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Eliminator~エリミネ-タ-

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Eliminator~エリミネ-タ-

26 - 第26話 三の罪状⑬ ライバル同士

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2025年05月26日

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「動けないでしょ?」



当然の様に投げ掛けた時雨の言葉で、恐怖に引き吊る世良の表情。



その通りだった。



まるで見えない力に阻まれた様に、己の意思で指一本動かす事も出来ない。



「――っ!!」



勿論口も動かせないので、それが言葉になる事もなかった。



「俺の死海血は常人の十倍の濃度があってね。これを僅かでも他人に投与すると、あら不思議……拒絶反応から動けませ~ん」



そう時雨は愉しそうに講釈。



“なぶり殺しでもする気か!?”



当然、動けないのだから、後は煮るなり焼くなりお好きにだ。



しかし――



「で、ここからが本題なんだけど、俺は水分を自在に操れるんだよね……」



時雨の考えは、世良のそれを越えていた。



「アンタの胎内にある死海血を、その力で膨張させたらどうなると思う?」



それは想像に難くない惨状。



「――っ!!!!」



自分に訪れる末路を痛感してしまった世良は、叫び声を上げたくても上げれない。



「それはそれは汚い花火の出来上がりで~す」



時雨はその世にも恐ろしい現象を、陽気に彼へと伝えていた。



まるで死刑執行を前にした、狡猾な看守の如く。



「さあイッツ、ショータ~イム」



時雨の掛け声を皮切りに、世良の身体に目に見える異変が訪れる。



それは体積を越えた急激な膨張。まるで水風船だ。



元の身体の数倍は膨れ上がった世良は、もはや人間の表情はしていない。



膨張は尚も止まる事を知らず、目を背けそうな何かが起きようとしている。



「パチンとな」



膨張は臨界点を超え、そして――



“ブラッディ・バブルデス・クライシス ~血栓泡爆殺”



それはまるで水風船に針を突き立てたかの様な――



“パァ-ン”



筆舌にし難い破裂音と共に、世良の膨張した五体は木っ端微塵に霧散していた。



豪華な室内は一瞬にして、ペンキをぶちまけたかのように、赤飛沫に染まる。



しかし時雨自身に血痕は届いていない。



恐らく時雨の周りを包む、赤い霧状が防御膜の役割を果たしているのだろう。



「汚ねぇ花火だ事……」



遺骸の欠片さえ残らず血痕となった“モノ”に、時雨は吐き捨てる様に呟いていた。



「しかしまあ、どんな屑でも血の色だけは等しく赤いのは皮肉だな……」



それは文字通りの皮肉。



どんな善人も悪人も、血の色だけは同じだと。



彼は一瞥する事もなく振り返る。



「さて、仕事も終わった事だし、俺は琉月ちゃんのとこに報告に行くからよ。後は適当にやってくれや」



時雨のそれは報告と言うよりは、早く琉月とのプライベートに持ち込みたいだけだろう。



両手をジーンズのポケットに突っ込みながら、小走りで雫の傍らを通り抜けようとした瞬間――



「あっ! そうだった」



不意に彼は動きを止め、横目で腕組みしたままの雫を見据える。



「今回も邪魔が入ったけどよ……いつかお前とは決着(けり)はつけてやるから」



それは再戦の約束。性格こそ正反対と云えど、似た者同士だからこその、決して御互いが譲れぬ天敵同士。



「フン……何時でも来い」



二人の決着の定め。それは雫もまた同じ。



「それじゃあな。さあて琉月ちゃんと……うひゃひゃ」



たが時雨にとっては、今はそっちの方が重要の模様。



彼は雫と同じく、まるで煙の様に一瞬でこの場から姿を消していた。



この場に息づく者は、雫とジュウベエのみ。



「それにしても変な奴だけど、面白い奴でもあったな」



臭気の充満する部屋内で、ジュウベエが改めて惨状を見渡す。



「しっかし凄ぇ力だな……。お前と同じSS級なだけあるわ」



呆れを通り越して、それはむしろ感心か。



「で、どうよ幸人? 次アイツと闘ったら、勝てそうか?」



ジュウベエはそう雫の左肩より、興味津々に聞きたてる。



見立てでは二人は、ほぼ五分五分。



「……あいつがどれ程強くなろうが、最後に勝つのは俺だ」



当然雫は己の勝利を信じて疑わない。それは時雨も同じだろう。



“でも認めてはいるんだな……”



ジュウベエが真っ先に感じた事がそれ。



同じ領域にあるからこそ、その力は認めた上で自分の方が強いと信じて疑わない。



二人の過去に何があったのかジュウベエも知らなかったが、今回久々に彼の激情を見た気がした事の方が重要だった。



“十年ぶり……か?”



「もう此処に用は無い。後は本部が処理するだろう。さあ帰るぞ」



そんなジュウベエの思考を他所に、雫もまた立ち去ろうとする。



彼の介添え役の仕事も終わったのだ。



「おっ……おう! て事で帰ったら飯な?」



「まだ食う気か……」



談笑もそこそこに、二人の姿もまた煙の様に其処から消えていったのだった。



***********



ガチャリと開かれる重厚な扉。



「……あら?」



深夜の静寂にその響きは絶大だ。



「早かったですね。流石です」



扉の向こうから踏み入れてくる人物へ贈る、労いの言葉は賛辞でもある。



「ただいま琉月ちゃん」



それに応える陽気な声が、中性的も相まって何処か艶かしい。



「お帰りなさいませ。御苦労様でした」



時雨と琉月、二人の仲介室での邂逅。任務達成報告である。



「こんなの楽勝だよ。なんたって琉月ちゃんの為に、速攻片付けてきたんだもんね」



「そっ……それはどうも……」



嘘か真か、時雨のそのテンションの高さに、琉月の声は困惑の色だ。



全くもってこの時雨という男、これまでも今までも真顔になった試しが無い。



この世界に準ずる者としては、その存在は異質とも云えた。



「――て事で約束だよ。さあ行こう二人で、今すぐ!」



報告もまばらに、時雨は椅子に腰掛けたままの琉月に詰め寄っていた。



勿論彼の行動理念はその一点。即ち琉月とのプライベートのみである。



「はいはい……って?」



まるで盛りのついた犬みたいな時雨に呆れながらも、約束は約束、むしろ満更でもなさそうではあるが、琉月は時雨にある“異変”に気付いた。



「その割には珍しいですね。貴方が傷を負うなんて……」



琉月の指摘。それは時雨の右肩にある抉れたような裂傷。出血こそ止まってはいるが、破れた服からは血痕がこびり付いていた。



「ああこれね……大した事じゃないよ」



時雨も指摘に気付いたが、特に気にはしていない。



「余程の強敵がいたみたいですね」



だが琉月は気になるのだ。SS級に傷を負わせる程の事態を。



「いやいや依頼自体は楽勝だったんだけど、ちとアイツとやり合ったもんで」



時雨の発した言葉の意味。



“アイツ”



琉月はその訳に直ぐにピンときた。というより介添え役以外、その相手は有り得ない事に――



「一体何考えてるんですか!」



室内に響く突然の金切り声。普段温厚というより、機械的な琉月とは思えない。



「エリミネーター同士の殺し合いは禁止だとあれほど! 貴方はまだしも、あの人まで何考えてるんでしょう全く!」



「ちょっ! 琉月ちゃん落ち着いて! しかも俺はまだしもって酷っ……」



突然の激昂に時雨は焦りながら弁解するが、彼女は容赦無く責め立てる。



仮面で表情こそ分からないが、きっとその下は吊り上がっているに違いない。



「男の方って、どうしてこう勝手なんでしょう……」



溜め息しか出ないそれは、怒るのも疲れた模様。



「まあまあ琉月ちゃん。男には退けない時があるってもんよ」



「何を馬鹿な事を――!?」



言い訳がましい時雨の態度に、再度激昂を向ける琉月だったが、不意に言葉が詰まる。



「特にアイツとだけは……ね」



それは時雨がこれまでに無い程、真剣な表情で憂いていたように見えたからだ。



「アイツを俺は絶対に認めない。アイツが更に強くなるというのなら……俺は更に、それを超えてみせる」



それは同じSS級、特異点に在るからこそ御互い譲れぬプライドの顕れなのか。



彼等以外には、それは理解出来ない。



「……今回は大目に見ますけど、余り無茶な事はなさらぬよう」



だが琉月はその表情に、すっかり毒気を抜かれていた事は確かだ。



寧ろ口ぶりから彼等、否彼の心配さえしていた。



SS級レベル同士のぶつかり合いは、只の殺し合いには留まらない。地殻変動にまで災害級の影響を及ぼす。



心配するのは狂座としてなのか、それとも――



“個人的に?”



だが琉月の無機質な仮面の前では、それらは決して伺い知る事は出来なかった。



「それより行こうよ早くぅ」



真剣な表情は束の間、すぐに時雨はいつもの冗談混じりの陽気に戻っていた。



「…………」



琉月はおもむろに仮面に右手を添える。



「ちゃんと……良い店を用意しているんでしょうね?」



外していたのだ。これまで決して明かす事はなかった、裏から表の顔へと。



それは同時に仕事終了を意味していた。



「あ……う、うん。勿論だよ」



その姿に時雨は思わず言葉も詰まる。



意外そうというよりは――



「……どうしました? 鳩が豆鉄砲を当てられたような顔をして」



その表情の変化に、彼女は怪訝そうに問い掛けた。



約束でもあり、仕事も終わった。何もおかしい事は無い。



「いや……綺麗だよ琉月ちゃん。やっぱり勿体無いよ仮面で顔隠すの」



つまりは見惚れていたのだ。時雨とは対面なので、彼女のその表情の程を伺う事は出来ないが。



「もう……何時も貴方は調子良い事ばっかり」



「いや本当の本気だよ。でも待てよ? 琉月ちゃんが何時もそうだと、悪い虫が寄って来そうだ。やっぱ俺の前だけで」



「馬鹿……。さあ行きましょう」



あっさり受け流した感もあるが、口調から満更でもない模様。



琉月は美しいまでの黒髪を手で靡かせながら、室内を跡にしようとする。



「琉月ちゃん琉月ちゃん忘れ物!」



「えっ?」



先に行こうとする彼女に、時雨は己の左腕を指差す。



「調子に乗らない」



つまりは腕組みだという事に気付いた琉月は、戒めるように軽く時雨を叩き一蹴。



「そんなぁ!」



心底残念そうに項垂れる時雨だったが――



「もう貴方は子供ですか……。さあ行きますよ」



我儘を聞いてやった訳ではなかろう。



ちゃっかりと琉月はその腕を、己の腕を絡ませていた。



「おぉ! やっぱ琉月ちゃんは話分かるぅ」



「もう……」



どう見ても悪い雰囲気ではない。



そんな談笑の中、二人は共に仲介室を跡にしていた――








※三の罪状 “終”



~To Be Continued






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