テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
古流斬
2,542
87
チタコロ
323
第四章 地獄編
第七話「現世へ」
間の世界。
封印の鎖に縛られた酒呑童子たち。
その前で古流斬は座り込み、小さく息を吐いた。
「……ふぅ。」
「思ったより早かったなぁ。」
背後から足音が響く。
振り返ると、傷だらけの閻魔が立っていた。
古流斬は笑う。
「やばいな。」
「取りあえず封じた。」
「一時間足止めってところかな。」
閻魔は封印された酒呑童子を見つめる。
「……負けたのか。」
古流斬は首を横に振る。
「酒呑童子単体なら、まだ勝機はあった。」
「でも、軍勢がやばかった。」
「あの数はさすがに一人じゃ厳しい。」
閻魔は苦い表情を浮かべる。
「……そうか。」
古流斬は腕を組む。
「軍を何とか出せないのか?」
閻魔は静かに答えた。
「無理だ。」
「鬼には派閥がある。」
「酒呑童子の派閥が圧倒的に多い。」
「私に従う者を集めても、出せるのは三十名が限界だ。」
古流斬は少し考え込み、ため息をつく。
「三十人か……。」
「それじゃ正面からは勝てないな。」
しばらく沈黙が流れる。
やがて古流斬が口を開く。
「……なら。」
「現世に賭けるしかないか。」
閻魔は頷く。
「私も同じ考えだ。」
古流斬は真っ直ぐ閻魔を見る。
「一つ頼みがある。」
「僕が現世へ出てもいいか?」
「酒呑童子を止められる可能性があるなら、僕も戦いたい。」
閻魔は少し笑った。
「本来なら許可できない。」
「生者と死者の境界を越えることは禁止だからな。」
「だが……。」
閻魔は空を見上げる。
「非常事態だ。」
「神々も、この状況を認めている。」
再び古流斬へ視線を向ける。
「ああ。」
「行ってこい。」
「現世を守れ。」
古流斬は静かに笑い、刀を握る。
「任せろ。」
「今度は、生きているみんなと一緒に戦う。」
その瞬間、現世へ続く扉がゆっくりと開き始めた。
一方その頃――。
封印された酒呑童子は不敵に笑う。
「一時間か。」
「十分だ。」
「その程度の封印、必ず破ってみせる。」
間の世界に再び、不穏な空気が流れ始めていた。
――第八話へ続く
コメント
1件
古流斬さん、第81話読みました!「一時間足止め」という絶妙な制限時間と、現世へ向かう決断の重みがすごく伝わってきました。閻魔と古流斬の「非常事態だからこそ認める」という関係性の変化も熱いですね。酒呑童子が「十分だ」と言い放つラストも不気味で、続きが気になります!