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焔垂は部室の机に広げた新聞を睨みつけるように見つめ、低く唸った。
「うー・・・ん」
記事には、この1ヶ月で4件もの人身事故が発生したと書かれている。
被害者は全員女子高生。
偶然という言葉で片付けるには、あまりにも不自然過ぎる。
焔垂は新聞を机に置き、腕を組む。
「やっぱり単なる事故とは思えないんだよな」
その目には確信が宿っていた。
「被害者が女子高生だけなんて
絶対に何かある!そうに決まってる!」
その時だった。
──ガラガラ。
静かな部室に引き戸の開く音が響く。
焔垂が顔を上げる。
「ん?」
入り口には、信愛が立っていた。
「ああ! 白縫さんか!」
焔垂は安心したように笑う。
「どうかしたのか?あ、もしかして協力──」
最後まで言わせず、信愛は静かに口を開いた。
「ちょっと八乙女くんに確認したい事あってね」
そう言うと、そのまま椅子を引いて焔垂の向かいへ腰を下ろす。
「確認したい事って?」
焔垂が首を傾げた、その瞬間
──ガラガラ。
再び引き戸が開いた。
「ど〜も〜」
「おじゃましま〜す」
入ってきたのは茜とさくらだった。
焔垂は目を丸くする。
「茜に花牟礼?」
信愛は苦笑しながら肩をすくめた。
「二人とも、どうかしたの?」
茜は頭をかきながら笑う。
「いやさ、信愛の様子が
おかしかったからね
ついて来ちゃった」
信愛は二人を見つめ、小さくため息をつく。
(まあ、いっか)
改めて焔垂へ向き直る。
「でね?八乙女くん?」
「なんだ?」
「茜とさくらに聞いたんだけど」
一拍置いて、真っ直ぐ焔垂の目を見据える。
「八乙女くんって、霊が視えるって本当?」
焔垂は思わず聞き返した。
「霊が?」
その瞬間、茜が慌てて口を挟む。
「信愛! それはこいつの──」
しかし信愛は鋭く制した。
「茜は黙ってて!
いいから黙って聞いてて」
突然の強い口調に茜は目を見開く。
「わ、わかった・・・」
部室に静寂が落ちる。
信愛は焔垂から目を逸らさない。
「で? どうなの?霊、視えるの?」
焔垂は少しだけ言葉に詰まり、やがて静かに頷いた。
「あ、ああ」
そして、迷いを振り払うように言い切る。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「視えるぞ!」
その答えを聞いた信愛は、何も言わず焔垂を見つめ続けた。
焔垂は少し照れくさそうに頭をかきながら答えた。
「俺はガキの頃から霊が視えてたよ」
その言葉に、部室の空気が静かに止まる。
茜は何も言えず口を閉ざし、さくらもただ焔垂を見つめていた。
一方、信愛だけは納得したように小さく微笑む。
「そっか、やっぱり」
そう呟くと、信愛は静かに椅子から立ち上がった。
茜はその様子を不思議そうに見上げる。
(信愛?)
信愛は嬉しさを隠しきれない様子で焔垂に歩み寄る。
「こんな近くに同じ人が居たんだ〜♬感動〜♬」
突然の反応に焔垂は目を丸くした。
「え?」
信愛は楽しそうに笑いながら続ける。
「いやさ? 霊が視える!
なんて人から信用されないじゃん?
霊が視えるが故の悩みもあるじゃん?
それを共感出来る人が近くにいて嬉しい♬」
茜とさくらは顔を見合わせ、小声で話す。
「信愛? なんかキャラ違くない?」
「だよね・・何かあったのかな?」
普段はどこか落ち着いた信愛が、子どものように無邪気にはしゃいでいる。
その姿に二人は戸惑いを隠せなかった。
焔垂もぎこちなく頷く。
「まあ、そ、そうだよな。」
信愛は勢いよく頷く。
「例えばほら!道尋ねようと声掛けたら
その人が霊だった!なんて日常茶飯事じゃん?」
「た、確かにな、一目じゃ人間か霊か
見極めるのって難しいよな」
その一言を聞いた信愛は、さらに笑顔を輝かせた。
「そう!そう!それに今だって──」
焔垂は首を傾げる。
「え? 今?」
信愛は何気ない口調で答えた。
「八乙女くんの横にいる女の人
人間か霊かも一目じゃ分からないよね?」
その瞬間だった。
茜とさくらが同時に息を呑み、勢いよく焔垂の方を見る。
焔垂の表情が一変した。
「え!? 隣!?」
反射的に真横へ視線を向ける。
しかし、そこには誰もいない。
信愛は不思議そうに首を傾げた。
「何驚いてるの?さっきから
ずっと八乙女くんの隣に居たよ?」
「と、隣に・・・」
焔垂の額から一筋の汗が流れ落ちる。
信愛はなおもその『誰か』を見つめたまま呟いた。
「でもおかしいな?その女の人
ずっと八乙女君に向かって嘘つきって」
その言葉を聞いた瞬間、焔垂は顔色を失った。
「ご、ごめんなさい!」
力が抜けたように、その場へうずくまる。
部室には重苦しい沈黙だけが残った。
やがて焔垂は震える声で口を開く。
「本当は霊が視えた事なんて無いんだよ
霊が視えるって言えばチヤホヤされると
思ってついた嘘なんだよ」
信愛は静かに目を閉じ、小さく息をつく。
「やっぱりね」
茜が首を傾げる。
「やっぱり?」
信愛は焔垂を見つめながら、静かに告げた。
「八乙女くんの隣には誰も居ないよ?」
「え?誰も居ない?」
信愛は静かに焔垂を見つめたまま言った。
「試させてもらったの。」八乙女くんの
『霊が視える』って話が本当か嘘か」
茜は思わず声を荒げる。
「ちょ! 信愛!イタズラにもほどがあるよ?」
「いや、それをウチらが言う?」
さくらは茜の言葉に冷静にメスを入れる。
「あ、そりゃ、そうかもだけど」
信愛は表情を変えず、ゆっくりと焔垂へ視線を向ける。
「八乙女くんはね?一番
ついちゃいけない嘘をついたの」
さくらが首を傾げる。
「一番?」
信愛は小さく息を吐き、柔らかな声で言った。
「とりあえず座って?詳しく話すから」
焔垂は力なく頷く。
「わ、わかった」
怯えた表情のまま椅子へ腰を下ろす。
部室には重い沈黙が流れ始めていた。
コメント
1件
うわあああ!信愛ちゃんのキャラ変!?w普段落ち着いてるのに「感動〜♬」って無邪気に喜ぶギャップがおもろ可愛すぎるやろ😭💕 でも一番ゾクッとしたのは「隣の女の人」ってやつ!焔垂くんの嘘がバレる瞬間、読んでるこっちまで息止まったわ…!この仕掛け、めっちゃ巧いし次が気になりすぎる🔥