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「あなたにも病院の場所はわからないっていうことですか?」
と私は不安になりながら聞いた
「あたしの知ってることはあたしが知ってれば充分・・・人に教える必要は無い」
と老婆はあざけるように言った。私はそのあいまいな物言いに茫然とした、なんて下品で人を馬鹿にした態度なんだろう
こんな人が今や身内だなんて・・・・
「じゃあ、居所は分かっていても教えられないっていうのね?
私が知りたいんじゃないんですよ、パパ・・・美鈴さんの旦那様の父が今遠くに出張してて、出張先からとても心配していますの、妻が流産されたって知ったら当然のことでしょ?だから私に美鈴さんの様子を教えて欲しいと言われてますの、おわかりになって?」
とわたしは呆れ果てて説明した
老婆はまたグフフと気味の悪い笑い声を漏らした
膝の上で組んでいる皺シワの手に、金のボタンの色んな暗い色で編んだカーディガンが爬虫類の皮のように動いた、この老婆は頭がおかしいのかもしれないと私は思った
「美鈴はそのうち帰るよ。パパにすぐ帰ると言っておきなさい。あの子は常識のある子だからね」
老婆は何がおかしいのかまたヒキガエルの様な大きな口をあけてグロテスクに笑った
私はとても息苦しく不安になった。失神したことはまだ一 度もなかったが、訳もなくその時、不安で失神するのではないかと思った。手を額に当てて震えながら立ち上がると
「お水を 一杯ください」
と言った
「うちには女中を置いていないんでね」
と美鈴の母はつっけんどんに言った
どうやらお客には何も振舞う気は無いらしい
「どうぞそのまま・・・・台所に行って自分でしますから」
と私は言い、奥のキッチンまで床の上にごちゃごちゃと置いてある黒っぽい家具の間を縫うようにして歩いて行った