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榊くんはむすりとした表情を浮かべている。

けれど、立ち去ろうとする素振りはなかった。

こ、これって…チャンス、だよね。

ここでなにかアピールしとかなきゃ…!

って言ってもどうしよう…何を話したらいいのかなぁ…!

「…おまえ、いつも来るやつだよな」

けど、ぽつりと先に話しかけてくれたのは榊くんだった。

「あ、はい…!

あ、あの…いつも美味しいケーキ、ありがとうございますっ」

「いや…。こっちこそ、いつもたくさん食べてくれて…あんがと」

わっ、お礼言われちゃったっ。

なんかいつものお客さんに接する態度とはちがう榊くんにドキドキ。

いつもは礼儀正しいけど、どこか距離があるように感じたから。

榊くんって、普段はこういう話し方するんだな…。

なんか、新鮮でうれしい。

「ここのケーキあなたが作っていらっしゃるんですよね。すごく美味しいから、年上の方だと思ってました」

「年上に見える?俺、17だけど」

わ、同い年…!

やった!

「わ、わたしも17歳です。高校2年生」

「へぇ。見えないけど」

「よ、よく言われます…。小さいのでたいてい年下に見られます…」

これ、実は悩みなんだよな…。

頼りなくてトロそうに見える、って。

…実際そうだから、余計に。

榊くんもそう感じちゃったかな…。

ちょっと気まり悪く思って、うつむきがちに見上げると、榊くんはすこし顔を赤くさせてそっぽを向いた。

と思ったら。

急にわたしを真っ直ぐに見つめた。

え…っ?

そして、ずいっと顔を近づけてきた…!

「てか、敬語なしでいんじゃね?タメなんだし」

わ、わわ、顔近いよ…。

かっこいいよ…!

「おまえさ、どうしてここでバイトしたいって思ったわけ?」

「え……っと」

まさか榊くんから志望動機を訊かれるなんて…!

不真面目なやつかどうか判断したいのかな…!?

榊くんはじっとわたしを見つめている。

真剣な目。

こんな目、お客として来た時もされたことなかったな。

それだけ、真面目にお仕事に取り組んでくれる仲間を必要としているってことなのかな。

どうしよう…。

榊くんが好き。

想いを伝えたい…。

だけど…。

「好き」って言ったら、迷惑に思われちゃう…。

ずっと憧れていた人。

すこしでも近づきたいの…。

これは、やっとつかめた最初で最後のチャンス。

絶対に逃したくないよ…っ。

「わ、わたしは…あなた…の」

「俺…の?」

え…!

榊くん…どうして、どんどん近づいて来るの???

「俺の…なんだよ…?」

「え…っ、ぁ…」

きゅって手がつかまれて、ずいって顔が近づいて来る。

続きを言うまで逃がさないぞ

って、言わんばかりに。

ドキドキドキ。

胸が破裂しそうに高鳴る。

ちゃんと上手に言わなきゃってあせりと、カッコいい榊くんを目の前にしている緊張とで、頭がショートしそう…!

「わ、わたしは…あなたの…」

「…」

「あなたの…

作るケーキが、大好きなんです!!」

やった…

言えた…!

これなら嫌われない、よね…??

「わたし、あなたが作るケーキが大好きで、憧れだったんですっ。だから、一緒のお店で働いたら、あなたのケーキに接せられるかな…って」

ヘンな理由…!

だけど…この気持ちは嘘じゃない。

つらい時、悩んでいる時、榊くんのケーキを食べると、なぜだかほっとして元気になれた。

榊くんのケーキは特別。

どこのお店に行ったって、こんな気持ちにはけしてならないんだよ?

「このお店で働ければ、もっと身近であなたのケーキと接せられますよね?そしていっぱい食べられますよね…!? わたし、もっといっぱいあなたのケーキを食べたいっ!お腹いっぱい食べて、しあわせになりたいっ」

「バッカじゃね?」

へ。

イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で

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