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孤児院 院長室
⁇「あ、来た来た」
『院長、どうしたんですか?』
⁇「うん、実はね君の遠い親戚の叔母さんと、叔父さんが無くなったらしいんだ」
『…?はぁ…』
⁇「で、その人達が住んでたお屋敷と財産が全部、そのまま君に引き継がれたんだよ」
『私に…?』
⁇「どうも二人には子供がいなくてね!」
『それで私に…?でも他の親族は…?』
⁇「う〜ん、どうも他の親族は引き継ぎを拒否したみたいでね…」
『はぁ…』
⁇「まぁ、前から働いてたメイドさん達も居るみたいだし、安心して大丈夫だよ」
『別に不安じゃないんですけど』
⁇「まぁまぁ、これ、お屋敷までの地図ね」
一枚の紙を渡される。
『これ通りに行くんですか…?』
⁇「そう!僕は用事があって一緒に行けないけど、くれぐれも気をつけて、行ってね。」
『はい』
⁇「あー、自分の子供が旅立つ気分」
『実質子供ですよ』
⁇「寂しいなぁ、たまには帰ってくるんだよ?」
『はい、顔、出しにきますね』
⁇「玄関までは見送りさせてね」
『部屋で荷物、まとめてきますね』
⁇「終わったら、またおいで。」
『はい』
院長室から出て、自分の部屋に向かう。
荷物を纏める、と言っても、いつでも出られる様にある程度まとめてあったし、皆んなとお別れするくらいしかやることはない。
廊下を歩けば、「ねえちゃん!」と声をかけられた。
そのまま、お腹あたりに衝撃が来る。
白いパンダのパーカーを着た男の子。
私の弟分のnakamuだ。
キラキラと私を見上げてくる。
na「ねえちゃん!今日は何して遊ぶ⁈」
『nakamu…ねえちゃんね、今日からもういないんだ』
na「え?なんで?」
『ねえちゃん、この孤児院を出ることになったの』
意味が分かっていないような顔をしたnakamuの頭を優しく撫でながら言う。
意味を理解したのか、次第に目に涙が溜まっていく。
na「え、ねえちゃん、どっか行っちゃうの…?」
『うん、だから遊べない。ごめんね?』
na「〜〜ッヤダ!ヤダヤダヤダ!ねえちゃん行かないで!」
『ごめん、もう決まったことなんだ』
na「なんで?おれのこと、キライ?」
『んーん。大好き。引っ越しても、たまに顔出しに来るから。』
na「ホント?絶対だよ!」
『うん。絶対。』
na「指切り!」
『ん』
互いの小指を絡ませる。
「指切った!」
同時に小指を離す。
一度、ぎゅ、と抱きしめて、自分の部屋に向かう。
他の子達にはnakamuが説明してくれるだろう。
楽しかった孤児院生活は終わりを迎える。
分かっていたことだけど、涙が出てきた。
部屋の扉を閉め、ある程度まとまっている荷物を引っ張り出す。
そこにまだ入れていなかった必要最低限のものを詰め、部屋を出た。
荷物を抱え、院長室に向かう。
コンコン、と院長室の扉を叩けば、中から院長が顔を出す。
⁇「用意、はやかったね。じゃ、行こうか」
手を出され、それを握る。
玄関に行けば孤児院の子供達が勢揃いしていた。
口々に「また来てね!」や「忘れんなよ!」などの声が聞こえる。
また涙が出てきた。
玄関の扉の前に院長と立つ。
⁇「いい?ここからは院長と孤児じゃない。一人の人間だ。強く、生きていくんだよ」
『はい』
強く、深く頷き、扉に手をかける。
美しく輝く太陽が私の旅立ちを祝福しているかのようだった。
院長の赤い髪が風に吹かれて揺れる。
『院長…いや、ともさん。行ってきます』
一瞬、驚きつつふにゃと優しく、ともさんは微笑んだ。
tm「うん、行ってらっしゃい。スザンナ、元気でね」
目を合わせ、少し笑う。
孤児院の子供達に手を振り、振り返る。
長い道を見てこれからの生活に腹を括った。
スザンナ12歳。
まだ見ぬ屋敷へと、旅立ちます。
あれ?なんか院長に上手く丸め込まれてた気がする。
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