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「じゃあ、ミルキィちゃん達はここに泊まってるのね」
サリーの乱入の後、『ガーランドの友』の他のメンバーもやってきて、互いに自己紹介をした所である。
「ええ。サリーさん達の宿は?」
「私達は今日ダンジョンから戻ってきたところで、まだ決めてないよ。もし空いてたらここにしようかな。みんなはどう思う?」
「ミルキィちゃんがいるならここ以外ないだろ!」
バゴッ!
「いてっ!?」
アランは何度失敗しても、同じ間違いを犯すようだ。
(殴られても平気なのかな…?)
遠慮のない一撃を見て、レビンは1発でも御免だと思っていた。
「いいんじゃないかしら?綺麗で料理も美味しそうだし」
「俺も賛成だ」
カレンと名乗った21歳の茶髪の女性が賛成すると、その恋人でもありサリーの兄でもあるダリーも賛同した。
「そういう事だから、カーラちゃん。部屋は空いてる?」
「はい!では二人部屋を二つでよろしいでしょうか?」
「それでお願いするね」
カーラに案内され、荷物を持ったガーランドの友の四人は部屋へと向かっていく。残された二人は……
「賑やかな人達だね…」
レビンは大分オブラートに包んだ言い方をした。
「そうね。アランさん以外はまともな人達だったわね。それにみんな私達と同じで幼馴染のようね」
「うん。パーティメンバーが多いのもいいね。もちろん信頼出来る人達を集めるのは大変だけど」
「…私のせいでずっと二人きりね……」
この流れは、流石のレビンでも不味いと焦る。
「ミルキィ!」
「…なによ」
「僕はミルキィと二人きりで良かったよ!」
何か弁解の言葉を探したが見当たらず、思い浮かんだままを口に出した。
「!?…こんなとこで大声で言わないでよねっ!」
焦ったレビンは、自身が思っているより大きな声が出ていたようだ。
食堂にいた人達が生暖かい視線を二人に送る。
「ごめん…」
二人は俯き身体を縮こまらせた。
「あれ?何かあったのか?」
部屋に荷物を置いてきたガーランドの友の四人が、食堂へと戻ってきたようだ。
そして、二人がお通夜のように無言で下を向いていた為、アランが不思議に思い声を掛けた。
「な、何でもないですよ?」
レビンは問いに疑問系で返した。多感な時期らしい……
「そうか?まぁ、そういうならいいけどよ。ここに座ってもいいか?」
アランはミルキィと相席したいようだ。
もちろんそれを許すサリーではない。
「ダメに決まってるでしょ!食事以外にも明日の予定も決めないといけないのに!」
「アラン諦めろ。早く飯にしよう」
ダリーにもそう言われ、渋々ながら二人とは少し離れた席へと着いたアランだった。
「凄いわ…」
翌日、ミルキィの前には抉れた岩があった。
「でしょ?でしょ?やっぱり分かる人には分かるわよね!」
「私にも出来るかしら…」
「魔力は誰にでもあるから、きっと出来るわ!アランみたいな馬鹿には出来ないけど…」
ダンジョン内にある岩を、カレンが魔法のデモンストレーションを見せるために抉ったのだ。
ミルキィは初めて魔法を見たわけではない。母であるレイラは時々魔法を使っていた。しかし攻撃魔法を見るのは初めてだったのだ。
初めて見る攻撃魔法の威力に、ミルキィは思うところがあり、思考を巡らせていた。
「出来ないんじゃねー!やらないだけだ!」
「…アラン。馬鹿を訂正しなよ…」
勢いよく答えたアランに、サリーが溜息混じりにつっこんだ。
やはり、幼馴染の息はぴったりのようだ。
前日の夕食後、しっかりミルキィに絡んだアランとそれを止めた3人とレビンは、どうしてもミルキィと一緒に居たいアランのわがままにより、翌日一緒にダンジョン探索をすることになってしまった。
ロクな準備ができていない為、交流や他のパーティの戦闘を見るという名目で、ゴブリンの階層にて活動することになり、今に至る。
「魔法ってすごいんだね…」
こちらも初めて見た攻撃魔法の感想が、つい口から漏れた。
「レビンくんも覚えてみる?」
「カレン、ダメよ。カッコ悪いけど私達にそんな余裕はないわ…」
レビン達に魔法を教えたいカレンに、パーティの財政を管理しているサリーが待ったをかけた。
「えぇ…そこを何とか…」
レビン達が頼むならいざ知れず。それほどカレンは魔法談義に飢えているようだ。
ミルキィもそれが難しいということがわかり、残念そうな顔をしていた。
そんな幼馴染を見たレビンは、すぐに何とか出来ないかと、思考の海に飛び込んだ。そして、一つの案を導き出す。
「あの…こういうのはどうですか?」
カレンが尚もサリーにお願いしていたところに、考えを纏めたレビンが声を掛けた。
「ん?レビンくん。恥ずかしながら私達はあまりお金に余裕がないんだよね…」
「はい。それは話を聞いていたので理解しました。なのでカレンさんに教えを乞う時に、僕が代わりにそちらのパーティに参加するというのはどうでしょうか?」
「な、何を言っているのよっ!?それだとレビンと離ればなれ…じゃない…レビンは魔法を教えてもらえないじゃない!」
「そ、そうだぞ!それだとミルキィちゃんと一緒にいられないだろうがっ!」
レビンの提案にミルキィは離れる不安と寂しさを。アランはミルキィと居られないなら本末転倒ではないかと答えた。
そしてガーランドの友の纏め役であるサリーはというと。
「アラン。私達がこの提案を受けないと、もうレビンくん達…ミルキィちゃんとの繋がりはなくなるわよ?」
「サリー!受けるぞ!いいなみんな?!」
急にリーダー振るアラン。
「あの馬鹿は放っておいて。でも私達に遠距離攻撃が出来るカレンを手放してまで、レビンくんを入れるメリットがあるかしら?」
サリーの問いにレビンは一息で答える。
「10歳くらいから狩人の父の手伝いをしていたので、僕は弓を扱う事が出来ます。それと、カレンさんにミルキィが魔法を教えて貰うので、ダンジョン探索で得た僕の報酬はそのままカレンさんにこちらからの報酬として渡してください。
弓などの消耗品も自費で賄います。
これで教えてもらえないでしょうか?」
「消耗品はこちらで賄うよ。みんなどうかな?私はパーティにメリットがあると思うけど」
カレンの魔法は強力だ。
ガーランドの友の最高火力でもある。
しかし、何度も撃てるものでもなく、場合によっては唯一の収入源である魔石まで消費してしまう。
今回のレビンの提案は、金欠気味なガーランドの友にとっては渡に船であった。
「うーむ。…その方がカレンは安全か。よし。俺は賛成だ」
カレンの彼氏であるダリーはレビンの提案に賛成した。
もちろんカレンは元よりそのつもりだったため、ガーランドの友の意見は一致した。
「よし!じゃあレビンくんよろしくね!カレンはミルキィちゃんに危ない事をさせないようにね!
これからレビンくんの実力を見たいから早速別行動だけど、いいかな?」
サリーの提案に四人は頷いて応えた。
それでは結局ミルキィと離れ離れじゃないかと、約1名は大反対していたが……無視された。
「凄いね…」「サリーより索敵が早いな…」「…する事がない」
サリー、アラン、ダリーは、レビンの実力に舌を巻いた。いや、呆気に取られていると言った方が正しいかもしれない。
「そんな事ないですよ。弓の精度はサリーさんの方が上ですし、元々山育ちだったから森での索敵に対応出来ているだけですよ。
する事がないって言いますけど、居てくれるだけで安心して魔物と戦闘出来るので助かりますよ」
「返しまで完璧だょ…ホントに15歳?」
サリーはレビンの大人な対応に、長命種を疑った。もちろんこの世界ジョークである。
「よし!レビン!ガーランドの友に入れっ!」
「馬鹿アランっ!貴方はミルキィちゃん目当てでしょ!恥ずかしいからやめて!」
アランはノリ良く誘ったつもりだが、サリーには通じなかった。
「…しかし。アランが誘ってしまうのも無理はない。成人したばかりでこれほどの実力であれば、末恐ろしくもあるな」
レビンの剣技が拙い事を、剣士であるダリーは見抜いていた。
しかしそれを差し引いても、年齢通りにいかないレビンの実力に羨ましくも恐ろしくもあった。
「まぁレビンくんの実力が高くて困る事はないから大歓迎ね。カレンどころか私の仕事も無くなりそうだけど」
こうは言ってはいるが、ガーランドの友のメンバーはカレンの実力をしっかりと認めている。
ただ単に沢山の魔物の相手をしないといけないダンジョンに、魔法使いのカレンが合わないだけなのである。
索敵と弓担当のサリーの事もレビンが抜ければ必要不可欠である上に、冒険以外のことはそもそも全てサリー任せなので、パーティには絶対に必要な事も、みんな理解している。
アランもなんだかんだいってリーダーである。何かを決める時にパーティでの話し合いで決まらなければアランが決める。そしてみんなはそれについて行く。
「…あれ?レビンが入って一番要らないのは俺なんじゃ……?」
アタッカーの役目を奪われたダリーの声は、誰にも拾ってもらうことはなかった。
レベル
レビン:5→7(67)
ミルキィ:60