休日になる前日、金曜日に僕はやってきてしまった。
目的地である呪いの館だ。
辺りを見渡すと本当に周りには森以外は何もないし、ホラーゲームに出てきそうな雰囲気を醸し出す異様な館が目の前にあるだけだ。
僕は早速、ゆっくりと館の扉を開けることにした。
しばらく使われていないのか、玄関は埃まみれでゴミがあちこちにあった。
思っている以上に玄関口は広かった。
玄関の先には廊下があり、階段があった。
「こういう場所は普段来ないし、行く機会すらないから非日常感があって面白い……かも」
誰もいないことをいいことに、独り言を呟きながら探索をすることにした。
その時、だった。
微かに足音が聞こえた。
2階、からだろうか。
「(僕と同じような理由で来た人がいるのか)」
正直驚いたが、自分を保つために都合の良い解釈をすることにした。
僕はその場を後にし、一階から探索することにした。
玄関よりかは、幾分か整えられていたリビングにやってきた。
だがそれでも、汚いものはとことん汚い。
ソファやテーブル、それからキッチンとテレビ。
ごく普通のリビングだ。
ただ、気味の悪いものがソファに置いてあった。
人の形をした、一つ目の人形がそこにあった。
まるで、自分の存在がわかっているような、そんな目をしていた。
「……趣味が悪いな」
また、上の階から軋む音が聞こえた。
何かがいることは確かだ。
「とにかく次だ」
広々とした図書室に移動した。
所々に蜘蛛の巣が張ってあった。
虫はどちらかというと苦手だ。
蜘蛛の巣を避けながら、図書室を歩いた。
しかし残念ながら、糸に引っかかった。
……最悪だ。
糸を取り払ったその後、また足音が聞こえた。
それも、上の階ではなく近くで。
「(ビビるな……鼠か何かだ。大丈夫大丈夫……)」
自己暗示し、その先を歩いた。
そして、たまたま目に付いた本を棚から取り出した。
やはり埃が被っていた。
中身は、英語で書かれている小説だった。
当然全く読めない。
周囲を見渡すと、目が眩むような本の数が見えた。
しかしそれよりも、気になることがあった。
部屋の空気が異常に悪い。
空気を入れ換えるために、僕は図書室の窓を探すことにした。
だが見当たらなかった。
一つもなかった。
また今更になって、胸騒ぎがした。
その時だった。
後方から気配を感じたのだ。
足音が大きい。
気配がかなり近い。
「(……まさか)」
僕はなるべく音を出さないよう、細心の注意を払いながら、後方を振り返ることにした。
恐る恐る後方を見たが、そこには何もいなかった。
周囲を見渡しても、誰もいない。
ただ静寂だけがあった。
しかしまた、音が聞こえた。
図書室の扉が開いた音だ。
覚悟を決め、しばらく構えていたが、誰も僕の目の前に現れなかった。
肩を震わせながらも図書室を後にし、次の部屋へ向かうことにした。
一階の奥にある和室にやってきた。
障子を開けると、畳特有の匂いがした。
中は案外綺麗だった。
しかし──。
「(何だ……生臭い匂いがする……)」
鼻にツンとくる匂い。
多分、嗅いだらしばらく離れないような、そんな匂い。
念のため障子を閉め、和室の探索をすることにした。
身長の低い机には、小さな懐中電灯が置いてあった。
「……持っていくか」
それをポケットに入れ、机の下も確認した。
何もなかった。
座布団をひっくり返したり、高そうな壺の中身を確認したりした。
しかし、何もなかった。
「……残りは……」
奥にある襖のみとなった。
そこに近づくと、明らかに生臭い匂いが強くなった。
「……薄々そうだろうなとは思ってたけど……」
気になるが調べたくない。
かといって、調べないわけにもいかない。
僕は勇気を振り絞って、手を襖の方へ伸ばした。
そして、ゆっくりとそれをずらした。
その瞬間、僕の身体に何か重たいものが飛び込んできた。
「痛っ!?」
衝撃で、僕は床に倒れ込んだ。
「こ、今度は一体何なん……だ?」
そう言いながら、重たい何かを確認した。
僕の身体に倒れ込んできたものは──。
「し、死体……!?」
白目を剥き、血だらけになった男の死体だった。
「ヒッ……!!?」
僕は慌てて、その死体を払い除けた。
上半身に、血がべったりと付いた。
「ほ、本物……!?」
……だが、よく見るとそれは人間に限りなく近い人形だった。
しかし血は本物らしい。
誰が一体、何のためにこんなことをしているのか理解できない。
僕の内心を知ってか知らずか、畳みかけるようにまた近くで音が聞こえた。
障子を開ける音だ。
つまり、後方からだ。
僕は、再びゆっくりと後方を確認した。
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