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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

188 - 24話 タイトなスカートはここにはまだ早いようだ。

2024年04月15日

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ずずずっ

今俺はジャパーニア皇国国境警備隊詰所でお茶を頂いている。

「はぁ。うまい…」

牢からはすぐに出してくれて、温かい食事も振る舞われた。

今は食後のティータイムだ。酒が欲しい……

辺りはすでに真っ暗で、どうやら俺はこの宛てがわれた部屋で夜を過ごすようだ。

ベッドと机と椅子がある普通の部屋だが、詰所内では一等の客室みたいだな。

コンコンッ

ガチャ

返事をする間も無く入ってきたのは国境総司令のベッターだ。

「我が国の食事は楽しめたか?」

「ああ。特に食後のお茶が美味いな。身体に染みるよ」

旅に出る前はミランがよく淹れてくれたっけな。

旅に出てからは食後の日本茶なんて飲まなかったから、非常に美味しく感じた。

「やはりセイは始皇帝様と同郷で間違いないようだな…目の前にいても信じられんが……」

「始皇帝?ああ。この国の建国王のことか。そう言われてもな。

俺もわからないことが沢山あるが、ありのままを受け入れるなら恐らく始皇帝とやらと同じ時を生きている可能性が高い」

言ってもいいかわかんないけど、俺だけで考えても答えは出ないから考える人が多いに越したことはないからな。

まぁ、わかったところでどうしようもないし、する気もないけど。

「それこそあり得んぞ?始皇帝様は数百年前の人物だ。

亡くなられてからもかなりの年月が経つ。っ!?もしや…セイは長命種なのか?」

「驚いているところ悪いけど俺は普通の人だ。ここで議論しても進みそうにないから、もっと始皇帝に詳しい人と話がしたい。エゼルさん達もそうして欲しいから俺をここに呼んだんだろうしな?

ところでベッターは魔族でいいんだよな?」

エゼルさん達に勝るとも劣らない魔力なんだもん……

こんな人達ばかりなら争わなくて正解だったな……俺は生き残れても、国は無くなっちゃうからな。

特に俺や聖奈さんは逃げる専門の能力ちからだし。

「隠すことでも隠せるモノでもないだろう。そうだ。この国の上層部は皆魔族で構成されている。

人族なのは一般国民と皇族だけだ」

「一般国民?兵士も魔族なのか?」

「いや、兵士も人族だ。一般国民というのは国家試験を突破していない者達のことを指すんだ」

なんか公務員試験みたいで嫌だな……

上級国民に!俺はなるっ!!

「つまり魔力が多い魔族じゃないとその試験は通らない?」

「流石にわかるか。

そうだ。試験内容、結果に関わらず魔族と認められた者達だけに与えられる権利が臣民権だ。後は普通の市民権、国民権しか与えられない」

うーーん。逆差別?なのか?

「魔族が牛耳っていると思うだろう?しかし、この制度を作られた始皇帝様によると、人族による差別を無くすためにこの制度を作られたとのことだ。

俺にも難しい理由や始皇帝様の考えはわからないが、我々が信じられる方だけに理由はそれだけでいい」

「……なるほどな。わかったよ。ま、俺は同郷だからな」

カッコつけたけど恐らくだ。

魔族は別の大陸で人族に追われた。

恐らく絶対数が少ないのも理由の大きな所なのだろうけど、別の理由もわかる。

人は弱いからな。

そして魔族は強い。群れなくてもいい程度には。

この制度は人族に権力という武力に次ぐ力を与えないようにする為の制度なのだろう。

差別や迫害は人の十八番だからな。

個々が強い魔族にはない文化・・なのだろう。

権力と武力を奪われて尚ここに住みたい、暮らしたいと思わせるだけの良さがジャパーニア皇国にあるのなら、俺からどうこういうことはない。

元々どうこうするつもりは俺にはないけど。

聖奈さん?面倒臭いことは伝えないからいいんだよっ!

この国の事とか魔族の事とかをベッターと暫く話した後、就寝した。






「迎えが来た」

今日もゴロゴロと与えられた部屋で惰眠を貪っていた俺は、午前中はやってきたことがないベッターから報せを受けた。

「漸くか…わかった。行く」

ベッターに短く返した俺は支度もそこそこに部屋を後にした。

初めて捕らえられた日からすでに5日が経っていた。

そういうのも、どれだけ急いで皇国の首都に伝えを走らせても、今の文明力ではそこそこ時間が掛かってしまう。

始皇帝の同郷として扱いが国賓なのかどうなのかも定かではない俺の待遇を決めるのにも時間は掛かったのだろう。

勝手に皇国内をうろつく訳にもいかず、俺はこの5日間大人しく部屋に引き篭もっていたのだ。

得意だろって?

そんな昔のことは忘れたよ……

まぁ夜になると転移であちこちに移動していたのはここだけの秘密だ。

遊んでたんじゃないぞ!?半分は仕事だ!!半分はなっ!

ベッターに連れられて外に出ると、馬車の前にスーツを着た人が兵士に護衛されながら佇んでいた。

「貴方が始皇帝様の御同郷の方で間違いないですね?わたくしは皇室管理官のナタリーと申します」

パンツスーツだったのでわからなかったが、よく見ればかなり美人な女性だった…その身から溢れでる魔力は可愛くないけど。

同郷同郷いわれるけど、地球って大きな括りなんだからねっ!!

日本人かどうかもまだ分からんし。恐らく日本人だと思うけど。

「多分な?俺はアンタ達の始皇帝様が遺したものが何なのかわかるだけだ。

多分同じところからやって来たんだと思うけどな」

「ええ。伺っております。始皇帝様が遺してくださったモノの名前がわかるというだけで、私共からすれば問題ありません。

どうぞ私とエドへお越しくださいませ」

江戸かよ…ますます時代背景がわからんな……

「ああ。案内頼む」

そう告げた俺はどうぞこちらへと茶髪を後頭部で団子状に纏めた美女ことナタリーさんのエスコートで馬車へと乗り込んだ。

馬車にはナタリーさんも乗り込んでいざ出発。

美女と狭い空間で二人きり…何も起きないはずもなく……めちゃくちゃ…質問された………

ん?ベッター?だれそれ?

嘘嘘。ちゃんと別れの挨拶と5日間のお礼は伝えたよ。

おっさんとの会話なんて誰得だからな。省略だっ!省略!






道中はこれといって問題はなかった。

ギリギリの問題といえば、美人で愛嬌があり歳も近いナタリーさんと狭い馬車の中に二人きりの時間が長かったということだけ。

年齢イコールには中々の問題ではあったが、俺はやり遂げたよ……

宿泊のため立ち寄ったいくつかの町はどこも大変素晴らしい町だった。

人口密度はバーランドより低く、地球では平和な時代の方が出生率が低いと言われていたけど間違いではなさそうだ。

建物もthe異世界って感じのモノばかりで、見た目もさることながら清潔感があった。

バーランドも聖奈さんの意向により異世界情緒溢れる街並みなんだけど、清潔感はどうしてもイメージより低い。

ナタリーさんにその辺りを聞いてみると・・・

『ジャパーニアでは国民全てに義務があり、その中の一つが当番制の清掃です。それにより街の中に雑草が生えることもなく、砂埃も最小限になっています。

石畳も綺麗ですよね?』

貴女の方が綺麗です。

なんて言えるわけもなく、『しょうですねっ!』と噛みながら答えたのは忘れたい出来事だった。

これも始皇帝の遺したモノなんだろうな。

明らかに地球で…いや、日本で各市町村が行う一斉清掃だもんな。

ちなみに護衛の騎士達もみんな魔力が高いから魔族なんだろう。

明らかに高官っぽいナタリーさんの護衛としては少ない5人程の人数だが、一人一人がエリーの倍以上の魔力を保有しているから過剰とも言えるな。

出会って早々後ずさっていたから、護衛の人達も魔力が見えるのだろう。

それ以来近づいてもくれないからまだ話も出来ていない……イジメかな?

この国には貴族はいないので、敬われるのは皇帝ただ一人。

町は代官を町ごとで任命して運営しているとのこと。

この辺りは異世界っぽくはないが、異世界と地球のいいとこ取りで上手くいっているようだ。

裏ボス聖奈さんが目指しているのもこれに近いのかもしれないな。

敬われるのが一人ということは、内に潜在的な敵は皇室の人達だけになる。

後は信賞必罰さえキチンと行えば、インターネットがないこの世界では民意のコントロールは出来そうだな。

俺がこの国の黒いところと白いところを訳知り顔で考えていると、どうやら目的地に着いたようだ。


馬車の前方の小窓が開き、馭者の人が到着を告げた。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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