──動けない。
全身が重くて、鈍く痛む。
昨夜のことを思い出すと、自然と眉間にしわが寄る。
強引だった。
止める暇もないほどに、目黒は夢中になっていて──
(やりすぎだろ、目黒……)
俺の腰は悲鳴を上げてるし、腕にも、脚にも、噛み痕やら引っかき痕やらが散ってる。
「……うっ」
寝返りを打とうとして、肩を動かした瞬間、ずきっとした痛みに息が詰まる。
うめき声混じりに布団をぎゅっと掴んだ。
ベッドの軋む音に反応して、隣の気配が動く。
「岩本くん……? 起きた?」
目黒がいつもより少し低い声でおそるおそる話しかけてきた。
「……あぁ」
無理やりそう答えて目を開けると、もう服を着終わった目黒が、ベッドの脇にしゃがみ込んでいた。
「お前なぁ……昨夜さすがにやりすぎ──」
「……ごめん」
その一言が、思いがけず早く、深く響いてきた。
「岩本くんが途中で力抜けてたの、わかってたのに…止まれなかった。ほんと、ごめん」
目黒は、膝立ちのまま俺の頭をそっと撫でた。
その手が優しすぎて、余計に罪悪感を煽ってくる。
「痛む?」
「……ちょっとな」
(本当は“ちょっとどころじゃねぇ”けど)
目黒はその言葉だけで、ぐっと眉を下げて、ますます申し訳なさそうな顔をした。
謝られたら、こんな顔見せられたら、もう何も言えなくなる。
もっと言ってやりたかったのに、逆に気まずさが残って、こっちのほうが居たたまれない。
でも。
「……あのさ」
「ん?」
「……目黒が夢中になってくれたの、嬉しかったけどな」
目黒の手がぴたりと止まり、目が合う。
少し驚いたような顔をしてから、静かに微笑んだ。
「ほんと?」
「あぁ。でも次は……ちゃんと加減して。俺、今日も撮影あるから」
「うん、わかった。……今日は俺が岩本くんの荷物全部持つ。ご飯も買ってくる。岩本くんが座る時クッションも敷く。」
「……どんだけ気使う気だよ」
思わず笑ってしまう。
ほんとは少し拗ねてやろうと思ってたのに、あっさりこうなるの、ズルい。
「……今度からはマジで、加減しろよ」
「うん。……岩本くんのこと大事にしたいからちゃんとする。」
「……バカ」
照れ隠しに、毛布を頭までかぶった。
コメント
1件
めめは絶対やりすぎちゃう印象しかないw