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16年目のKiss

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16年目のKiss

1 - 夢に見る、会いたくなかった男-1

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2024年05月13日

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「熱、ある?」

私を見下ろしながら、彼が聞く。

彼自身の吐息も十分、熱い。

「ある、かも」

あるかないかと言えば、ある。

全身、汗ばんでいるのだから。

「それは――」

『――俺のせい?』

嬉しそうに聞かれる前に、唇を重ねる。

そう、あんたのせい。

あんたといると、身体が熱い。

でも、言わない。

私は彼にしがみつき、腰を揺らす。

我慢できなくなるまで。お喋りなんか、忘れるまで。


言えば……良かった。


あの日から、今も、私は肝心なことほど、言えない。


今さら……か。


病室のベッドの上、目覚めると同時にふふっと笑みをこぼす。

彼は知らない。

私が帰ってきたことを。

知らせるつもりもない。

その術すら、ない。


今さら……言えない。


あんたじゃなくても幸せになれる、なんて大見得切っておきながら、捨てられて帰って来ましたなんて。

あんたじゃないから幸せになれなかったわけじゃない。


それでもきっと、言うんでしょう?

ほら、やっぱりお前には俺じゃなきゃダメだったろう? って。


十六年経っても想像できる。

俺様で、いつも余裕で、私の体温を上げる男。


あいつにだけは、知られたくない――――。


病室から見える真っ青な札幌の空を眺めながら、私は夢の続きを願って目を閉じた。

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