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大人というのは不思議で、子どもに心配をかけたくないからと無理ばかりしている。目の前のふたりだってそうだ。
わたしに話を聞かれたくないから、急に無口になったのだろうけど、わたしにだってわかる。
日本が戦争をしていること。
状況が悪くなって、この満州国には居られなくなったということ。
だから、逃げなきゃいけないんだってこと…。
7歳のわたしは、まだまだ子どもで、大人たちの仲間にはなれないし、お父さまやお母さまに心配をかけたくはないから、しっかりしなくちゃいけない。
お父さまの口癖は、
「響子、君たちはお国の宝なんだ、だから産まれてくれただけで偉いんだよ。いつまでも健康で、悲しいことがあっても、できる限り笑っていなくちゃだめだよ。そうすれば、きっと、響子の周りには素敵な人たちが集まるんだ。だけどね、無理をしてはいけないんだ。ガマンできなくなったら、お天道様に向かって叫んでみるといいよ。おひさまはね、なんでも受け入れてくれるんだ」
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