テラーノベル
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ふらんすサイドをノベルとチャットノベルどっちで作るか悩み中。
ベルリンからローマへ向かう地下鉄の中。
人はほとんどいなく、がらんとした車内はかえって心地が良い。だが、全く眠くはならない。毎日頭痛がして気持ち悪いが、自分なんかを愛してくれる人がいた現実と、気持ち悪くはないけど愛してくれる人はいない夢の中。
どちらがマシだろうか。
どちらでも辛いから、逃げ場がない。悪夢のことを現実世界に持ち出しても、「気の持ちよう」と言われるだけで。フランスには心配をかけさせてしまうだけで。
それがすでに分かりきっているからこそ、私はもう素直に笑えないし、本音を言えない。
嘘で取り繕って、「イギリス」というキャラでいることしかできない。
GB「……ぁ」
気持ちが完全に沈んだそのとき、車内のアナウンスでローマに着いていたことに気づく。急いで電車を降り、駅のホームで一人立ちすくむ。すると、目の前に人影がゆらりと現れた。
「おい、兄ちゃん」
深く帽子を被り、丸レンズのサングラスをかけ全身は黒いコートに包まれている。
いかにもマフィアといった服装の男が、上から喋りかけてくる。裏社会の人間であると一目で分かった。
此奴の話を聞いてはいけないと、頭がSTOPをかける。今すぐに、逃げなければいけないと。今すぐに、逃げろと。
なのに、足が動かない。何か器具で固定されたか疑うほど、疲労か恐怖かが原因に動かない。GB「な、なんでしょう…?」
震える体でなんとか返答をする。この恐怖からどうしても逃げられない。逃げたい筈なのに、足も体も動かなくて逃げられない。
「兄ちゃん可愛い顔してんじゃん。だから」
「「これから俺らでレ◎プするんだー」」
そう言うと同時に、手をがっちり拘束される。
GB「ッ…!?」
早く抵抗しろ、私の体。少なからず此奴らより力もあるはずなのだ。“国”の化身として、何年も何十年も何百年も頑張ってきた筈なのに。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
GB「やだッやめろ…‼︎ポロポロ」
そう叫びキックしようとするも力が入らない。GB「やめてッ……ポロポロ」
私のその掠れた言葉と同時に、2発の発砲音が聞こえる。拘束してきた男の手が、私の服に触れていた男の手が、離れて床へ落ちる。
彼らは心臓を打たれ即死していた。
先ほどの発砲音だろう。私の味方か、敵か。
なんとなく、鋭い殺気を感じた。
敵だ。
でもここで終わるのも悪くはない。
そう思い、手を差し出した。
その瞬間。
ばふっ!
誰かが抱きついてくる。
GB「えっあ…?その声は…」
暗闇でよく見えないものの、明るく元気そうに“聞こえる”声に覚えがあった。
GB「イタ王、さんッ?」
IT👑「そうだよ〜、イギリス久しぶり!」
GB「ッぁあッポロポロ」
今度はイタ王さんに会えた安堵と、恐怖からの解放で涙が溢れていく。
それを見た彼は、その二つの大きな瞳で此方を心配そうに見つめた後、
IT👑「着いてきて、今のイギリスぴったりの所があるから」
そう言って私の手を引っ張っていく。
その手に引かれるがまま、後ろをついて行く。
その間、彼はいろんな話をしてくれた。
イタリアにはこの世界に手を染めて欲しくないから、戦後は自分がマフィアになったこと。
フランスは実はマカロンが大好きなこと。
ポルトガルのカーディガンをずっと着てたスペインが、この前ポルトガルに怒られてたこと。
世間話から自分の身の内まで、分け隔てなく屈託もなく話す彼の隣は、緊張をほぐすには十分だった。
少し歩いて着いたのは、月が鏡の如く反射して映る美しい海。彼はそこで手を引っ張るのを辞め、近くにあった一つの古びたベンチに腰を下ろした。その横に、釣られるように座る。
イタ王さんは今にも消えてしまいそうな顔で、湖に映った月を眺める。
そして、ゆっくりと口を開いた。
IT👑「ioはね、イギリスを見てると苦しいの」
IT👑「ioと違って君は愛されるべきなのに、どうしてだろうね」
彼が手を伸ばし私の目の下を触る。
IT👑「こんなにも弱っちゃったんね…」
その寂しげな、でもどこか同情を帯びた視線は心地が良くて、安心できた。
相変わらず彼は、月を見ている。
IT👑「それと…夜のイタリアは危ないし……。どうしてここまで一人で来たんね?」
GB「それは……」
そう言って口をつぐんだ。
隣をチラリと見ると、大きな二つの瞳は私を急かすことなく、優しげな視線で見ている。
無理しないでいいよ、と言いたげなその目線は、本音を打ち明けるには十分すぎた。私のことを理解してくれているようで嬉しかった。
この人なら言ってもいいと思う。イタ王さんなら、大丈夫だと思う。そう思える。
GB「フランスに内緒で…旅行してまして」
GB「理由は…本当に些細なことで。最近悪夢を見るんです」
GB「それも、フランスやお父様に何度も責められる夢。それが現実と重なって、もう区別がつかないんです。」
GB「愛して、愛されている人な筈なのに、怖くて怖くてッ仕方がなくて…ポロポロ」
GB「もうッ…限界だったんです…ポロポロ」
つい、本音が溢れ泣き出してしまった。
そんな私を、彼は優しく撫でてくれる。その手も表情も温かいけど、どこかすぐ壊れてしまいそうで。
GB(イタ王さんも…辛いんじゃ…)
そんな考えが頭をよぎってすぐ、イタ王さんが声を漏らす。
IT👑「イギリスは無理しすぎちゃったんだね」
IT👑「ioはいいと思うよ、旅行してても」
その声は前会ったイタ王さんより寂しげで。
GB「イタ王、ッさんは…ッ?ポロポロ」
GB「辛くッないんですかポロポロ」
そう言うとイタ王さんは一瞬目を見開き、また優しげな顔に戻る。
IT👑「ioは大丈夫だよ、ちょっと疲れてるだけ」
言い終わると同時に、後ろから声がした。
??「いたいたー!もう、パパ!どこ行ってたんね?」
??「イギリスさんも…遅くまで出てたら危ないじゃん、帰ろ?」
??「兄さんもね」
そこに居たのは私より小さい、明るい声の持ち主と。
私より少し大きく、大人びた印象のスーツに身を纏う国。
IT👑「もー…、イタリアにサロ」
IT🦅「今日も此処に居たんだ?」
IT👑「そ、にしても見つけるのいっつも早いんね……」
IT🦅「当然」
IT👑「イギリスも…今日は遅いし家おいで」
GB「い、良いんですか?」
IT🦅「遠慮とか要らないよ、行こ」
一見不愛想に見えるサロさんも含め、このイタリア一家は皆温かいのだとすぐに分かった。
そのまま自分でも珍しく素直についていく。
湖はどんどん遠くなり、しばらくして大きな二階建ての家が見えた。
その日の夜は、悪夢を見なかった。
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