「おい、目黒……」
バスルームから出てきた俺は、鏡を見て険しい顔になる。
首元から鎖骨にかけて、真っ赤なキスマークの群れ。
「やりすぎだろ、これ……」
タオルを無造作に肩にかけたまま、ベッドに座る目黒を睨む。
けれど目黒は、どこ吹く風といった顔で、にやにやしているだけだった。
「岩本くんが……可愛いのが悪い」
「言い訳になってねえ」
ため息混じりに言うと、目黒はベッドに寝転がり、上目遣いでにじり寄ってくる。
「……てかさ、岩本くんも人のこと言えないよね」
「ん?」
「俺だって……背中、引っ掻き傷だらけなんだけど」
ぽそっと、ちょっと拗ねたように呟く目黒。
その声が可愛くて、思わず笑ってしまった。
「……ん?」
「ほら」
目黒がくるりと背中を向ける。
たしかに、肌には赤く引っ掻いた跡が無数に走っていた。
「うわ、ごめん」
指先でそっとなぞると、目黒は小さく震えた。
「……岩本くんは夢中になって爪立ててぎゅってしがみついてきてから、俺も夢中になって印つけちゃった」
ぼそぼそ喋る目黒が可愛くて、たまらず、そのまま後ろから抱き締めた。
「じゃあお互い様か」
「……うん」
くしゃっと目黒の髪を撫でて、首筋にそっとキスを落とす。
背中と首筋。
互いに、消えない痕を残して。
それが嬉しくて、愛しくて、また静かに唇を重ねた。
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