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5月5日。こどもの日。
約束の日を迎えた信愛たちは、秋穂と共に天虎村にある寺を訪れていた。
境内には穏やかな風が吹き、どこか神聖な空気が漂っている。
秋穂が住職へ軽く頭を下げた。
「今日はありがとうね」
住職は柔らかく微笑み返す。
「いえ・・・構いません」
そして表情を引き締めると、静かに続けた。
「それにおじろくおばさの件については
天虎村に住む者として無視する訳には参りません」
その声には、住職としてだけではなく、一人の村民としての責任感が滲んでいた。
「喜んで協力させていただきますよ」
信愛も深々と頭を下げる。
「ありがとうございます」
住職は一同を見渡し、静かに告げた。
「では只今より、お焚き上げの儀式を執り行います」
一拍置き、確認するように尋ねる。
「よろしいですね?」
信愛は真っ直ぐ住職を見つめ、大きく頷いた。
「はい、お願いします」
◇ ◇ ◇
儀式を終えた信愛は、どこか肩の荷が下りたような表情で宿へ戻ってきた。
「ただいま!」
真っ先に茜が迎える。
「おかえり」
続けて気になっていたことを尋ねた。
「お焚き上げは終わった?」
信愛は安心したように笑う。
「うん! 無事に!」
しかしすぐに申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「ごめんね、私だけ茶摘み参加出来なくて」
すると、さくらが勢いよく首を横に振る。
「何言ってんの!そんな風に思ってないって!」
優しく笑みを浮かべながら続けた。
その言葉に、信愛の表情も少しだけ柔らかくなる。
「ありがとう」
ふと思い出したように顔を上げた。
「あ、それと祠は?」
茜は嬉しそうに笑った。
「今さっき出来たみたいだよ」
その時だった。
玄関の戸が開き、焔垂と朝陽が部屋へ入ってくる。
焔垂が軽く手を挙げる。
「あ、戻って来たな」
朝陽も笑顔で頭を下げた。
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「先輩!お焚き上げお疲れ様でした」
信愛は二人へ微笑み返す。
「二人とも・・・ただいま」
焔垂は親指で外を指した。
「祠出来たぜ」
朝陽も興奮気味に頷く。
「こっちです!」
信愛は二人に促されるまま、急いで新しい祠のある場所へ向かった。
◇ ◇ ◇
到着すると、一人の村民が信愛たちへ気付き、笑顔で手を振る。
「お!来たな?」
その先には、新しく建てられた祠が静かに佇んでいた。
信愛は思わず目を輝かせる。
「わ!立派な祠!」
新しい祠には真新しい紙垂が結ばれ、風に揺れている。
また立地も太陽の光が自らの力を誇示するかの様に強烈に当たり、尚且つ人通りも多くお参りしやすい場所に建てられていた。
信愛は辺りを見渡し、満足そうに頷いた。
「祠の場所も申し分ない」
そして村民たちへ深く頭を下げる。
「ありがとうございます!」
しかし、棟梁だった老人は照れ笑いを浮かべながら首を振った。
「いやぁ、実はね。コレはまだ未完成なんだよ」
その一言に、さくらが目を丸くする。
「え? 未完成?」
信愛も驚きを隠せない。
「そうなんですか?立派な祠ですよ?」
改めて祠を見つめながら、不思議そうに首を傾げる信愛に、老人は苦笑いを浮かべ頭を掻いた。
「鳥居を建てたかったんだが、間に合わなかったよ」
信愛は納得したように頷く。
「なるほど・・・」
老人は建築途中の木材へ目を向けながら説明を続けた。
「今はまだ木材を加工してる段階なんだ」
職人らしい目つきで木材を見渡し、指を折りながら完成までの日数を見積もる。
「あと一週間はかかりそうだ」
その言葉を聞いていた諏訪部勇が、満足そうに頷いた。
「なら、ひとまずはこれで完成って事だな」
茜も新しい祠を見つめ、にっこりと笑う。
「うん♬」
鳥居こそまだ建ってはいないが、おじろくおばさを弔うには十分すぎる祠がそこには佇んでいた。
コメント
1件
お焚き上げ、無事に終わってよかったですね。新しい祠が立派で、村の人たちの協力が感じられる温かい回でした。まだ鳥居が未完成というところが、逆に「これからも大事に見守っていくんだ」という継続感を生んでいて、設定としても好きです。信愛の肩の荷が下りた表情が印象的でした。続きも気になります。