テラーノベル
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コウが震えた、ものすごい身震いである。
「どうしましたかね、霊媒師さん……」
「さらに巨大化している……あなたがどうでもいいから退治してくれと言うから尚更恨みが増して来ています……!!!! このままでは危険だ……」
と同時に部屋の中がガタガタ震え、近藤は床にかがみ込んだ。
「どうしたらいいんだ!! 謝ればいいのかぁ!!!!!」
「謝ってもダメです、もう許さない、許さない、地獄の果てまで引き摺り込むと言ってます」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
近藤の妻が叫んだ。近藤は押さえ込もうとするが暴れる妻は部屋中を駆け回り、畳の上に倒れ込んだ。そして何か液体のようなものがじんわりと広がる。
「なんだ、なんだ……苦しい……苦しい……やめてくれ、誰なんだ……これ以上苦しめないでくれ」
近藤は何者かに首を締められたかのように首を押さえて息ができなくなっていく。
「忘れたのか、わたしのことを……って。近藤さん……誰か忘れてるのか、それとも忘れようとしているんか???」
コウの口調も荒くなる。近藤は狼狽えるが……。
「もしかして……アキエさんかね」
「そうですよ……あなたの息子の奥様だった方、アキエさん」
近藤はそれがわかると
「うちら親族を十年前に怪我をさせて張本人がなぜ……」
「それだけじゃ足りなかったんやろうな!!! 彼女がその事件を起こした理由は聞いとるんかぁ!!!」
「アキエさん自身の借金を隠すため……あとは」
「あんたたち、近藤家に対する恨みですよ……義父母であるあんたらに恨みを持ち続けて……生き霊として……あなたたちに取り憑いていたんや!!!」
「すまなかった!!!!! でもわしらは息子夫婦が心配で助けてやったつもりだったんだ! なのに大袈裟だ、過保護だ、もうこないでくれ夫婦の問題だって。孫……2人の子供たちのことを考えないのか、かわいそうじゃないか離婚するなんて子供が!!!!!!」
「それがお節介だったんだよ!!! って叫んでるぞ!!!!」
「何がお節介だ!!! うちらは全部やってやったんだぞ!!!!! 家もおおおおローン地獄させないためにも先にワシの退職金使って家を買ってやったんだ。長男は住んでくれたが次男夫婦は、住まずにもったいないことしやがって、なくせしてお金がない時だけお金貸してクレェえええって。そんな1日で終わるような結婚式にあんなにお金をかけやがって。しかも結婚して五年も経つのに子供はできない、不妊の女を嫁に取りやがって。でも事件の後に子供が生まれたのにも関わらずにいっさい顔を出さずに……長男の聡も事件が起きてから女と先に逃げやがって子供残して一流企業を辞めて蒸発してしまった、唯一の孫たちはワシらが大怪我をしているからと児童養護施設に引き取られてしまった!!! あぁ、かわいそうに、母親であるさくらさんもわしらに全く謝罪もなく手紙もよこさず……と思ったらずっとうちらを苦しめていたのか、何が自分は苦しんでるって言うんだぁあああああああ。お前の被害妄想だろ、ワシらはあんたらを思って全て助けてやったのにヨォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
と叫ぶ近藤は目が血走り声が枯れる。足元は水溜り、尿を漏らしたようだ。するとコウがカメラに向かって手を挙げる。
「由貴、止めてくれ。もうここで終りだ」
「……もうあかんか」
「もう止められへん。完全にもうだめや……」
家全体の震えは止まり、静まり返った。そこには2人の老父婦が横たわっていた。
「……こんなの相手にしとったら俺らの体がもたへんわ」
由貴からタオルと水を渡されてふぅ、とコウは息を出す。
「にしても最後の方は一気にどす黒いのが近藤さんにきたな」
「アキエさんの恨みに乗っかって近藤夫婦に過干渉されとったりひどい思いを受けた人たちの恨みが一気にどーーんて来たようやな」
#衝撃のラスト
山根利広
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畳の上には近藤の妻が人間の形をなして横渡っている。
「近藤さんの妻も過剰な被害妄想と持病の鬱と近藤によるモラハラで人間という形じゃないものになってた……彼女もある意味被害者だがさくらさんにとっては恨みの対象だった。嫁姑……そして舅問題をめっちゃ拗らせた終焉ってことやな」
とコウが指を鳴らすと一瞬で霊達が部屋の中をかけ周り荒れた部屋の中が元通りになった。
近藤とその妻は同時に目が覚めた。尿の汚れも消えている。会った頃よりも穏やかな顔をしている。
「あなた達は……」
今まで声を発しなかった近藤の妻が言う。
「……何をされたのですか、あなたは」
近藤もキョトンとした顔をしている。コウと由貴は顔を見合わせた。
「覚えてないのですか……」
「ええ、全く」
コメント
1件
ああああ今回も重くて切ないけどめっちゃ引き込まれたよ…!!😭💦 近藤さんの「全部やってやった」って叫び、本人は正義のつもりなんだろうけど、それがどんどん相手を追い詰めてく様が怖すぎる…。生き霊って単なる怨みじゃなくて、そういう人間関係の歪みが可視化された存在なんだなって改めて思った。最後に二人が覚えてないのも皮肉でゾッとする…。麻木香豆さんの作品は毎回心の奥までえぐられるけど、目が離せないんだよなあ〜!🥺💕