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第一章:初めてのおばさんの家


涼しい風が吹くある春の出来事。


ロンドン郊外の立派な屋敷でマリーは荷物をまとめていた。


「お母様とお父様は忙しいので、しばらく私の家で暮らしましょうね。」

おばさんは優しい目で見つめ、そう言った。


召使いたちが忙しく動き回るなか、マリーはわくわくしながらも少し不安げに、窓の外を見つめた。

おばさんの屋敷は広くて古く、庭には見たこともない花が咲き乱れているらしい。

おばさんは「地下室には絶対に行っちゃだめよ」と、何度も言っていた。

「でも、そんな怖いところがあるのかしら?」と、マリーの好奇心はくすぐられるばかり。

初めてのおばさんの家。冒険の始まりに、胸が高鳴っていた。

揺れる馬車の中、マリーの心は落ち着かずにいた。そんな中、おばさんが住む古く、とてつもなく大きな家に到着するやいなや、すぐに馬車から降りて、その景色を見て思わず声を発した。

「まあ!なんて立派なお屋敷…!いくつお部屋があるのかしら!」

そこで、門の前にマリーを待つおばさんの姿が映る。

マリーはおばさんを見つけると、すぐに掛けて走り、この屋敷への興奮を見せた。するとおばさんは優しく「では、そろそろマリーのお部屋に案内しますね。」といい、マリーの手を引き歩いてゆく。門をくぐると大きな庭が続く。

その庭には兎、鹿、鶏、様々な動物ときれいな花々が楽しそうに風に揺られている。その向こう側には大きな扉が待ち構え、召使がそのドアを開ける。その景色にマリーは目を丸くし、大はしゃぎで屋敷を探索し始めた。そんなマリーを横目におばさんは心配そうに「迷子にならないように気をつけるのですよ。」と言った。

マリーはその言葉を聞き、「確かに迷子になっては大変だわ。」と感じ、すぐにおばさんのもとへもどった。

マリーは自分の部屋に案内される途中、大きな扉が地面についているのを見た。気になっておばさんに尋ねると、

「あれは地下室に続く扉なのです。危ないので入らないでくださいね。」と言われた。

しかし、マリーは(何がそんなに危ないのかしら)と気になってばかりいた。

案内された部屋につくとおばさんは、「あと1時間後に夕食ですので、その時までに荷解きをしていてくださいね、1時間後迎えに来ます。」といい、他の階へ行ってしまった。

夕食を食べ、おばさんと過ごし、夜が更けて屋敷は静まりかえっていた。

マリーはふと目を覚ました。

「トイレに行きたい…」

まだ慣れない広い屋敷で、少し心細くなりながら、彼女はそっと布団を抜け出した。

薄暗い廊下を歩くうちに、自分の部屋の位置を忘れてしまい、次第に迷ってしまった。

「ここはどこ…?」と小さな声で呟く。

ようやくたどり着いたのは、さっきおばさんが言っていた地下室への扉だった。

扉は重く、古びていて、薄暗い光に照らされている。

マリーは震える手でそっとノブを回し、扉を開けてみた。

すると信じられないことに、頭は羊で体はタキシード姿の男性が穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。

「こんばんは、ラピスさん。待っていましたよ。」

その声は優しく、怖さはまったくなかった。

ラピス……その生物はどうやらマリーのことをラピスという人と勘違いしているらしい。

「ラ、ラピスさん…?私はマリーと申します。人違いでは…?」

羊紳士は少し戸惑った表情を浮かべ、優しく答えた。

「おっと、すまないね。大昔、想いを寄せていた人がいてね。彼女の名前はラピスというのだが、その方と君はまるで瓜二つだったもので……」

9歳にして色恋沙汰に興味津々なマリーは、その話を聞きたくなったが、初対面の人、いや、初対面の半人半獣にそんなことを聞くのはまだ恥ずかしくて、クールを装いながら答えた。

「あら、そうなのね。あとでお話を聞かせてほしいわ。」

そこで半人半獣の羊は口を開いた。

「申し遅れました。私はペコラと申します。」

(ペコラ……イタリア語で羊の意味だったわね)と心の中で思いながら、マリーは言った。

「わたくしはマリー。しばらくこちらでお世話になることになりました。」

その時、マリーはふと思い出す。

「トイレはどこかしら……?」

ペコラと話している場合ではないと気づき、見たこともない不思議な生き物ともっと話したい気持ちを抑え、

「すみません、ペコラさん。急用を思い出しましたので、今日はこれで失礼しますわ!」と言い、慌てて扉を閉めて隣の部屋へ駆け出した。

そして気がつけば朝になっていた。マリーは今日も地下室に行こう。と小さな決意をし、

眠気を覚ますためにカーテンを開けると、外からは柔らかな光が差し込んでいた。

「昨日のことは夢だったのかしら……」と小さく呟くと、ちょうどおばさんがドアをノックする音が聞こえた。

「マリーさん、朝食の準備ができましたよ」

(そうだ!昨日の夢のことをおばさまに話してみようかしら)そんな事を考えながらドアを開けると、おばさんが優しい笑顔で立っていた。

テーブルには焼きたてのパンとフルーツ、そして香り高い紅茶が並んでいる。

マリーは席につき、勇気を出して話を切り出した。

「おばさん、昨日…地下室の扉を開けてしまったの。そこで、羊の紳士に会ったのよ。」

おばさんの顔に一瞬だけ影が落ちたが、すぐに微笑みを戻した。

「ま、まあ…きっとそれは夢よ…!あそこは物置だもの…さ、さあ早くご飯を食べましょう?」

おばさんの声には、どこか怯えや戸惑いが混じっていたが、マリーにはそれが何なのかわからなかった。

マリーは不思議な気持ちを抱えながらも、テーブルのパンに手を伸ばした。

朝、マリーは食事のあと、こっそりと地下室へ向かった。

「物置って言ってたけど、本当にそうなのかしら?」

そう思いながら、重い扉を開けると、そこはほこりっぽい物置だった。古い箱や家具が積まれているだけで、半人半獣はどこにもいない。

「やっぱり、夢だったのかしら…」マリーはほっと胸を撫で下ろし、扉を閉めて部屋に戻った。

しかし、その日の夜、マリーはどうしても地下室が気になり、今度はそっと一人で出かけた。

廊下の薄暗い光の中、震える手で扉を開けると、昼間とはまるで違う光景が広がっていた。

目の前には、夜の星空の下、広大な草原が広がり、穏やかな風がそよいでいる。

そこに立つタキシード姿の羊紳士ペコラが、にこやかにマリーを迎えた。

「また会えて嬉しいよ、マリーさん。」

マリーは驚きながらも、自分の心が引き寄せられるのを感じた。

「まあ!お昼はいなかったのに…どうして?」思わず口に驚きが出てしまった。

その言葉にペコラが反応する「お昼…ですか。」なにやら暗い表情でこちらを見つめる。

「どうかなさいました?」とマリーが尋ねると、ペコラは表情を戻し

「いえ、なにもないですよ。」と返された。そこでマリーは地下室を覗き込む。すると、そこには信じがたい光景が広がっていました。

「まあ!地下室が草原に…!?」目を輝かせながらはしゃぐマリーを横目にペコラがなにか独り言をいった。うまく聞こえなかったので聞き返したが、教えてくれなかった。続けてペコラが言う「中に入ってみますか?」

マリーは足元の柔らかな草を感じながら、星明かりに照らされた草原をゆっくり歩いた。

夜風が彼女の髪を揺らし、どこからともなく甘い花の香りが漂ってくる。

遠くでは、青白く光る蝶の群れが静かに舞っていた。

ペコラはマリーの横に並び、ゆっくりと歩みを進める。

「ここは…不思議な場所ね。おばさんの家の地下室とは思えないわ。」

マリーの言葉に、ペコラは少し遠くを見つめた。

「ええ、そうでしょうとも。……けれど、この景色も永遠ではありません。」

「どういう意味?」と聞き返すと、ペコラは笑顔を保ったまま首を横に振った。

「それは、いつかお話ししますよ。」

その言葉に、マリーは胸の奥がざわつくのを感じた。マリーが星明かりの下を歩いていると、少し先に淡く光る川が流れていた。

川面には月が二つ映っている。

「わぁ…きれい」

マリーが近づこうとすると、ペコラがそっと腕を取った。

「マリーさん、その川は夜明けまで近づいてはいけません」

「どうして?」

ペコラは答えず、ただ視線を川から外さない。

「この草原では、夜明けと共にすべてが変わります。……それが、ここの決まりです」

すると、強い風が吹き荒れる。「もう時間ですね」気がつくと自室のベッドで眠っていた。いつも気がつくと寝室に戻っている…少し不思議に思いながら起き上がるとまだ朝の5時半だった。珍しく早起きできたマリーはいいことを思いつく。「そうだわ!中庭をまだ探索できてないのよね!」

そうしてマリーは中庭の動物たちと戯れて遊ぶことにした。しばらく遊んでいると、小さな子羊が足に怪我をして困っていた。手当をするために中庭の小屋に駆け込む。手当を終え、小屋の中を見ていると、誰かの日記があった。興味本位でマリーはその日記を読むことにしたのだ、「誰の日記かしら?」

読み進めると一昨日、マリーがこの屋敷にやってきたことが書かれている。どうやらこの日記はおばさんの日記らしい…

「おばさま、日記を書いていたのね!あとで届けなくちゃ…あれ?」最後の一言にマリーは眉をひそめた

「明日の朝食はパンとフルーツに紅茶にしましょう。___ラピス」

「ラピスって、おばさまの名前…?!」

朝食後、マリーはおばさんのもとへ歩み寄り、少し照れくさそうに尋ねた。

「おばさま……今日早く起きてしまったので中庭探検をしていたら、日記を見つけて…『ラピス』と書いてあったのですが、それはおばさまのお名前でしょうか?」おばさんは一瞬だけ目を伏せ、小さく息をついた。

「ええ、そうよ。わたしの名前はラピス。珍しい名前でしょ?」

その声にはどこか影が差したような響きがあったが、すぐに優しい笑顔に戻った。

「でも、どうして?なにかありましたか?」

「ただ……日記に書いてあった名前を見て、気になったのです。あの方がわたしを『ラピスさん』と呼んだので…」思わずマリーは口にしてしまった言葉をかき消すように続けていった。「あぁ、今日も朝食美味しかったですわ!そ、それではこれで…」

慌てた様子で自室に駆け込む。でもおかしい。本が大量においてある

図書館だ。慌てて階段を上がったため、回数を間違えてしまったようだ。

「こんな素敵な図書館があるなんて」マリーは本の多さに圧倒されつつ、一冊の本を手に取る。

『半獣…伝説?』

第一章 終了

マリーと秘密の草原

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