夫婦の日常②

誰でも、自分を好きになってくれるならいいと思ったわけじゃない。男だから。おかしいだろうから、と何度も気持ちを否定してきた。でも、やっぱり消えない気持ち。黙って持っていよう。想うだけならいいよな。と自分を納得させた。

だが、身近に目黒と渡辺という付き合っている2人がいる。

フランスまで行って結婚して来た。あの2人はその覚悟があるということ。

世間には、まだ知られてないけどグループ内では仲良しの2人だ。

深澤は羨ましいと思った。自分には、そんな勇気ない。

眺めているだけ、自分を信頼してくれてありがたいと思った。

だが、それと恋は別だ。愛して愛されて、目黒たちのようになりたいと思ったとき、岩本には無理だと思った。

だから、気持ちは封印して、笑い合う。今の関係が壊れるなら黙っている。

渡辺ーふっか、そんなに好きなら言えば？

深澤ーナベ、何のこと？

渡辺ー照が気になる。好きなんだろ？

深澤ーそんなはずないじゃん。

渡辺ーふ〜ん。

深澤ーお前たちとは違う。

渡辺ー目黒は2年かかったけど、照はそんな待たせないだろうし。

深澤ー2年！

渡辺ーだから、照は、大丈夫だ。

深澤ー何でそう思う？

渡辺ー内緒。

深澤ーナベ〜。

渡辺ー本気の恋なら、照に言ってみろ。

深澤ーナベとめめは素敵な2人だと思うけど、俺は、違う。

渡辺は、この悪友が泣きそうな顔して言ってるの、分かってないだろう。

目黒のところに、岩本が相談しに行ってるなんて考えないだろう。

目黒ーどうだった？

渡辺ー認めない。

目黒ーまぁ、勇気のいることだしね。

渡辺ーあぁ、勇気いったさ。怖かったし。

目黒ー今は？

渡辺ー内緒。言わない。

目黒ーあれ？好きになって良かった、じゃないの？

渡辺ー内緒ったら内緒！

深澤に偉そうに言うけど、渡辺も怖かった。目黒がじゃなくて、自分が変わりそうで。今までの渡辺ではなくなりそうで、1年も待たせてしまった。好きの気持ちが心に少しずつ貯まるのが、怖かった。今は、もう、離れて暮らせない。そんなこと言えない。だから、内緒。

深澤は、好きが溢れている。気がついてないだけ。

目黒に相談しに来た岩本も、好きが溢れている。

岩本には、まだ自分は長男だし、と思っている。後ひと息。

覚悟が決まれば2人は一緒にいることを選ぶだろう。

深澤は、渡辺の言葉を思い出す。岩本なら、2年も待たせない。どういうこと？

いいのかな？この気持ち岩本に告げても。いやいや、想うだけでいい。苦しくて泣くときもあるけど、言わない方がいい。

渡辺ー何で分かんないかなぁ。

目黒ー翔太くんだって、分からなかったじゃない。

渡辺ーでも、あんなに2人とも好きが溢れてるのに。

目黒ー岩本くんが覚悟決めたら、大丈夫じゃない？

渡辺ー弟いるし。

目黒ーあっ、LINE。

渡辺ーん？

目黒ー岩本くんだ。決めたって。ふっかさん、誰にも渡せないからちゃんと言うって。

岩本ーふっか。

深澤ーん？

岩本ーお前を誰にもあげない。俺のそばにいて？

深澤ー…ほ、んき？

岩本ーん、決めた。

深澤ー俺でいいの？

岩本ーふっかがいい。

ソファでマッサージを受けながら寝てしまった深澤。

ゆっくり覚醒する。

深澤ー昔の夢見てた。

岩本ーいつ？

深澤ー照が、俺を選んでくれたときのこと。

岩本ー楽になったか？

深澤ーん、ありがと。

岩本ー懐かしいことを、何で今？

深澤ー分かんない。だけど、幸せなのは、分かる。嬉しかった。

岩本ー俺もだ。寝よう。

深澤ー照、大好き。

岩本ーふふふ、大好き。

岩本と深澤は、目黒と渡辺みたいに、幸せそうな顔をして、抱き合って眠る。

見たことないけど、目黒と渡辺はきっと幸せだと思うから。