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「ん…ふ、、ふ…ぁ…りょ…た、、く、ん…」
「んんぅっ、、、ぁ、らぅ…んふ、、ぁ…っ…」
どのくらいの時間、涼太くんとこうしてキスをし続けいるだろうか。
ずっとこうしていたくて、涼太くんから離れたくなくて、何度も何度も角度を変えて、涼太くんのぷるぷるした唇に触れていた。
重ねるたびに高くなっていく涼太くんの口の中の温度に、こちらが先に溶けてしまいそうになる。
熱に浮かされたような思考の中でふと思う。
キスした後のこと、めめに教えてもらってない。
この後ってどうしたらいいんだろう。
この先ってなにか続きがあるの?
え、わかんない。恋人同士って、大人のキスして、それからなにかするの?
聞いておくんだった…。
完全に無計画で始めてしまって、この後にすべきことなんて何も頭に浮かばないまま、俺の体の中が気持ちい感覚と、この次の事への不安な気持ちでいっぱいになった。
でも、まずは、目の前の涼太くんのことに集中しないと、と少し口を離して様子を伺ってみると、
そこには、八の字に下がった眉と、切なそうに細められて潤んだ瞳、真っ赤に染まった顔、甘く小刻みに震える吐息で俺を見上げる涼太くんの顔があった。
こんな涼太くんの顔、見たことがなくて、驚いて後ろに飛び退いた。
「っ!!?!ごめんッ!!!!」
やり過ぎた!?どうしよう…涼太くんすごく辛そうに見える、、、やっちゃった…。
どきどきさせたいのに、疲れさせてどうするんだ…!!俺のバカ!!!
怒られるかもしれない…。いや、涼太くんと出会ってから今まで、涼太くんからお説教されたことなんて一度もないけど、今回ばかりは優しい涼太くんの堪忍袋の緒が切れても仕方がないだろう。
こんなにわがままに求めたくせにだけど、嫌われたくないよぉ…。
これからこっぴどく叱られるであろう未来を想像しながら、涼太くんが背中を預けるソファーの真ん中で、涼太くんの脚の間に正座をして、その時を待った。
今日、俺はラウールと初めて深いキスをしている。
以前出演していた映画で、そういうことをしていたのは、ラウールと一緒に映画鑑賞会をしたので覚えているけれど、こんなに上手なのかと驚きながら、なんとかそれに応えていた。
ただ舌を重ね合わせるだけじゃなくて、ラウールの全てで、俺の中を蹂躙される。その感覚に、俺はとっくに全身溶かされて、いざという時は俺がリードしないとと思っていたことなど、もはや杞憂だったのではないかと思うほどだった。
天性のものなのか、無意識でここまでできるこの子に、ほんの少し怖さみたいなものを覚える。
このキスが終わったら、ついに俺は抱かれるのかもしれない。
…しまった。なんの準備もしていない。この一年弱、そんな素振りを少しも見せなかったこの子との生活に甘えきっていた。
いつ何があってもいいように、この子がショックを受けないように、万全の状態でいなければと思っていた、あの付き合いたての頃の俺の意識はどこへ行っていたんだ。
男同士の行為は、女性を相手にするよりも何倍も刺激が強いし、お互いに疲弊するもの、目にしたくないもの、たくさんあるのだ。だから、この子と向き合っていくと決心して手を取った時に、決めていたのに。
この子を傷付けない、なるべく辛く過激なものは見せない、この子を幸せにすると。
不覚にもたるんでいた。このまま始まってしまったらどうしよう。
…よし、そうなったらそうなったで、一旦お風呂に入らせてもらおう。
こちらの準備は5分以内で全て済ませて何事もなかったかのように振る舞おう。うん、それで行こう。
甘い空気が充満するこの部屋で、なんとも色気のないことを熟考していると、不意にラウールと触れ合っていた唇が離れた。キラキラと輝く銀糸がピンと張って、ラウールの綺麗な顔がはっきりと見えていくと、それはぷつっと切れた。
言葉もなく見つめ合い、あぁ、ついにこの日が来たかと覚悟を決めると、ラウールは突然後ろに飛び退いた。
叫ぶように「ごめん」とラウールは言った。
えーっと、、、、もしかして、、拒否された…?
それと、何に対しての「ごめん」?
ん?待って?こんなに濃いキスしておいて??やっぱ無理だった??
声漏れちゃってたの、気持ち悪かったかな…。
そりゃそうだよね、、女の子みたいに可愛くて高い声じゃないし、ラウールからしてみれば、もうおじさんだし…。
嫌われちゃったかな…。やだ、泣きたくない…。抑えろ。泣くな。
お願い、嫌いにならないで…。
俺から勢いよく後ずさったラウールは、俺の足の間で正座をして項垂れていた。
涼太くんは何も言わなかった。
怒らないし、僕を嗜めたりもしなかった。
沈黙が怖くて、涼太くんの顔を見ると、さっきみたいなふにゃっとした下がり眉じゃなくて、辛そうに顔全体が歪んでいた。唇はきゅっと引き結ばれていて、なんだか、なにかに耐えるような、そんな表情だった。
その顔に、僕も辛くなった。
そんな顔しないで。
涼太くんをわかってあげたいのに、どうしてそんな顔をするのかわからなくて、自分が情けなくなる。察せない自分を悔しく思うけれど、そんなことより、今は涼太くんがもう一度笑ってくれることの方が大事だ。
僕は涼太くんの目を見て尋ねた。
「涼太くん、悲しいの…?僕、涼太くんの気持ちわかってあげられなくて、、ごめんね…。どうしてそんなに苦しそうにしてるの…?」
悲しいのか、なぜ苦しそうなのか、そう問われても言葉に詰まってしまう。
だって、どう伝えたらいいっていうのだろうか。
抱いて欲しくても、この子にそんなこと言って拒まれたら、もう立ち直れない。
大切にしたいから、今のままずっとラウールのそばにいられれば、それで構わない。
俺の中にあるラウールを好きな気持ちは、どうしてこうも一筋縄じゃいかないの。
俺は、この子とどうなっていきたいの。
もう、わからない。
でも、これだけは思う。
どうか、どうか、
「拒まないで、俺から離れていかないで…」
ラウールは大きく目を見開いた。
拒まないでって、離れていかないでって、、、そんなことするわけないじゃん!
なんでそんなこと言うんだろう。僕、こんなに涼太くんのこと大好きなのに。
…僕がなにか、涼太くんを不安にさせることしちゃったのかな……。
なら、安心させてあげないと!!
涼太くんの両手を引いて起き上がらせて、ぎゅっと涼太くんを抱き締めた。
「僕、どこにも行かないよ。ずっと涼太くんのそばにいる。僕が初めて涼太くんに告白した時から、僕はずっと涼太くんの近くにいたでしょ?これからも離れたりしない。涼太くんがどっか行ってって言っても、絶対離れてあげない。…だから、そんな顔しないで…?」
「っ、らう…らうっ…すき、すき…俺もずっとそばにいたい…」
「んへへ、、うれしい。涼太くんが好きって言ってくれた。僕、今すんごい幸せ!」
涼太くんは、僕の背中に腕を回して、脚も僕の腰に巻き付けて、がっちりと僕にしがみついていた。なんだかコアラみたいで可愛い。
涼太くんが甘えてくれるのが嬉しくて、僕も涼太くんの肩口に頭を埋めて目一杯頬擦りした。
そうだ。聞いてみるなら今かもしれない。
「ねぇ、涼太くん。最近の僕、どうだった?大人の男みたいになりたくて頑張ってみたんだ」
「………………ぁ…。」
「…ん?なぁに?」
「〜ッ!!だから!かっこよ過ぎて困ってたって言ったの!!!!」
「え!?ほんと!?!やったぁああっ!」
「やったぁじゃない!こっちは心臓壊れちゃうかと思ったんだから!!あんなこと、 誰に教え込まれたの!」
「え、めめだけど…。」
「目黒…あの野郎…。」
「僕が頼んだんだよー!涼太くんをどきどきさせたいって!」
「んな…っ、、、ぁ……、、ばかぁ…っ」
「えー、ひどい!僕は真面目にそう思ってるのにー!」
「そんなことしなくても、十分毎日ときめいてるから……ぁッ。。。」
「え、ほんと!?ほんとに!!?涼太くん、僕にめろめろになってくれてるの!?」
「っ!…もうなんとでも好きに言って……っ、、」
きゅうぅっと縮む心臓が苦しくて、でも幸せで、僕は耐え切れずに涼太くんをぎゅっと抱き締めなおした。
「涼太くん大好きっ!!!!」
次の日、めめに「恋人同士って大人のキスしたら、次はなにをするの?」と聞いたら、涼太くんにたまたまその会話を聞かれてしまった。真っ赤な顔をした涼太くんから「なんでもかんでも目黒に聞かないの!」と叱られた。
僕のときめき大作戦は、これからも続いていきそうです。
END
コメント
2件
やーん可愛すぎる!!!😍🤦🏻♀️🤍❤️