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桜子は自分の盗作疑惑が匿名掲示板に上がっているなんて、もちろん誰にもいわなかった
―美木桜子は盗作している―
初めてこのスレを目にしてから実に二週間、開設依頼、この一言の書き込みだけで幸いにもずっと休眠状態だった
桜子はそれを見てホッとした、この話題に反応する匿名者はおそらく誰もいないのだろう
そして桜子は今後起こりうる様々な事柄を分析して推測していた
もし自分がしたことが世間にバレた時、待ち構えている様々な屈辱を・・・羞恥を・・・
そしてこの書き込みをした人物が桜子の見知りの者なのか、あらゆる想像を巡らせて考えてみた、自分がこれまでに知り合ったり、妬んだり、一緒に仕事をしたりした・・・あらゆる人物を思い浮かべてみた
時には言い訳がましく、長ったらしい弁明の文章を書いてみたり、もしも出版局の社長や世間に自分が盗作した事実を世間に公表した時様に、謝罪文を書いてみたりもした
しかし後で見返して見たら、どれも言い訳がましかったし、作家であるにも関わらず、ちっとも人の同情心を誘うようなものではなかったので、自分で自分の文章力に腹を立てた
何をしても桜子の感じている後ろめたさの恐怖にはまるで歯が立たなかった
時にはこの匿名の投稿者に対してひどく攻撃的になり、訴えてやろうかと思う時もあった
その気になれば「開示請求」をしてこの匿名者に接触できるが、桜子はそれは危険だと思い直した
もう一つの手段で慌てて、サイトにスレッドの削除依頼を申し込めば、自分がこの非難の書き込みを真に受けていると言うことを公表することになる
そしてこの投稿者が「なぜ削除した!」と逆上して、今度はもっと深掘りをして探って、決定的な証拠の何かを書き込まれても困ると思った
一瞬でも本当に盗作したのでは?と世間に真実を探られる口実を与えるわけにはいかない
この悪意ある人間にわずかなりとも自分を見せるには、次に襲ってくるものへの漠然とした恐怖しかなかった
いじめの本質は、いじめる相手が困ったり、うろたえたり、弱る所を見て優越感に浸る所だ
何かを成し遂げた成功者をそこから引きずり下ろし、負け犬のように尻尾を撒いてキャンキャン吠える所を見たいがために、匿名者達は集団でそれこそ海外の暴動時のフーリガン(※無法者)のように血も涙も無く襲ってくるだろう
―こんな書き込みに決して反応してはいけない―
暫くすれば時々刻々と流れていく情報の川でこのスレッドはこのまま放置され消え去って行くだろう
そう桜子は心に決めて、匿名掲示板のサイトを閉じた
コメント
2件
盗作を裏付けることがあがってくるのかな🥺
第60話、読み終えました。桜子の心理描写がすごく細かくて、彼女の後ろめたさや恐怖がひしひしと伝わってきました。「反応してはいけない」と自分に言い聞かせながらも、頭の中では謝罪文を何度も書き直してしまうところ——作家としてのプロ意識と罪悪感の板挟みがリアルで、苦しくなりました。この匿名の投稿者が誰なのか、これからどう展開していくのか、続きが気になります。星キラリさん、繊細な心理描写をありがとうございます。