テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「俺に相談されても困るんだよなぁーっ!」
『どうした』
仕事机の前で頭を抱えて叫ぶと、千歳(朝霧の忌み子のすがた)が声をかけてくれた。
「えーとその……俺の働くグリーンライト、また社員が増えます」
『それでなんか困るのか?』
「嬉野さんっていうんだけど、おっさんばっかの会社に22歳の女の子来たら、どう対応すればいいのかって……」
『おっ、仕事仲間に女入るのか! 口説け! 落とせ!』
千歳は色めき立った。
「そういう問題じゃないの! ていうかお互い気持ちよく仕事するためにはいきなりそう言うの一番アウトだから! 俺達はお互い気持ちよく仕事できる間柄になりたいの!」
俺は千歳に説明した。嬉野さん(22歳女性)は主にグリーンライトと取引をしているフリーWebライターだったが、仕事の覚えがいいし今後ももっと伸びるだろうし、ということでグリーンライトに雇われることになったのだ。
ただし、現在のグリーンライトの方にひとつ懸念がある。全員男性、しかもおっさんばかりだということ。社員顔合わせを兼ねて、そのうち嬉野さんの歓迎会をやりたいのだが、俺達先輩社員がウザいおじさんにならないためにはどうすればいいのか……と久慈さんがさっきまで俺にSlackで相談しに来てたのだ。
「どうすればいいと思います? どうすれば嬉野さんにおっさんたちに萎縮しないでやってもらえると思います?」
「そんなこと言ったって、私もおっさんですよ?」
「でも和泉さん嬉野さんと一番年近いし!」
「でも30と22ですよ!?」
「それはそうなんですけど!」
結局いい案が出なかった。俺にどうしろというのか。
一通り千歳に説明すると『気にしいだなあ』と呆れられてしまった。
「だって、嬉野さんに人間関係でやめられたら元も子もないんだもん」
『まあ、働き手減ったら困るけどさ』
千歳は少し考え、そして言った。
『あかりさんにでも聞いてみたらどうだ? お前があれこれ考えるより、その嬉野さんと年の近い女の子のあかりさんに聞いたほうが絶対いい』
「あー、なるほど……」
金谷さん19歳、嬉野さん22歳。二人とも女の子、3歳違い。まあ金谷さんに聞くのが安牌だな……。
その日の夜、全く千歳に関係ないことであり個人的な相談で申し訳ない、と金谷さんにLINEして、かくかくしかじかを伝えるとこう返事が来た。
「セクハラ厳禁は前提として、変に特別扱いしないで、同じ人間として接してくれるのが一番ありがたいと思いますよ。気持ちよく一緒に仕事したいなら、絶対それが一番です」
「でもおっさん側がそのつもりでやってても、相手側からしたらアウトかもしれないので自分が信用できないんですよ……」
「少なくとも、和泉様はぜんぜん大丈夫ですよ」
「そうですか?」
「他の人のことはよく知りませんけど、和泉様基準で動けば問題ないと思います」
これ、ほめられたのかなあ。
とりあえず金谷さんにお礼を言い、俺は明日久慈さんに金谷さんのアドバイスを伝えることにした。
『あかりさんのアドバイス、役に立ったか?』
「割と。金谷さんに聞いてみろって言ってくれてありがとね」
千歳がいなかったら、金谷さんに相談する発想がそもそも出なかったなあ。愚痴を聞いてくれて、それに対して提案してくれる人がいるの、本当にありがたい……。
#幽霊
凛道桜嵐 新
193
#日常
がくじゅつてき・あかげ
22,155
わーい
41
485
コメント
1件
522話おつかれさまです〜!おっさんばかりの職場に若い女性が入るってだけで緊張するの、めちゃくちゃわかります(笑)。でも金谷さんの「特別扱いしないで同じ人間として接する」ってアドバイス、シンプルだけど一番正解だよなあとじんわりきました。千歳が「あかりさんに聞いてみたら」って提案するところも、ちゃんと頼れる仲間がいるんだなって温かい気持ちになりました。ほんわかする回でした!