屋上から飛び降りても充分生き残れてしまいそうな高さしかないマンションの、1階にある手前から2番目の自宅。
もう二度と帰らないと思っていた場所に着いてしまった。
一応自宅とはいえ数週間ぶりにいきなりドアを開けて入るのは変だと思い、紙塔という文字が掘ってある表札の真下にあるインターホンを押す。
年季の入った壁の向こう側から足音が聞こえてドアが開き、見覚えのある姿が現れた。
「あ〜、その……ただいま。」
「來雨!本当にたくさんの人に迷惑かけて……!」
怒と哀が混ざったような表情で母親は言った。
「來雨が床を壊したり家出をした所為で離婚したのよ!全部、全部來雨が私の幸せを壊して……どう責任取ってくれるのよっ!」
母親は涙を少し流しながら私に叫んだ。
(いつのまに離婚してたのか。私が色々としなくても離婚しそうな雰囲気だったけど。)
「まぁ……床壊してごめん。そんなことより、お兄ちゃんはママの元にいる?それともパパの方に?」
「あいつのところに着いていったわ……來雨じゃなくて奇晴を育てたかったのに。そもそも、來雨は産みたかったから産んだわけじゃないのよ!」
(じゃあなんでお前は産んだんだよ。)
母親の言葉を無視して室内に入る。
玄関に置いてある靴が減っていて、玄関の様子が寂しく感じた。
マタールナによるレーザーで床を壊した部屋へ、真っ先に向かう。
床は板材で修復されてあったが、修復された板材と元々の床の板材の種類が違うため、かつて壊した部分がどの範囲だかすぐわかる。
「この部屋で暮らして、他の部屋に行くのは必要最低限なときだけにしなさい。」
私が部屋にいるのを見た母親は、そう言い残して勢いよく扉を閉めた。
(マタールナは本来は子宮があるはずの部分に入れてるから、一応逃げれる……でもすぐに捕まるだろうな〜)
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翌日
今日から中学校に登校する。
私が家出をしたときは夏休み中だったとはいえ、夏休みが終わってから1週間と3日経っている。
学校用のカバンに教科書や宿題、そして本来なら持っていってはいけないが私の全財産が入った財布をつっこむ。
(家出の前に日記以外の宿題終わらせていて良かった。)
マタールナとの化合に使える物質が家の中にあるか探したが、アルミニウムが少しあったぐらいだった。
「ママ、朝食は……?」
「來雨にだす朝ご飯なんて作ってるわけないでしょ。さっさと学校行きなさい!」
「はいはい。」
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