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とある平日の深夜

都内の大学に通う「加賀美天馬かがみてんま 」20歳は、自らの計画性の無さに嘆いていた。

それは、明日の早朝から大学の講義が控えているというのにも関わらず明日の事を見据えずに、深夜までアニメの一気見をしてしまったからだ。

「あーあ・・・ハマって見すぎちゃったなぁ」

天馬があくび混じりの背伸びをしながらベッドの宮の上に置かれたデジタル時計を確認すると、深夜の0時30分と表示されていた。

「やっばっ!もうすぐ1時じゃん!早く風呂入って寝よ!」


天馬が風呂から上がり、パジャマに着替えそろそろ寝ようとした瞬間

ピンポーン

不意に自宅のインターフォンが鳴り響いた

「え?こんな時間に?誰?」

こんな時間に非常識な奴も居たもんだ!何時だと思ってるんだよ!

そう考えると同時に、とてつもない恐怖が天馬の頭の中を駆け巡った。それはなぜか?

天馬はアパートの103号室に住んでいるのだが101号室と102号室は、アパートの大家が本業の事務所として使用しておりこの深夜という時間帯は空き家と化している。

104号室には以前、高齢のおばあちゃんが一人で暮らして居たのだが老人ホームに入る事になったらしく引っ越して行った為、こちらも同様に空き家となっている。

ようは、自らが住んでいる103号室の両脇は現時点で空き家という事になる。

したがって、隣人が訪ねて来た説は考えにくい。なぜならば、人が住んでいないのだから。

それに天馬自身は騒音には必要以上に配慮をしている為、別の部屋の住人が苦情を言う為に訪ねて来た説も考えられないだろう。

ならば上の階、204号室の住人が訪ねて来た事は考えられないだろうか?いいや、それも考えられない。

以前バッタリあった時に気さくに話しかけてくれ、確かキャバクラのボーイの仕事をしており平日は全て仕事で埋まっているから辛いと愚痴っていた為 上の階の住人が訪ねて来たなんて事はあり得ない。

今の時間帯は仕事をしていて、家にいないのだから

親や友達が訪ねて来たとしても、そういう場合は大抵事前に連絡があるはず。

ならば・・・

誰が来たんだ?

知り合いの中には、こんな時間に訪ねてくる人物が誰一人思い当たらない。

ドアの向こうに・・・

誰がいるんだ?

そんな恐怖が、一瞬のうちに天馬の脳内を支配した。

そんな天馬の心配をよそに、再びインターフォンが鳴り響く。

ピンポーン

「・・・・・・仕方ない・・出るか・・・」

天馬は意を決してドアに近づき、覗き穴から外の状況を確認しようとするが暗すぎてわからない。

人が居るのかどうかすらもわからない程に暗かった。

「怖いけど・・・もしかしたら事故とかで助けを求めてる人かもしれないよな」

天馬は心の中で、どうか普通の人であってくれ!包丁を持った暴漢とかじゃありませんように!などと祈りながら、恐る恐るドアを開けた。

ガチャ


天馬がドアを開けると、そこには一人の女性が立っていた。

(随分と若いなぁ俺と同い年くらいのかなぁ)

天馬がそんな事を考えていると、女性がおもむろに口を開いた。

「す、すいません・・こんな深夜に・・・」

女性は申し訳なさそうな表情を浮かべながら深々と頭を下げる。

天馬が気にしないでくれと伝えると、女性は続けて口を開く。

「あの・・財布・・落とされませんでした?」女性は手に持っている黒の長財布を手渡す。

それは明らかに天馬の財布に間違いなかった。「あれ?財布・・落としてました?全く気付いてませんでした」

「そこの自販機の近くに落ちてまして・・」

「そうだったんですか!わざわざありがとうございます!」とお辞儀をする天馬だったが

とある疑問が頭をよぎり、思い切って女性尋ねてみる。

「でも・・よく住所分かりましたね?」

天馬の頭をよぎった疑問これだ!落とした財布を拾ったとしても、天馬の住所までは分かるはずがない。

天馬自身、おおかた予想はついていたが、とりあえずの気持ちで尋ねみる。

すると女性は申し訳なさそうに「すいません、ダメだとは思ったんですけどその・・免許証で・・本当にすいません・・・」と深々と頭を下げた。

やっぱりか!そう思った天馬だったが、わざわざ自宅まで財布を届けに来てくれた親切な女性に「プライバシーの侵害だ!」などと文句を言うわけにもいかず

「いえ、謝らないでくださいよ貴方のおかげてこうして財布が戻って来たんですから!謝るのはむしろこっちですよ!」

必死にフォローをする天馬であったが、女性の表情は変わらず申し訳なさそうにしている。

どうしようかと考える天馬だったが、ふとある事を思い出した。

それは「財布を届け人間は、財布の中身の1割をもらう権利がある」という事。

それを思い出し、天馬は御礼を渡そうと財布を物色する。

しかし、あいにくATMに行っておらず、財布の中身が300円しかなかった。

「すいません・・・」突然謝る天馬に、首を傾げる女性。

「御礼を渡したかったんですけどATMに行ってなくて持ち合わせが・・」申し訳なさそうに頭を下げる天馬に女性は、御礼を狙って届けたわけではないからという言葉を残し

「では私は失礼します。夜分遅くにすいませんでした」女性は夜の闇へと消えていった。


天馬は安堵の息を漏らし、ホッと胸を撫で下ろしていた。

「はぁ〜変な人じゃなくてよかった」しかし天馬は疑問に思っていた。

今日は財布を使った記憶が無かったからだ。

しかし女性から手渡された財布は、紛れもない自分のものだ。

たぶん、何の気なしに使ったのだろうとあまり気にしていなかったが。

天馬は女性に対しても気になることがあった。

それさ、あの女性は、財布の免許証を見て住所まで届けに来てくれたと言っていたが、免許証を見たという事は天馬が男性だとわかったうえで財布を届けたに来たという事だ。

天馬は間違ってもやらないが、ドアを開けた瞬間に家に引き摺り込まれて強姦おかされる!なんて可能性もおおいにある。

実際にそういう事件もある。

女性の今後が不安だと考える天馬だったが、今日会ったっきり、もう会うこともないだろう。

他人である自分はとやかく言う筋合いじゃない。とにかく今は、無事に財布が手元に戻って来た事を素直に喜ぼうと考え、天馬は眠りにつく。

明日も朝から大学だ。

財布を落としただけなのに

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