10分休憩した後、皆に木剣(もくけん)が配られた。
角が少し削られており滑らかになっていて、軽く、シンプルなデザインの剣だった。
試合をする場所にそれぞれのグループに別れて手合わせをする。
僕は初心者が居る、新人騎士のグループへ入れられ、相手をしてやって欲しいと言われた。
「「よろしくお願いします!」」
挨拶をして軽く目礼をする。
今回の相手は新人騎士のレヌーワさん。
センスを買われ、騎士団に入ったのだとか。
まだ経験が少ないのかポーカーフェイスが出来ておらず、(ポーカーフェイスとはざっくり言うと、感情を悟られないように、表情を崩さずにいることかな)僕が貴族の子供だから、もし怪我をさせたらどうしようとでも思っているのだろう。
「レヌーワさん、手加減は要りません。怪我をしても責めも怒りもしないので安心して来てください」
そう言うと少し目を見開いた後、また悩むような顔になる。
今度は悩んでいるのだろうか。
少し観察していると大体分かってくる。
子供本気を出したら大人気(おとなげ)悪いのではないかと思っているようだ。
君の目は節穴(ふしあな)かな?
さっきの走り込み、僕の方が速く走っていただろう?
「ほ、ほんとにいいんですか……?」
「構わない、僕は貴方如き(ごとき)に負けませんので」
少し挑発(ちょうはつ)すると分かりやすく右眉が上がり少し不機嫌になったようだ。
多分さっきよりかは、ムカついて”負けたくない”という思いが湧(わ)いたのではないだろうか。
「開始!!!」
誰かの声の合図で試合が始まる。
とりあえずまずは相手の実力を測るか。
レヌーワさんが正面から腕を上に振り上げ迫ってくる。
それを木剣で受け流して背後に周り斜めに木剣を翳(かざ)す。と、ギリギリのところで受け止められられた。
正面から直で来た時は舐められているのかと思ったが、基礎は出来ているようだ。
反射も悪くない。ただ余計な動作があるのがもったいない。
木剣を押し返され、木剣が真横に斬りかかってくる。
それをバックステップで距離を取り交わし、素早く地面を蹴り、木剣を振り攻める。
カンッと音を鳴らして受け止めさせる。
実力は大体分かった。
受け止めたままの体勢で木剣に力をこめる。
「ッ!?」
すると、レヌーワさんは驚き、腕が少し震え出す。
……また、顔に表情が出ている。
まるで子供の身体の何処からそんな大きな力が出ているのか、分からないとでも言いたげだ。
………この人戦場に行ったら直ぐに死にそうだな。かなり心配だ。
まあ、まだ若いのでこれからどんどん力をつけて成長するだろう。
僕の身長は128cm程でレヌーワさんは目測(もくそく)だと163cmぐらいだろうか、成長期がまだなのだろう。
力を入れてもそのまま耐えているので、パッと剣を引き、左足を回し蹴(け)りすると後ろの方に身体が傾(かたむ)く。
レヌーワさんは慌てて片手をつこうとしたので、素早くその手と襟(えり)を掴んで背負い投げる。
放り投げ出されたレヌーワさんは今度はちゃんとした受け身を取り、床に倒れる。
そして、直ぐに起き上がろうとしたので左手で肩を押して床につけて、右手に持っている木剣を鼻の先スレスレに近ずけると、「勝者、リース・アビュラル!!」と審判の声がかかる。
「良かったらどうぞ」
僕は直ぐに立ち上がり、レヌーワさんに手を差し出す。
レヌーワさんは呆然(ぼうぜん)としたがらも手を重ねてくれる。
手を握り、引っ張って立ち上がらせる。
「有難う御座いました」
「あ、ありがとうございました…」
僕が挨拶をして、その後レヌーワさんは呆(ほう)けた顔をしながら挨拶をする。
その後、、何人かの新人騎士と手合わせをして全勝して帰った。
新人騎士や初めましての騎士達とも打ち解け仲良くなれた。
やはり初めは公爵家の令息なため、気軽に話しかけるのは渋られたが、そこは上目遣いをして勝った。
僕はレリアと双子なので顔立ちはレリアと少し似ていて、中性よりの顔をしている。
だから少しレリアのマネをすると大体の人は折れてくれる。
…レリアのワザ凄いな。
「んんぅー……」
訓練場から帰り、晩食(ばんしょく)を済ませ、お風呂に入り、自分のベッドに背中から倒れ込む。
今日は疲れたな……でも、とても充実のした1日だったな。
そして疲れ果てた僕はそのまま眠りに落ちた。
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