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04.新しい遊び
「はじめまして」
「おはよう 」
「わたしのなまえ〇〇です」
私はこの3単語だけを覚えて復唱しながら登校に臨んだ。
最初の1年間は通訳がつくから少しずつでいいと母に言われたのだ。
今考えれば海外からの転校生なんて珍しいに決まっている。
自己紹介が終わり1時間目の号令が終わった瞬間、沢山の生徒に囲まれたが勿論言葉が分からず友達は出来なかった。
そのまま日々が過ぎていき諦めかけた頃、1人の女子Aちゃんから声をかけてもらった。
言葉は通じないけれど身振り手振りで会話をしていた。
私は異国の地で初めての友達が出来たと喜んだのだ。
日本に来てから居場所がなかった私は心底嬉しかったのだ。
新しい父親はとても厳しかった。
九九を全部噛まずに答えれないと包丁が飛んでくることもあれば、靴べらで全身叩かれることも。
泣けば家を追い出されご飯を与えて貰えないこともあった。
母親は見ないふりをした。
兄は見ていられなくて同じ国の友達と遊び歩いて家に帰ってこなくなった。
Aちゃんは色々なことを教えてくれた。
帰り道は友達全員分のランドセルを持つこと。
ふざけて階段から落とされても遊びの一環なこと。
コンビニのガムを全員分取って代金を払わずにバレないで出ること。
私は過保護な母親に外に出して貰えず、外で買い物をしたこともなかった。
自分が虐められていることも、窃盗という犯罪だということも全く疑わなかったのだ。
ある日家帰った時アザだらけな私を見て母親がびっくりした。
何故なら父親は見えるところにアザをつけないからだ。
何も知らない私は、Aちゃんがよく転ぶからたまたま階段から落ちちゃっただけだよ〜と説明をした。
続けてその子とどんな遊びをしているのか聞かれた。私はとても楽しそうに答えた。
母親の顔が青ざめていくのが分かった。
後ろで寝ていた父親が立ちあがり、腕を引っ張られて風呂場に連れていかれた。
冷めきった昨日の残り湯が入ったバスタブに、足を持って逆さまに頭から水に入れられた。
胴体まで水に沈む。息ができない。
一瞬の出来事だった。
父親を必死に母親が止めているのだけは認識できた。
母親の必死の制止でなんとか上げてもらった私の顔を両手で挟んで青ざめた母は言った。
「犯罪者を育てた覚えはない。恥さらし。」
–異国の地の友達
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