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冷たい夜の空気が部屋の窓から静かに流れ込んでくる。美咲はベッドの上に座り、手の中でスマホを見つめていた。画面には彼女が選んだ「償い」の結果が表示されていた。そこに映し出された言葉は、彼女の心をさらに重くした。
「償い完了。次のミッションへ進みます。」
彼女は背筋が凍るような感覚に襲われた。自分が「選んだこと」は何だったのか。あの瞬間、自分は他者の命を犠牲にしたのか?それとも、何か別の形で「償った」のか。どちらにしても、心の底に渦巻く後悔と罪悪感は消えない。
そのとき、スマホがまた一度、冷たく震えた。
「新しい依頼が届きました。」
画面には「2」という数字が浮かび上がっていた。シンプルな数字。しかし、何を意味するのかは、美咲にはまるでわからなかった。
「2…?どういうこと?」
不安な気持ちを抱きながら、美咲は再びアプリを開いた。表示されたのは、以前と同じようなミッション画面だったが、今回は「2つの善行を行うこと」というメッセージが表示されていた。
翌日、美咲は恐怖に押しつぶされそうになりながらも学校へ向かった。クラスメイトたちは先日の事件の話題でもちきりだった。山田の死は、学校中に広がり、美咲の頭の中では彼の姿が何度も蘇っていた。
だが、今日はいつもと違う異様な光景が彼女の目に飛び込んできた。教室の後ろには、二人の生徒が座っていた。彼女はすぐに彼らが「新しい生徒」だと気づいたが、何かがおかしい。彼らの目は無表情で、まるで生きていないかのようだった。
「誰…?」
美咲は思わず隣の席の友人に尋ねたが、友人は彼女を見つめ、不思議そうな顔をした。
「何言ってるの?ずっと前からいるじゃん、あの二人。」
その答えに、美咲は心臓が跳ね上がるような感覚を覚えた。前からいる…?そんなはずはない。昨日までこのクラスに「2人」など存在しなかったのに。
美咲は一日中、その2人の生徒から目を離せなかった。彼らはまるでクラスメイトたちと普通に接しているように見えたが、何かが明らかにおかしかった。彼らは笑わない。話すときも、声には感情が含まれていない。それはまるで「人形」のようだった。
放課後、美咲は教室を出るときに、ふと振り返った。すると、その2人が自分をじっと見つめていた。冷たく、無表情な瞳。美咲の背筋に寒気が走った。
「何なの…あなたたちは…?」
彼女は震える声で問いかけたが、2人は何も答えず、そのまま廊下の向こうへと消えていった。
夜になり、美咲は再びスマホを手に取った。アプリを開くと、再び「2」の数字が浮かび上がり、次のミッションが提示された。
「あなたは2人の命を救うことが求められています。」
「2人の命…?」
美咲は恐怖に震えながらも、ミッションの内容を確認した。そこには詳細な指示が書かれていた。どうやら、その「2人」はただの生徒ではなかったのだ。
「彼らはあなたが償いを拒否したときに選ばれた犠牲者です。2人の命を救うためには、再び善行を行う必要があります。」
「また善行…?」
美咲は頭を抱えた。あの「善行」とは、決して普通の善意の行いではなかった。アプリが求める「善行」は、他者の命を奪うか、恐ろしい代償を要求するものだ。そして、その「2」という数字は、美咲が今後背負うべき新たな罪を示していたのだ。
彼女は苦悩しながら、アプリを見つめ続けた。このままでは再び人の命を奪うことになる。しかし、それを拒むことで2人が死ぬというのなら、どちらを選んでも地獄のような結果が待っている。
数日後、美咲はついに決断を下した。アプリに従うしかない。だが、彼女はこの「功徳アプリ」を止める方法を探し始めていた。この恐怖の連鎖を断ち切るために、何かを見つけなければならない。
そして、彼女はその決断がさらなる恐怖をもたらすことに気づくのは、まだ先の話だった。