テラーノベル
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薄暗い廊下を複数人の男たちが歩いていた。
真ん中にいる白髪の男以外は黒いスーツを身に纏い、軍人が被っていそうな帽子を被っている。彼らは『セントラル刑務所』の看守であり、白髪の男と対談室へ向かう最中。この男から話を聞き出すつもりだ。
とはいえ、この白髪の男は天才である。先日看守に殺人を減らす供述を述べた際、ほとんどの人々は反論することができなかった。
彼が述べた内容はこうだ。
「ほとんどの犯罪者は犯罪を犯したくてしているわけではありません。やむなく犯罪を犯しているだけです。力で権利をねじ伏せても更生などしません。そんなことをしても、反発心が生まれてまた同じことを繰り返します。看守がしなければいけないこと。それは囚人に人権を与えることです。彼らの好きなように行動させれば、大概は更生します。しかしそれでも更生出来ない輩には、出所時にそいつに欠けているものを渡すんです。お金に困っているならお金の援助。性的なものに困っているなら、お見合いをさせたりパートナーを見つけ出したりする……。とても単純なことです」
看守たちはこの言葉に従い取り入れた刑務所は、更生する人が増え犯罪率も大幅に減った。
そんな天才の彼から昔の話を聞き出すのは、至難の業。そんなこと出来るわけもない。
この男の名は、アルマ・テイラー。白い狼ホワイトウルフとして恐れられた、連続殺人犯だ。彼は惨たらしい殺し方を行い、警察官を驚かせることに成功している。
人間の皮膚を剥ぎ取り、内臓を取り出してはホルマリン漬けにして冷凍庫に保管していた。ここまでは普通のシリアルキラーでよく見る行為だが、彼の場合は少し違っていた。壁に被害者の血の文字で『Devil ate ange』と書いてあり、その上に皮膚や皮、骨だけになった人間の死体を飾っていた。まさに外道に近い。部屋にもなんとも言えない悪臭が漂っていて、そのせいか捕まらないように家を何回も変えていた。逮捕できたのが奇跡といってもよい。
アルマは捕まる前、お菓子会社の社長をしていた。ほとんどの人は彼を募っていて、一見フレンドリーで明るく魅力のある人だと思ってしまう。しかし彼は名誉のためにしたことであり、裏の顔は残虐無慈悲な男だった。
アルマがなぜ犯罪を犯してまで、名誉を欲していたのか。幼い頃の話を聞けば、明らかになってくるはずだ。IQが高い犯罪者は平気で分かりにくい嘘をついてくるので、全てが正しいのか分からない。
やはり、彼に問いただすことができるのはアルヴィン看守長しかいない。彼ならば犯罪者の思考を熟知しているので、話を聞くことができるかもしれない。
「着いたぞ」
看守の一人が立ち止まってそう言う。
対談室の前についてから他の看守は固まって歩くのをやめ、一人だけついていく形となる。
中に入るとガラスの仕切りがあり、椅子がそこにあってガラスにはたくさんの穴が空いていた。ここで話せば、相手がちゃんと聞き取れるはずだ。
その向こうには、いかつい顔をした体のでかい男が座っていた。彼こそがアルヴァン看守長である。彼は真摯的に振る舞う。相手を傷つけずにゆっくりと話す。
「腰を掛けたまえ、アルマ・テイラーくん」
「………………」
アルマは少し考えてから腰を下ろした。その横に看守たちが配属される。
「まあ、気楽に話そうや。肩の力を抜いてな」
「………………」
彼は看守長を睨みつけた。看守長は慌てて、手を振る。
「そう警戒するなって。何もしないからさ。ただ話を聞きたい」
「話……? 私に聞きたいことがあるのですか?」
「まあ、あるにはある。しかしそれよりも一つ言いたいことがある。君の作品は芸術的で素晴らしいものだと思っているよ。内臓を抉り出し、目を抉り、そして脚と腕を切り裂いては壁に飾りつける。内臓はホルマリン漬けにして、取っておいたなんてまさに素晴らしいではないかと思ってね。どうしたらそんな芸術的な作品を作れるんだ?」
看守長は膝についていた手を振るわせながら、思ってもいないことを話す。看守長の顔にも少し狂気が見え隠れしていた。嘘を隠すための演技である。
アルマは天才であるが故、孤独でおそらく誰にも裏の顔を賞賛されてこなかったのだろう。賞賛することで、話を聞き出そうとしたわけだ。彼はそれを聞いて、にこりとほくそ笑む。相変わらず表情はそんなに変わらない。
「まさか看守長に褒められるとは思ってもみなかったな。ハハ、これは参った。なぜ看守なんかしているんだ?」
「まあ、それは取り締まることが好きって話さ。それで昔の頃はどうだったんだ?」
「まあ、看守長にだけ昔の話をしてもいいよ。他の看守を追い出してくれるならね」
「ああ、分かった」
こうなることは分かっていたので、看守たちはドアから自ら出ていき二人だけになった。監視カメラも止めている状態になる。
アルマはそれから自分の幼少期について語り始めた。それらはムゴいの言葉じゃ表せないくらい狂っていて、とてもじゃないか聞いていられないくらい気味の悪い話だった。
コメント
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うわ、これは重厚な導入ですね。まず「ほとんどの犯罪者はやむなく犯罪を犯している」というアルマの持論——これ自体が狂気と正論の境界を揺さぶってくる。看守長がわざと作品を「芸術的」と褒めて心を開かせるシーン、両者ともに天才同士の駆け引きって感じでゾクゾクしました。幼少期の「ムゴい」話がどう語られるのか、もう続きが気になって仕方ないです。設定の密度がしっかりしてて、一気に引き込まれました。