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四十代にも見える女性の容姿は、相変わらず若々しく美しいままで、恵菜は目を見張った。
「…………お……お義母……さ……ん……」
恵菜を呼び止めたのは、勇人の母、早瀬良子。
かつての姑は、彼女の元へ、ゆっくりと近付いてくる。
「お久しぶりね」
「ご……ご無沙汰……してま……す……。どっ……どうして…………ここが……」
恵菜の表情が強張り、心臓がバクバクと打ち付ける。
「勇人に聞いたのよ。恵菜さんが立川の大きな工業エリアで仕事しているって。ここしかないでしょう?」
「…………」
「あなた…………あの子と離婚してから…………ずいぶん痩せたのね。結婚してた時、あんなに丸々と太っていたのに……」
良子は恵菜の姿を、舐めるような視線で、爪先から顔に掛けて這わせていくと、フンッと鼻で笑った。
(今度はお義母さんが来たの……? 意味が分からない……!)
恵菜の面差しが苦渋に満ちたものに変化しそうだったけど、かろうじて冷静な表情を保っている。
「まぁ、そんな事はどうでもいいわ。あなたに話があるの。ここだと他の人の迷惑になるから、場所を変えましょう。付いてらっしゃい」
交差点の信号が青に変わり、良子は、颯爽とした姿で、交差点を渡り始めると、恵菜も俯き加減で、元姑の後に続いた。
***
二人が行き着いたのは、モノレール立川北駅のすぐ近くにある、人気のカフェ。
広々としたシックな店内は、ホッとひと息つくために訪れた客で、そこそこ混雑している。
店員に、一番奥の席を案内され、恵菜は、半年以上前まで義母だった人に気遣い、奥の席を勧めた。
良子と恵菜は、ブレンドコーヒーを注文した後、一気に場の空気が重く沈み込む。
(話って、もしかして……)
嫌な予感を抱きながら、恵菜は、かつての姑から口火を切るのを待つ。
「勇人の事なんだけど……」
元夫の名前を聞き、恵菜の身体がゾクリと泡立っていくと、寒気を感じた。