阿部先輩との出会いは、サークルの新歓コンパ。なんとなく面白そうだと覗いたダンスサークルに、阿部先輩はいた。
ぱっと見、ダンスを踊るようなタイプに見えなくて、サークル連中からは浮いていた。
私服も地味だし、黒髪で眼鏡をかけていて、いわゆるオタクっぽい陰キャに見えた。
俺はベネズエラ人と日本人とのハーフで、背も高い。顔の彫りも深いのでどうやっても目立つ。人見知りなくせにファッションも攻めていた俺から見たら阿部先輩の第一印象は『ダサい男』だった。
それでも話してみるととても聡明なことがわかった。眼鏡の奥から覗く理知的な目、そして小さな顔と華奢な体躯、近くでよく見ると第一印象とは全く違う美しい人であることに気づく。
🤍「ちょっと、眼鏡取ってみてくださいよ」
💚「え、ああ…」
🤍「めちゃ好み」
💚「え?」
思った通りのイケメンだ。しかし、人と目を合わせるのが苦手らしく、すぐに眼鏡をかけ直した。それからお互いの境遇や生い立ちなんかを楽しく話して、コンパは終わった。
『二次会行く人?』
サークルの部長がノリのいい新入生たちを誘って二次会への参加者を募っている。
俺は阿部先輩に聞いた。
🤍「先輩、どうしますか?」
💚「俺はこの後バイトだから帰るよ」
🤍「じゃ、俺も帰ろうっと」
💚「いいの?新入生は飲み代タダだよ」
生活が苦しいということを言ってあったので気を遣われる。でも今はそれより阿部先輩といたかった。
🤍「いいんです。バイト先まで送らせてください」
💚「は?」
🤍「だって、先輩がどんなところで働いてるか興味あるもん、俺」
先輩の腕を取ると、送るくらいならいいけど…と了承してくれた。
💚「ちゃんと一人で帰れる?」
🤍「はい、ご迷惑はかけません!」
こうして、俺たちは二人で繁華街を静かな方へと歩いて行った。
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