テラーノベル
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その日の放課後。
教室に残っていると、クラスで人気者の、
一ノ瀬 陽向 が近づいてきた。
〔 お、残ってるのか美羽 〕
いつも通りの笑顔。
だが、今日はなんだか視線が特別に鋭い気がした。
『 うん、ちょっと忘れ物があって… 』
陽向はさりげなく美羽のプリントを拾い、机に置いてくれる。
〔 昨日、体育で転んでたよな。大丈夫? 〕
___えっ?
美羽は一瞬、どきっとする。
体育
その単語にはつい最近、話した記憶があった。
_._._
_『 私、体育が本当に苦手なんだよね 』
_「 そうなんだ。 」
_._._
( え、もしかして日記の相手って、
陽向なの、? )
その日の夜、ノートに書き込む手が止まった。
_『 今日体育のことで声かけてくれたの、あ
なた? 』
翌日。
返ってきた返事は短く、でもどこか意図的にぼかされた言葉だった。
_「 誰かは秘密。でも君が笑ってくれるな
ら、それでいい 」
美羽は混乱した。
陽向の優しさに心が揺れる。
でも、文字の向こうの相手が本当に陽向かは、まだわからない。
( まさか、こんなにドキドキするなんて )
文字のやり取りの相手と現実の陽向。
どちらにも惹かれる自分に、少し戸惑った。
窓の外の夕焼けが、教室の机をオレンジ色に染めていた。
ページの向こうの誰か__
その正体は、まだ遠くにある。
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