日帝がナチスとイタ王に嘘コクしたら何方からもok貰えた話②
◇◆◇◆◇
『浮気したら殺す』
適当に理由を言いつけて先輩の執務室から出てきたは良いが、自分の体は未だに恐怖に硬直したままだった。この後にイタ王にも嘘コクをしなければいけないと思うと、ぶわっと汗が吹き出てくる。
正直先輩の時の二の舞になりそうだから嫌だが、トキとの約束もあるし、イタ王が先輩の様に自分の事が好きとは思えない。
「よしっ」
そう思えたら自然と希望が見えてきた。大丈夫に決まっている。もし先輩の様に自分の事が好きでもしっかりと断ればいいし、もし先輩の様に暴力や脅しで訴えてきても相手はイタ王だ。勝ち筋は充分ある。足取りが自然と軽くなっていく。
「日帝…ちょっと、手ぇ…貸してくれん…?」
「え?イタ王!?」
曲がり角を曲がった先。そこには大量のダンボールを抱えたイタ王がいた。
「ここの資料室に運ぶんだけど、両手塞がって開かないんね…」
「あ、嗚呼。分かった」
即座に資料室の前へ行き、扉を開けてやる。どうやら資料室の奥の方に置くらしい。イタ王は体格の割に非力な為、自分も半分持ってやり奥へと続いていく。
「ふう…ここで良いのか?」
「んー!ありがとなんね!」
「にしても、ここの資料室は前から広いと思ってはいたが…ここまでとはな」
「ナチが言うには、『大事な資料とそうでない資料を紛れさせ、敵に盗まれるのを阻止する為』ぜーんぶ此処に集めてるらしい」
「…これ、ナチの部下達はどこにどの資料があるか把握しているのか?」
「多分把握してるのはナチだけなんね」
ダメでは無いか。味方すらも巻き添えになっている警備システムに呆れるが、自分の勘違いで侍女を負傷させた自分も大概だと悟る。
それと同時に先程先輩にされた暴行を僅かに思い出し、無意識に体に力が入る。いけないいけない。自分は大日本帝国だ。あんな事をされただけで、この様な武者震いをするなどあってはいけないのだ。
しかし、自分の体は正直で。強ばる体にじっとりと吹き出る汗は隠しようがない。くっそう、何か誤魔化す方法は…ん?いやあるな。うん。約束は約束だし、早めにやっておきたい。よし、やろう。(現在日帝は疲労で思考回路がバグっております)
「イタ王、好きだぞ」
「ん!?…………………………あー、そういう事なんね」
「?イタ王?」
「日帝、冗談でそういうことを言うのは辞めた方がいいよ」
「なんだ、気づかれたか?ナチですら気付かなかったのに」
「ふっふーん!オレ結構勘良いんね…ナチ?ナチにもやったの?」
「嗚呼、ついさっきな…」
「へー…」
「…イタ王?」
先程まで明るかったイタ王の顔に、少しの影がさす。俯いてしまったイタ王はブツブツと何かを呟くままで、こちらへ顔を向けさえしない。
何かあったのか?なにか不味い事でも言っただろうか?
「おい、イタ王……うぐっ!」
突如としてイタ王に腕を握られる。ギリッと嫌な音がする。いつもは頼りないが、イタ王は他のヨーロッパ諸国達と同じく背丈が高く、それに伴い力も強い。身長に10cm以上も差がある自分の腕など、その気になれば折れるだろう。
自分の算段が甘かったのだと嫌でも分かった。
「おい!い、痛いっ!離せ!イタ王!!」
「………何で」
「は?」
「何でナチにも言っちゃったの?ナチは日帝のこと好きなんだよ?何で?何でオレだけじゃないの」
「…イ、イタ王?」
「俺だけが特別だと思ったのに」
「……ぁ」
「…………………………して」
「…………イタ王…?」
「愛して、愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して」
ドス黒い瞳に見つめられ、壊れた機械人形のように言葉をつむがれ、掴まれた腕は更に力を込められ、気が狂いそうだ。
何なんだ。コイツは本当にイタ王なのか?
「愛して。何で?何でナチにも言ったの?ナチはね、日帝の事がだーい好きなんよ。ビックリするくらい。監禁を目論むくらい。でもさ、日帝はそんなの嫌でしょ?監禁されるのなんて嫌でしょ?殴られたり、半殺しにされたりなんて嫌でしょ?ナチはするよ。ナチは愛し方を知らないから。ナチは愛され方を知らないから。でもね、オレはそんな事やんないんね。好き。好きだから苦しまないで欲しい。好きだから溺れないで欲しい。ね?オレは日帝を愛せる。だからオレを愛して」
次々と息付く暇もなく紡がれていく言葉に頭が白くなっていく。言葉は熱烈なのにそれを言う口が、心が異常だ。鉛の様に重く、墨汁の様に真っ黒。それでいてマグマのように暑く、熱い。
愛せる、だから愛して。そんな懇願とも、脅しともとれる様な、呪いともとれる様な。ナチとは違う。イタ王の言った通り、ナチとは”愛”が違う。根本的に愛の定義が違うのだ。しかし、それでもナチと同じように狂っている。愛に狂っている。
「日帝はさ、ナチと付き合ったでしょ?」
「なんでっ…それを…」
「じゃあさ、オレも愛してよ。ナチも愛せるんならオレも愛して」
「……っ」
「2番目でも良いの。ナチの次で良い。だから愛して」
2番目で良い。そう言うイタ王はやがて腕を掴むのをやめ、日帝を包み込むようにして抱きしめてきた。そんな悲痛そうな声に絆されそうになる。
「お願い、日帝が良いんだ。ナチには秘密にしよ?」
「………俺は…」
「お願い。本気じゃなくていい。ただ隣にいて欲しいの。オレと付き合って」
まるで迷子の子供のような声で願ってくるイタ王。こんな”子供”を突き放すべきなのか?本気じゃなくていい、隣にいて、と繰り返す”子供”を突き返し、断るなど。武士の心に、日本の精神に反する。そうだ、反するからだ。反するから、これはしょうが無いことなのだ。
日帝は黙ってイタ王の頭を撫でた。
◇◆◇◆◇
日帝は優しい。容赦は無いけど。身内や味方には優しい。
現に今、子供のように懇願すれば日帝はあっさりとイタ王を受け入れてくれた。
「ふっ……」
日帝にバレないようにイタ王は微笑んだ。
イタ王は子供のように懇願し、日帝の同情心を経て愛を勝ち取った。しかしそれは同時に、日帝には一生イタ王は幼気で、可哀想な子供として見られるという事であった。
それにイタ王は気付かなかった。
◇◆◇◆◇
こにゃにゃちわー由珠です
取り敢えず日帝がナチスとイタ王に嘘コクしたら何方からもok貰えた話は終わりですね
後日談とか書くかもしれないけど
個人的な解釈なんですが、ナチはヤンデレ暴力型でイタ王はメンヘラ共依存型だと思うんですよね
コメント
3件
あらあらあらッ✨(?) これは神様を超えていますねぇ!(???) これからは神様を超えた神様、と呼ばさせてくださいッ✨()
ふはっ神☆