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(黒髪の男は紙ナプキンを引き出した)
あれ、紙これが最後です。
(店内に蛍の光が流れ出した。いまだにこんな曲を流すところがあるのか。少年時代の卒業式が脳裏に浮かぶ。川の流れる、山間の学校。鳥の鳴き声が響き渡る故郷の谷。
時計を見ると、始発が走る時間になっていた。俺の速記ノートも、これが最後のページになりそうだ。余白が使える限りは書いておく。
彼らの言う集合意識が、俺をこの瞬間この祖国のこの店に引き戻した気がしてきた。今まで散々迷ったこともあったけど、速記の仕事をしてきてよかった。今、やっとわかった。俺のビジョンとは、誰かのビジョンを、この三次元の世の中に書き残すことだってことを。微力かもしれないけれど、それを意識ある人々に伝えることだと、やっとわかった。これから時代がどんなに進んでも、技術が進化していっても、その結果たとえ速記帳とペンがこの3次元世界から消え失せる日が来ても、このビジョンだけは変わらない、ヨーロッパでも、日本でも、そしてこれからどんなに年を取っていっても)