いでその動きを知っている。
「見えてるぜ、その攻撃!!」
無垢の陰陽師が一歩を踏み出すと、それに反応して俺の影から“岩融”が放出された。
俺は飛び出た“岩融”を片手で受け取り、迫り来る“天叢雲剣”に対して、“岩融”の刀刃を勢い良く叩き付ける。
刀は側面からの衝撃に弱く、耐久値を越えた衝撃が強く加わった時、その刀身は一瞬にして―――。
「―――阿呆が」
無垢の陰陽師の脚が、俺の腹部へとめり込む。
人間とは思えぬ脚力で蹴られた俺は、立っていた地点から約5mほど離れた場所へと吹き飛ばされた。
「…………ぁあ”?」
堪えきれない痛みが腹部を中心にして、全身に広がっていく。
意識が朦朧とし、俺は立とうと身体を起こすがすぐに倒れてしまった。手も足も力が入らず、ずっと震えているようだった。
それと同時に、喉から熱い何かが逆流してくる。
「……っうぉ”えごほぉ”!!」
赤色と茶色の液体。
それは腹部にダメージを負ったことによる吐血と、衝撃に耐えきれず逆流してきた胃液だ。
『治癒の術』は常時フルで発動させているが、いつもより圧倒的に治りが遅く、何者かによって治癒が妨害されているのを感じる。
「………アイツの、刀…は?」
案の定、壊れない。壊れていない。
刀であれば今の攻撃で刀身が割れ、衝撃を受けた箇所が粉々に砕けていたはずなのに。“天叢雲剣”は未だに健在。
武器の保有者である無垢の陰陽師と、因果を断ち切る“天叢雲剣”。
やはり神器の破壊は一筋縄ではいかない。なら俺が取るべき行動は神器の破壊ではなく、次に繋ぐ為に無垢の陰陽師の全てを見る。
彼の魔術、妖術。攻撃、動きを見極めて記憶する。
「……ふぅ……骨は逝ってねェな。なんとか『治癒の術』は正常に動いてっから、ある程度は許容出来るはずだ」
攻撃を受けても気にするな、迷わず進め。
例え身体の何処かが破損したとしても、俺は無垢の陰陽師の攻撃を脳に焼き付ける。それが今回の、俺の役目だ。
「来い、可逆妖術の陰陽師」
“天叢雲剣”を携えた無垢の陰陽師が手を前へと向けて、かかってこいと言わんばかりに指先だけで手招きする。
「―――なら、言葉に甘えさせて貰うぜ!!『列狂 深紅桜』!!」
“太刀 鑢”の刀身が淡い紅色の妖力を纏い、迫り来る“天叢雲剣”と激しく接触する。
金属同士のぶつかり合い、飛び散った火花と“太刀 鑢”に込められた妖力が、まるで夜桜のように散った。
自らの運と引き換えに、俺は無垢の陰陽師からの攻撃を防ぐ事に成功した。
「………ほう」
その後も、俺は積極的に攻撃を仕掛ける。
数回の打ち込み、受け流されたり反撃を食らったが、致命傷にはならず。何度も何度も何度も何度も、無垢の陰陽師へと攻撃を行う。
無垢の陰陽師に防がれ、攻撃を返されるも、それを俺が『列狂 深紅桜』で防ぎきる。
無垢の陰陽師の動き、仕草、癖を鋭く観察しながら“太刀 鑢”と“天叢雲剣”が接触する音を聞き続ける。
「………今の攻撃はイマイチだが、先程の妖術だけは褒めてやる。中々に面白い」
何度も行われた無垢の陰陽師の攻撃、それを防ぐ行為の難易度は高くなく、『列狂 深紅桜』を使わずとも膂力だけで受ける事は可能だった。
だが俺がそうしなかった理由は、『列狂 深紅桜』の保有する、もうひとつの能力にある。
刀と刀が衝突し合った時に起こる“妖力の発散”。
舞い散る桜を連想させるソレは、純粋なエネルギーとして発揮されなかった妖力を、体外へと放出する。
放出された妖力に無垢の陰陽師が触れば、莫大なエネルギーと情報量を持った妖力が身体中に巡って行動不能になる。
「………これは」
「………はぁ、はぁ……さァどうする無垢の陰陽師。俺の妖力はテメェらとは違って、体内に潜り込ませりゃ自由に操れるンだぜ?」
打ち合い続けた末、無垢の陰陽師の周辺には広く散らばった妖力の残滓が無数に転がっていた。
無垢の陰陽師が妖術を扱えるとはいえ、俺の妖力を摂取するのはリスクが大きすぎる。
大量に撒かれた妖力の罠を回避しながらの攻防戦は、無垢の陰陽師にとって不利な状況。
さあ、どう出る。
動きにくい状態で、無垢の陰陽師はどのような手を使って俺を殺す。
「………それがどうした。その程度の妖術で勝った気になるなど、戦場を甘く見すぎだ。―――教えてやる、陰陽師の戦い方と言うやつを」
無垢の陰陽師が正面に手を翳し、指先を俺へと向ける。
その行為を見た時、俺の中で何かが警告を告げていた。逃げろ、今すぐ回避行動を取れ、なんとしてでも防げと悲鳴を上げる。
背筋に悪寒が走り、両腕両脚は鳥肌が立ち、俺はいつの間にか“太刀 鑢”を手放していた。
まずいまずいまずい。
これは予想外だった。まさか不明の魔術師が扱った『コズミック・ウェブ・バースト』以上にヤバいと感じたのはこれが初めてだ。
「………ッ『氷解銘卿』!!」
俺の足元を中心にして取り囲むように、高さ5mほどの氷の城壁が一瞬にして完成された。
これだけじゃ足りない。これから起こる事象に対して、この程度では全く意味がないと思い、次の妖術を発動させる準備へと移る。
「………これでどうにか―――。」
だが、もう遅い。
無垢の陰陽師は何も言うことなく、手を前に翳していただけだというのに、術の発動は既に成功していた。
「おいおい……嘘だろ……」
水色に光る足元を見れば、奥行が無限にも見えるこの空間、その全体を覆い尽くす程の魔法陣が展開されていた。
端が見えない魔法陣。この規模の魔法陣となれば、『東京大規模魔法事件』とほぼ同じかそれ以上。
コレはもう魔術の域を越えている。
魔術より遥かに優れ、選ばれた者にしか扱えず、それは日本国そのものを消し去ることさえ可能となる。
魔術師や妖術師。それ以外の術師の中でも、『東京大規模魔法事件』が起こるまでは都市伝説とされていた代物。
「―――これが“魔法”。」
「そうだ、お前は初めて目にするだろう。現代の術師であれば初めて見るかもしれないが、陰陽師の時代ではそう珍しくない」
俺はその言葉を聞いて、笑うことしか出来なかった。
それも絶望の苦笑。こんな大規模かつ常人離れした魔法を見せつけられて正気を保てる術師は居ない。
「最期に何か言い残すことはあるか」
ここまでか。その言葉が何度も脳裏を過ぎる。
今の俺が無垢の陰陽師と渡り合える最終到達点。常軌を逸した“魔法”の存在証明と無垢の陰陽師の切り札。
それが確認出来た今、この世界における俺のやるべき事はもう無い。
「………そうだな、テメェの“魔法”には圧倒されたぜ。魔力の密度、その破壊性は測りしれねぇが、一発でコレはヤバいって分かる代物。こんなのが陰陽師時代で使われてたってなりゃ、相当殺伐とした時代なンだろうな」
たった一度の魔法展開。この術が一体何を引き起こして、どうなるのかは知らない。
淀みの無い澄み切った魔力で編まれた約定。術者による魔力の供給、それを元にした魔術の発動。
等価交換と言っても過言では無いソレは、ある意味、錬金術師と同じ。
全ての術師の祖である陰陽師がどれ程までに強者であるか、どれ程までに俺たちがか弱い存在であるか理解した。
「でもなァ、テメェは一つ勘違いしてるぜ」
俺のやるべき事は終えた。
魔法の展開に陰陽師の攻撃パターン、それらは全て『鑑定』によって記憶に保存されている。
第一の目的であったそれらは既に終えている。
だから、これから行うのは第二の目的。俺のやるべき事ではなく、俺がやらなければならない事。
「―――勘違い、だと?」
俺はモッズコートの内側ポケットに手を入れ、緑色に輝くひとつの宝石を取り出す。
かの錬金術師が不明の魔術師と戦闘を行い、死んだ。
俺はその瞬間を見てないし、死んだ事について誰からも聞いちゃいない。けれど、彼が俺に託したこの宝石を見れば、一瞬で理解出来る。
Saofaのリーダーであり、俺たち術師を取り纏めた功労者。永嶺 惣一郎が保有していた『七つの罪源』のカートリッジ。
この宝石はそのカートリッジから摘出された、魔術の一切を受け付けない絶対魔法拒絶術式。
永嶺 惣一郎が死に際に遺したであろう、俺の為の、俺だけの切り札。
「幾ら陰陽師が強くたってな、―――数には敵わねェって事をだよ!!」
緑色の宝石を魔法陣に向かって力強く叩き付ける。
叩きつけられた宝石は衝撃で粉々に砕け、複数の結晶となって地面へと散らばった。それが、絶対魔法拒絶術式が発動する条件だ。
「悪ィが、この空間は一方通行じゃないンでな」
油断していた無垢の陰陽師の表情が、一瞬にして強ばる。
だがそれよりも早く、周辺に散らばった結晶と、俺が撒き散らした妖力の残滓が適合し始める。
「来いよ。気が進まないのはお互い様だが、テメェとて俺が消えちまったら困るンだろ?」
結晶が魔法陣に触れ、そこを起点にして魔法陣に亀裂が入る。
その亀裂は徐々に広がっていき、数秒もしないうちに目に見える範囲の魔法陣を侵食して行く。
「………ッ貴様!!まさか魔法を上書いて……!!」
そして、妖力と結合した結晶。亀裂の入った魔法陣と重なり合う地点を中心にして、緑色の線が上書きされる。
亀裂があった箇所は修復され始め、魔法陣は少しづつ、無垢の陰陽師の物から俺のものへと変わる。
そうして数十秒が経過した時、無垢の陰陽師が広げていた魔法陣は主導権を手放し、俺の元へと舞い降りる。
「『空間転移』」
俺が詠唱すると同時に、微かに灯る緑色の光が輝きを増して行き、ひとつの大きな妖術を発動させる。
魔法陣を奪い取った俺が使う妖術は『空間転移』。本来であれば精神世界に人を呼び込む真似は出来ない。
氷使いが俺の空間に入り込めたのは、狂刀神によって招かれた客人であるが故。
なら、空間主である俺が同じことをすれば、理論上は成功するはずだ。
「させぬ!!」
この異常性に気付いた無垢の陰陽師が動き始める。
本来ならもっと早い時点で気付いていたはずだが、彼をそうさせなかったのは彼自身の中にあった慢心と傲り。
“天叢雲剣”が俺を断ち切ろうと躍動する。
振るわれる剣、その刃が徐々に俺へと近付き、その命を―――。
「―――えぇ、貴方に消えられては困ります。それにこの陰陽師は、僕と貴方でなければ倒せない相手ですから」
声。俺と無垢の陰陽師では無い、第三者の声が耳へと入る。
それと同時に、俺へと迫っていた“天叢雲剣”が勢い良く弾かれ、無垢の陰陽師は困惑と驚愕の表情をしながら後ろへと仰け反る。
それもそのはず。声の主はこの空間に居てはならない存在。
俺が呼び出す候補の中で、無垢の陰陽師が予想の候補にすら入れていなかった人物。
「『逢魔ヶ刻』」
不意打ちを突かれた無垢の陰陽師へと、究極の一太刀が繰り出される。
防御を試みようとする無垢の陰陽師だったが、錆び付いた刀は目にも止まらぬ速さで、無垢の陰陽師の胴体を貫いた。
「『疑似創造』」
それに続き、俺は即座に走り出して無垢の陰陽師を捉える。
これは輝きの星、万物を焼き尽くす伝説の一振。かの騎士王が掲げた勝利の象徴であり、今も尚、語り継がれる勇者の剣。
「―――『白銀の剣よ、導き給え』!!」
ヴィヴィアンとの戦いを経て、贋作から模造品へとランクアップした『白銀剣』。ヴィヴィアンから渡された“エクスカリバー”に俺の妖術を乗せ、放つ。
放たれた白銀の光は莫大なエネルギーを持ちながら、無垢の陰陽師へと迫る。
無垢の陰陽師は身体を貫かれたまま“天叢雲剣”でガードを試みるが、迫り来る光は壁と同じ質量が押し寄せるのと同じ。
刀一本で防ぎ切ることは叶わず、無垢の陰陽師を更に50mほど離れた地点へと吹き飛ばした。
「………危ないですよ妖術師。あと少しズレていたら僕に当たってましたよアレ」
「あ〜?テメェごと無垢の陰陽師を倒せりゃ良かったンだがな」
“エクスカリバー”を片手に持ち、もう片方には“太刀 鑢”を持ったまま、俺は隣に立つ人物へと言葉を向ける。
対してその人物は錆びた刀を携えながら、俺と同じように軽口を叩いていた。
その人物こそ、俺がこの場に招き入れた第三者。俺と同じ『妖術師』の名を持ちながら、魔術師として戦う異常者。
「………では、改めて名乗らせて頂きますよ。僕は『偽・妖術師』。魔術師の仲間でありながら、妖術師として生きることを選び―――、無垢の陰陽師を倒すと誓った者」
現状打破が可能となる一手。
その最重要人物となる『偽・妖術師』が、俺と背を並べてそこに立っていた。
コメント
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うわあ、めちゃくちゃ熱い回でしたね…!「妖術師は孤独だ」という言葉から始まる内面の重さがずしりと来て、でも「彼の意思は変わらない」っていう強い決意の切り返しに胸が熱くなりました。無垢の陰陽師との戦闘描写も緊迫感が凄くて、特に“魔法”の展開には息を呑みました。そこからの絶対魔法拒絶術式→偽・妖術師召喚の流れ、痺れました…!次が気になりすぎます🔥