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私が提示した「被害者への完全賠償」という条件は瀕死の会社内に凄まじい波紋を広げた。
経営陣が保身と救済の間で揺れる中
その混乱を千載一遇のチャンスと捉えた「毒虫」が、再び動き出した。
莉奈だ。
彼女は、直樹から巻き上げた金も
詐欺師に奪われた貯金も失い、いよいよ後がなくなっていた。
彼女が放った最後の悪あがきは、SNSへの動画投稿だった。
『……私は、直樹さんに脅されていました。でも、本当に怖いのは、彼の奥様……詩織さんだったんです。彼女は裏で私を脅迫し、直樹さんを陥れるために、私に偽の証拠を作らせた。彼女は「復讐」のために、会社を乗っ取ろうとしている怪物なんです!』
涙ながらに訴える彼女の動画は、私の「自白」という背景もあり、瞬く間に拡散された。
ネット上には私に対する疑念や誹謗中傷が渦巻き始める。
「詩織さん、大変なことになっています。今すぐ削除要請を……」
同僚たちが青ざめる中、私はデスクで冷徹にキーボードを叩いていた。
動揺、そんなものはない。
私は1円の誤差を許さない女
こうした「ノイズ」が紛れ込むことは、すでに計算の内だった。
「いいえ。消す必要はありません。……むしろ、もっと広まってもらいましょう」
私は、莉奈が動画をアップした際に使用したIPアドレス
そして彼女が動画を編集した際に「誤って」背景に写り込ませてしまった、ある書類を拡大した。
それは、彼女が私に泣きつき
直樹を裏切る条件として「金銭を要求」してきた際の、彼女自身が作成したメモの断片だった。
「……莉奈さん。あなたは忘れているのね。私がどれほど執拗に『数字』と『記録』を愛しているかを」
私は、莉奈とのこれまでのやり取り——
彼女が私に縋り付いてきた時の録音
そして彼女が直樹の裏口座から私的に金を引き出そうとしたログのすべてを、一つの特設サイトにまとめた。
サイトのタイトルは、『1円も嘘のない、真実の貸借対照表』。
莉奈の涙の告白動画のすぐ隣に
彼女が金を要求し、私を嘲笑っていた時期の生々しい音声データが並ぶ。
クリック一つで、彼女の嘘がメッキのように剥がれ落ちていく仕掛けだ。
「……送信」
一時間もしないうちに、ネット上の空気は一変した。
「悲劇のヒロイン」を演じていた莉奈は、一瞬にして
「希代の嘘つき」として全世界から指弾されることになった。
その日の夜。私のスマホに、莉奈から狂ったようなメッセージが届いた。
『死んでやる! お前のせいで、もうどこにも行けない! 全部お前のせいだ!』
私は、そのメッセージに一言だけ返した。
「死ぬ勇気があるなら、まず自分の犯した罪を返済してからになさい。あなたの『嘘』という負債は、もう私の帳簿では処理しきれないほど膨らんでいるわ」
それっきり、莉奈からの連絡は途絶えた。
翌朝
彼女は偽証と名誉毀損の疑いで、警察に任意同行されたという。
直樹も莉奈も、感情や嘘で世界を動かせると思っていたかもしれない。
でも、最後に残るのは、揺るぎない事実と数字だけ。
私は、新しい家計簿を静かに閉じた。
ノイズは消えた。
次はいよいよ、会社という名の「巨大な負債」を、解体する手続きに入る。
【残り64日】