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午後六時十二分。日本一混雑する駅、新宿駅。
帰宅ラッシュの人波が、改札を埋め尽くしていた。
その瞬間。
――ドンッ!!
地下通路が激しく揺れた。
悲鳴。
白煙。
止まるエスカレーター。
「爆発だ!!」
誰かの叫びで、群衆が一斉に走り出す。
だが、逃げ場はない。
スマホの緊急速報が鳴る。
【新宿駅構内で爆発。直ちに避難してください】
そして三十秒後。
二度目の爆発が起きた。
⸻
警視庁公安部・特殊捜査班。
真田玲司は、防弾ベストを掴みながらテレビを見ていた。
映し出されるのは混乱する駅前。
煙の上がる東口。
レポーターの震える声。
『現在、少なくとも三か所で爆発が確認されています――』
「連続か……」
真田は低く呟く。
その時、部下が駆け込んできた。
「犯行声明です!」
タブレット画面には、匿名サイトに投稿された動画。
黒いフードを被った人物が映っていた。
『これは警告だ』
機械音声が流れる。
『東京は腐っている』
『次は午後七時。止めたければ、“K”を探せ』
動画はそこで切れた。
⸻
現場。
東京都庁周辺には規制線が張られ、救急車の赤色灯が雨に滲んでいた。
真田は爆発現場を見渡す。
爆薬は比較的小規模。
しかし、人を殺すより“混乱”を狙っている。
「愉快犯じゃないな」
鑑識が近づく。
「現場からこれが」
渡されたのは、焼け焦げたICカード。
裏に“K”の文字。
⸻
午後六時四十分。
捜査本部は混乱していた。
「“K”って誰だ!?」
「組織名か!?」
怒号が飛び交う中、真田だけは別のことを考えていた。
“K”。
もし人名なら。
その時、真田の脳裏に一人の男が浮かぶ。
片桐圭介。
五年前、公安を辞めた爆発物処理班の元エース。
そして――真田の元相棒だった。
⸻
片桐は、歌舞伎町の外れにある古い雑居ビルにいた。
ドアを蹴破って入る真田。
「片桐!」
暗い部屋。
机には無線機、地図、ノートPC。
片桐は振り返り、苦笑した。
「久しぶりだな」
「お前じゃないのか」
「違う」
即答だった。
しかし真田は銃を下ろさない。
「じゃあなんで“K”なんだ」
片桐は数秒黙り、やがて言った。
「俺を犯人にしたい奴がいる」
⸻
午後六時五十五分。
新たなメッセージが届く。
『七時ちょうど。西口』
駅には、まだ避難しきれていない人々がいた。
真田たちは走る。
雑踏。サイレン。怒鳴り声。
その中で片桐が突然立ち止まった。
「……違う」
「何?」
「西口じゃない。“西口から見える場所”だ」
片桐は顔を上げる。
その視線の先。
新宿住友ビル。
「爆弾はあそこだ!」
⸻
七時〇〇分。
エレベーター停止。
非常階段を駆け上がる二人。
爆弾は展望フロアにあった。
残り時間、四十秒。
配線は三本。
赤、青、黒。
真田が息を飲む。
「どれだ……」
片桐は装置を見る。
そして静かに言う。
「これは解除させるための爆弾じゃない」
「何?」
「――時間稼ぎだ」
その瞬間。
片桐の携帯に通知が届く。
都内各所の監視カメラ映像。
渋谷。池袋。東京駅。
同時に表示される、不審なバッグ。
真田の背筋が凍る。
「まさか……」
片桐は苦い顔で笑った。