うちのクラスの名物カップルはまだ付き合ってない
文化祭準備期間――
うちのクラスの出し物は「喫茶店」
学級委員の涼太は装飾担当、保健委員の翔太は雑務全般(という名の何でも屋)を任されていた。
❤️「ごめん翔太〜、看板持ってきてくれた?」
💙「……つーか、それ俺の仕事じゃねーし」
❤️「でも翔太が運ぶと、ちゃんと水平になるんだよね。不思議〜」
💙「涼太、お前俺のことなんだと思ってんの」
❤️「かわいいひと?」
💙「殺すぞ(小声)」
❤️「殺されるなら翔太がいいなぁ」
💙「黙れ変態」
そんなやり取りが日常茶飯事の名物カップル。
もちろん、まだ“付き合ってない(らしい)”。
――と、その日の放課後。
誰もいない準備室で、翔太は大量のポスターをチェックしていた。
💙「地味に多いな…これ、ひとりで貼るのかよ」
❤️「なら、手伝おっか」
不意に後ろから声がして、ビクッと振り返ると、涼太が入り口にもたれていた。
制服の袖をまくって、柔らかく笑ってる。
💙「……なんでお前、いっつもタイミング良く来んの」
❤️「翔太の様子、なんとなくわかるから」
💙「……は?」
❤️「だってさ、翔太って“助けてほしい”ってとき、必ずちょっとだけ眉間にシワ寄るんだよ」
💙「……うっざ」
そう言いながらも、翔太はポスターを分けて差し出した。
ふたりで並んで、静かに作業する。
紙を貼る音と、スプレー糊の匂いがやけにくすぐったい。
ふいに、涼太が呟いた。
❤️「さ、明日も文化祭準備だね」
💙「だな」
❤️「明日は…もうちょっとだけ、俺のこと、頼ってくれる?」
その言葉に、翔太はポスターの角を指で撫でながら、答えた。
💙「……お前が俺を見つけてくれるって、もうわかってるし」
沈黙。
でも、そこには言葉以上の“通じ合い”があった。
涼太はそっと、翔太の手の上に手を重ねた。
けれどその瞬間――
「ぎゃー!!やっぱいたー!!!」
「マジでふたりきりだーーー!!!」
ドアがバンッと開いて、クラスメイト数名が雪崩れ込む。
「今の、手…繋ごうとしてたよね!?」
「まだ付き合ってないって言う気かこの状況で!?」
涼太は苦笑いしながら、翔太の手をそっと離した。
翔太は顔を真っ赤にして叫んだ。
💙「ち、違ぇし!!!
…違ぇし!!!!」(大事なことなので二回)
教室には、笑い声と冷やかしの嵐が響く。
そして、また1日、ふたりは“付き合ってない(らしい)”まま過ぎていくのだった。
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