テラーノベル
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グラシア樹海から街へ戻り始めるシンヤ達一行。
彼らの行手に、湖が見えてきた。
「へえ。こんなところに湖があったとはな」
シンヤがそう呟く。
彼の魔法【イーグルアイ】を使えば、空から見下ろすような視点で周囲を見渡すことができる。
しかし、さすがに常時発動しているわけではない。
複数の視点を持つことにより、注意力がどうしても分散してしまうからだ。
そのため、彼は必要な時以外はイーグルアイを使っていない。
「綺麗なところだ」
「そうだナ。水も透き通っていて気持ち良さそうダ」
シンヤ達は湖のそばに寄る。
すると、水面に自分の姿が映り込んだ。
「おっ! オレの顔が写ってる!」
レオナードが驚いた声を上げた。
普通の水ではここまで鮮明には見えないだろう。
それくらいに、この湖の水は透明度が高いのだ。
「ちょうど良かった。ここで休憩にしよう」
「賛成だ」
「あたしもいいゾ」
シンヤの提案に賛成する二人。
「では、我らは周囲の警戒をしておきましょう」
「いいのか?」
「ええ。ここまで我らは何もしておりませんので……」
レオナードのパーティメンバーがそう言う。
確かに、彼らは特に働いていない。
レオナードは、レッドボアを討伐した。
シンヤは、レオナードのピンチを救った。
ミレアは、行き帰りの先頭を歩き、弱い魔物を追い払った。
「分かった。じゃあよろしく頼むぞ」
シンヤがそう答えると、彼らは少し離れたところに歩いていった。
「さあ、俺達は俺達でくつろごうぜ」
シンヤは適当な場所に腰掛けると、コップを取り出した。
湖の水を汲み上げ、喉を潤わせる。
ミレアとレオナードもそれにならう。
「美味しいナ」
「ああ……。疲れが取れていく気がするぜ」
「確かにな」
シンヤは周囲の気配を探るが、湖の中に魔物はいないようだ。
「この湖は安全みたいだな」
「それは何よりだ」
シンヤの言葉に、レオナードが笑う。
「じゃあ、少しだけ水を浴びようかな」
シンヤは立ち上がると、服を脱ぎ始めた。
「おい、ちょっと待て! こんなところで脱ぐんじゃねえよ!?」
「ん? 別に誰も見てないだろ?」
「オレが見てるだろうが! それに、ミレア姉貴だって!!」
慌てるレオナード。
ちなみに、レオナードとミレアに血縁関係はない。
彼が兄貴と慕うシンヤのパーティメンバーということで、相応に敬意を払っているだけだ。
「今更ミレアに見られたから何だというのか。既に深い仲になっているというのに。なあ? ミレア」
「そうだナ。あたしの全てはシンヤのものサ」
「なっ……!! ななな何を言ってんだよ!」
レオナードは顔を真っ赤にする。
そんな彼を見て、シンヤは笑う。
「何って、言葉通りの意味だよ。ミレアの全身のホクロの位置から、お尻のシワの数まで知っているんだぞ?」
「ちょ、おま……、えええええ!? マジかよおぉぉーーッ!?」
レオナードが頭を抱えて叫ぶ。
そんな彼に、シンヤは追い打ちをかけるように言った。
「その反応……。お前ひょっとして、まだ童貞なのか?」
「そ、そんなわけあるかい! そもそも俺は……。……いや、でも……」
「でも? なんだって?」
「なんでもねぇよ!」
シンヤの問い掛けに、レオナードは答えなかった。
「そのへんにしておこウ、シンヤ。レオナードをあんまり苛めるのは良くないゾ」
ミレアが助け舟を出す。
「ミレアがそう言うならそうするか。……って、おいおい。いつの間に服を脱いだんだよ?」
「ついさっきダヨ」
「……」
シンヤの目の前には全裸になったミレアがいた。
彼女は、湖の水に足を付ける。
シンヤは彼女の裸など見慣れている。
そのため、極端に騒ぐことはない。
ただ、美しい女性の肢体を間近で見て、健全な青年の体が反応しないわけがなかった。
「ふ、ふつくしい……」
シンヤは思わず呟いた。
そして、気付いた時には無意識のうちに手を伸ばしていた。
「んン……」
シンヤの手が、ミレアのお腹に触れる。
「あっ。ごめん。痛かったか?」
「大丈夫ダヨ」
「そうか……。うん、本当に綺麗だ」
「ありがト」
シンヤはミレアに近付くと、そのまま抱き寄せた。
二人の唇が重なる。
そんな彼らの交わりを、レオナードは食い入るように見ていた。
「何を見ている。ミレアの裸をそれ以上見たら、殺すぞ」
シンヤがそう言い放つ。
自分達から勝手に脱いでおいて、ひどい言い草である。
「わ、分かってるよ!」
シンヤに言われて、慌てて目を逸らすレオナード。
だが、チラリと見てしまう。
シンヤのそそり立ったモノを……。
彼はレオナードからの視線に気づいたのか、ミレアから離れた。
「レオナード。お前、どこを見てるんだよ。確かにミレアの裸は見ないように言ったがな。だからって、俺のモノを凝視してどうするんだよ」
「み、見てねえし! 見てねえけどよ……」
「ふん。そう言えば、お前のモノはずいぶんと小さかったよなぁ。大きいモノに憧れでもあるのか? ん?」
シンヤが自身の股間を強調するかのように、前へ突き出す。
男相手に見せつけるような趣味はないが、レオナードの反応はなぜか面白くてついからかってしまう。
すると、レオナードの顔がさらに赤くなった。
「う、うるせえな。別にそんなんじゃねえよ。そもそも、俺は男じゃ……」
「んん? 何か言ったか?」
シンヤが耳を寄せる。
「何でもねぇよ!」
「そうか。ならいいんだが」
シンヤはレオナードへのからかいを一段落させる。
レオナードが相手だとなぜかやり過ぎてしまうが、本来彼に男と戯れる趣味はないのだ。
「さてと。ミレア、行こうか」
「ああ。全身を浸かれば気持ち良さそうだ。深いところまで行こウ」
そうして、シンヤとミレアは湖に入っていったのであった。
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