テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
おっくんとはゆっくり話したかったので、個室席のある喫茶店を選んで待ち合わせした。おっくんは時間ぴったりに来て、「おはよう、話って何?」と聞いてきたので、俺は「とりあえず飲み物頼んでから話すよ」とメニューを勧めた。アイスコーヒーとアイスティーはすぐに来た。
「あの、それで大事な話なんだけど」
「うん」
「ごめん、俺8月末に死ぬかも」
「は?」
おっくんは目と口をまん丸くした。
「それで、唐和開港綺譚の代わりの制作協力で漢方監修できる人の候補があるんだけど」
「いやいやいや、待って! 8月末に死ぬかもの方を説明して!!」
おっくんは身を乗り出した。そりゃそうなるな。
俺は、これまでの経緯をかいつまんで説明した。おっくんは、呆然としていた。
「嘘でしょ……」
「千歳にだけはバレちゃいけないから、普通に生活してるんだけど。今日も、単におっくんと遊ぶって言って出てきた」
「え、待って待って、狭山さんが唐和遅れるとか言ってるのもそのせい?」
おっくんはまた身を乗り出した。
「それは俺がオーバーワークを指摘したからだけど、その後すぐこの事態になったから仕事に影響出ててもおかしくないと思う」
狭山さんには悪いことをした。
おっくんはオロオロしだした。
「でもそんな、死ぬなんて、なんとか、なんとかできないの?」
「術式作動後に、術式に莫大な霊力流して焼き切れば蘇生できるとは言われてる」
「そ、それなら」
おっくんは少し顔を明るくしたが、俺の次の言葉はまたおっくんの顔を曇らせてしまった。
「でも、今霊力集めてもらってるけど、足りない確率が高い。もし集まっても、心肺停止からの蘇生って100%の話じゃないし」
「それは……そうだけど」
「……おっくんには、死ぬかもって言っておきたかった」
「そんな……」
俺は、おっくんに苦笑してみせた。
「これもおっくんには言っておきたかったんだけど、俺、千歳のことどうしようもなく好きなんだ、もちろん恋愛的な意味でね」
「そりゃそうだろうけど、でも……」
「千歳は恋愛も性愛もピンときてないから、伝える気はないんだけど。でもどうしようもなく好きだから、千歳を核爆発級の被害の犯人にしたくないんだ。千歳、怨霊なのに周りの人にやさしくしてもらえるの、自分から人的被害出してないせいだからさ。千歳がこれからも周りに優しくしてもらえて、核爆発級の人的被害も出ないなら、俺はなんとか、我慢するよ」
「我慢ってレベルじゃないじゃん!!」
おっくんは、ひっくり返った声で叫んだ。
「……ごめん。でも、俺はこれよりいい方法が思いつかなかった」
「…………。俺に、何かできることない?」
おっくんは苦渋の顔だった。俺は、なんとかおっくんに笑って見せて、お願いを言った。
「狭山さんと一緒に、これからも唐和開港綺譚作ってよ。桂花をさ、ひどい親と関係ないところで、大切な人を作らせてあげて、幸せにしてあげて」
俺の境遇を引き写したキャラには、幸せに人生を全うしてほしい。
「……それは、言われなくてもやる」
おっくんは苦しい顔のままだった。
「そっか」
「なんもできなくて、ごめん……」
「おっくんが謝るようなことじゃないよ」
おっくんも千歳も何も悪くない。何もかも和束ハルが悪い。
俺はおっくんに謝った。
「……隠しておけば、変な負担かけることもなかったね。俺の方こそ、ごめんね」
「でも、そしたら8月末にいきなりゆっちゃんが死んだって言われるんだろ!? やだよ!!」
「……ごめん」
「……打ち明ける相手に選んでくれたことは嬉しいよ、でも今、その、ちょっと、制作協力交代候補とか出されても頭入んないから、後日にしてくれないかな……?」
おっくんは頭を抱えた。
「じゃあ、月曜にメールするよ。あと、俺に連絡取るときは、なるべくメールかLINEにしてほしい。声や表情から千歳に気取られるかもしれないから」
「……わかった」
おっくんは頷き、俺は、伝えるべきところにはこれで全部伝えたな、と少しホッとした。
コメント
1件
あっ、もう読んじゃった……!😭💦 第483話、重すぎるよ……“8月末に死ぬかも”って打ち明けるシーン、おっくんの「は?」からの慌てっぷりがリアルすぎて胸がギュッてなった……。それでいて「千歳のことどうしようもなく好き」って伝えるところ、自分の命削ってまで守ろうとする主人公の覚悟がエモすぎるよ……!! しかも桂花の幸せをおっくんに託すとことか、もうドタイプすぎて泣いた……😭💕 続きが気になって仕方ないよ!!