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すみません、再投稿に再投稿を重ねて、再々投稿になっております… 理由と致しましては、投稿しても通知が来ないことがあり(自分自身の通知が来なかった)、日を改めて投稿した事になります 投稿が遅くなり申し訳ありません これからも『向日葵の咲かない日曜』をお楽しみいただけると幸いです 向日葵の咲かない日曜日 作者 兎雪。 次回♡3000
本当だったら、黒と一緒に楽しく学校に 行くはずだった未来
そんな明るい未来を、握り潰したのは 俺自身だ
そんな事を考えていると リビングの戸が開いた
「桃、おはよう」
「あ、叔父さん、おはようございます」
「叔父さん」というのは母の再婚相手の人
優しくて、とても面倒見がいい人だった
そのおかげか、水はとても叔父さんに 懐いていて、体調のいい日は一緒に 外で遊んでいるのをよく見かける
そして叔父さんは唯一俺が 安心して喋れる人でもある
どんな事を喋っても楽しそうに聞いてくれ
愚痴を話しても笑って前向きに 考えてくれる、その叔父さんの笑顔に また俺も笑みがこぼれる
そんな叔父さんが俺は大切な存在だ
でも、黒はまだ叔父さんに心を 開いていない
昔から気が弱くて、心を開くのが苦手な黒
それでも1度心を許すと、笑顔が咲き 人当たりのいい子に打って変わる
叔父さんもそんな黒を見たら 俺なんていらなくなるだろう
頭の中で嫌な思考が流れ 表情が暗くなってしまう
俺とは正反対に優しい笑みを浮かべている
叔父さんは俺の横を通り、玄関で靴を 履いていた
靴を履き終わるとこちらへ振り向き、 声を漏らした
「悪いな、俺は今から仕事だから、 」
「水とお母さんを、よろしくな」
「……」
そう言って、叔父さん は玄関の戸を閉めた
「はい」と自信を持って言いたかった
本当に、家族を守れるだろうか
不登校で何もしていない俺だ
家族の信頼は0とも言ってもいい
それは自分でもわかる程だった
母は黒と俺を愛してはいないと思う
母が本当に愛しているのは、水と
亡くなった父、そして再婚相手の叔父さん
水は父と瓜二つで、性格も似ていた
大きくて今にも吸い込まれそうな瞳
細くも太くもないが、くっきりとした
鼻筋が通った鼻
そして水のチャームポイントである
左目の目尻に並んだ2つのほくろ
これも全部、父と全く同じである
そんな水に母は完全に依存している
母がいつか「水」を「父」と認識しそうで
見るのが不快だった
『水が兄弟じゃ無かったら、俺も見てくれるのかな』
嫌、違う酷すぎる
一瞬この考えに納得した自分を憎む
水は大切な弟なのに、どうも母が絡むと 水自体も嫌いになってしまう
こんな考えしか頭に浮かばない自分が嫌だ
こんな時、黒だったらどうしてるかな
きっと平等に解決できるんだろうな、と 頭の中は一瞬で答えを出した
そんな時、俺1人しかいないリビングに 電子音が鳴り響いた 母のスマホからだった
俺はソファから立ち上がり母のスマホに 表示されている名前を見た
『賽子中学校』
見たくもない中学校の名前
俺が休んでいる学校で黒が通っている学校
母の代わりに出ようと思ったが 体が拒絶している
頭では出なくてはいけないと分かっているが、体がスマホを握らない
辛うじて母のスマホを握り、
2階に上がる
『水のへや』と書かれたネームプレートに
更に緊張感高くなった
一息着き、ドアをノックする
「お母さん、電話鳴ってるよ」
震える声でドアに向かって言葉を放つ
数秒後、ドタバタと音が聞こえた
ドアノブが曲がり、母と目が合う
「あの、…黒の中学から…電話が…」
「…、水を見ていて」
そう言うと母は乱暴に俺の手から スマホを取ると俺を水の部屋に押し込む
そして「ガチャンッ」と大きな音を立て 扉を閉めた
水の部屋に足を踏み入れ、ゆっくりと 水が寝ているベットに近づく
荒い息を吐き、顔を真っ赤にしている水の 頭をゆっくりを撫でる
「……おにーちゃん?」
「……」
『まだ寝てていいよ』
『大丈夫?』
『お兄ちゃん傍いるよ』
頭の中では分かってる
なにか声をかけなきゃいけない
優しい言葉を考えても、実際に 俺の口からその言葉が出るとは限らない
むしろ逆に水が傷ついてしまう言葉を 話してしまいそうで、怖い
「…大丈夫、寝な」
やっとの事で話した7文字に、
俺の水に対する素直な言葉を話した
「…分かった、おやすみぃ…」
俺は無邪気に目を細め眠り着いた水の頭を
再びゆっくり撫で始めた