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独り言をこぼしながら、『メンズ シンプル』というキーワードで再検索する。
画面に並ぶモデルたちの写真を目で追うが、どれも「これだ!」という決定打に欠ける。
「うーん……やっぱり服はリスク高いかな」
候補が並ぶページを親指でスクロールするたび、シーツとパジャマが擦れるかすかな音が耳に届く。
考え込むたびに、空中で足をパタパタと交差させる。
パジャマの裾から入り込む夜の空気が、少しだけ肌に冷たくて気持ちいい。
無難なのはアクセサリーだが、尊さんは仕事柄、普段はほとんど時計以外身につけない人だ。
(ペアネックレス……尊さんなら、俺がお願いしたら着けてくれそうだけど……でも、いきなり重いかな?)
1年記念日のランキング1位は「ペアリング」だった。
けれど、指輪となるとさらにハードルが上がる気がする。
尊さんがどんな顔をするか、全く想像がつかない。
そうして、暗い部屋の中でスマホの光に照らされながら悩むこと一時間。
ふと指が止まったのは、老舗筆記具ブランド『WATERMAN』の高級ボールペンだった。
(あ……そういえば尊さん、いつも手帳を持ち歩いてるって言ってたっけ)
休憩時間に、ふとした瞬間にさらさらと文字を書くあの綺麗な指先。
仕事中に使うものなら実用性も抜群だし、何より毎日身近に置いておける。
(予算は……1万から2万円が相場か。これなら、11,980円。高すぎず、でも記念日のプレゼントとしては特別感があって、丁度いい値段かも)
中でも「マットブラックCTBP」というモデルに目を奪われた。
漆黒のボディに、銀色のクリップ。
洗練された、無駄のないデザイン。
これをスーツの胸ポケットから取り出し、手帳を滑らせる尊さんを想像しただけで、あまりの格好良さに口元が緩んでしまう。
「……よし、これにしよう」
ふと時計を見ると、深夜12時を過ぎていた。
「やばっ! 早く寝ないと……!」
注文は明日の昼休みにすることにして、俺はスマホをサイドテーブルに置いた。
心なしか、眠りにつく直前の胸の鼓動はいつもより穏やかで、幸せなリズムを刻んでいた。
◆◇◆◇
翌日、会社にて
俺は昼休憩に入ると、弾かれたようにスマホを取り出した。
弁当を広げるのも後回しにして、昨夜見ていたボールペンのサイトを開く。
「やっぱり、これだな……。名入れサービス、どうしよう」
光沢のある漆黒のボディを画面越しに眺め、真剣にオプションを選んでいると──
「よっ、雪白!」
背中に衝撃が走った。
「ひゃっ!?」
あまりの驚きに、スマホが手から滑り落ちそうになる。