美咲は、アプリの画面を何度も見つめながら、深い息を吐いた。これ以上、アプリの指示に従うことはできない。善行という名の下に、あまりにも多くの罪を犯してきた。そして、2という数字が示す2人の運命が自分にかかっていることに気づき、彼女の心は限界に達していた。
「もう、終わりにしなきゃ…」
その決意の下、美咲はスマホを手に取り、「功徳アプリ」をアンインストールする方法を探し始めた。しかし、アプリの設定画面にアクセスしようとしても、「削除」というオプションが見当たらない。焦る美咲は、スマホの設定から無理やりアプリを削除しようと試みた。
「アンインストールしますか?」
その確認メッセージに、彼女は希望を感じた。これで解放される、と信じていた。震える指で「はい」をタップした瞬間、スマホの画面が突然真っ暗になり、数秒後、異常なほどの静寂が部屋を支配した。
しかし、スマホが再び点灯したとき、ホーム画面に戻った視界に、再び「功徳アプリ」のアイコンが映し出された。
「嘘でしょ…」
アンインストールに失敗していた。それどころか、アプリはますます彼女に執着しているかのように、画面上に以前よりも強調されて表示されていた。アイコンが揺れ、赤く光っているように見えた。
その夜、美咲は夢の中でアプリに取り憑かれたかのような悪夢を見た。夢の中の彼女は、何度も「アンインストール」のボタンを押し続けたが、アプリは消えるどころか、彼女の全身に染み込んでいくように感じられた。指先から冷たい感覚が広がり、アプリが彼女の中に流れ込み、支配しようとしているようだった。
目が覚めると、汗でびっしょりだった。鼓動は速く、息が荒い。美咲は慌ててスマホを確認したが、アプリは消えていない。それどころか、新しい通知が届いていた。
「制限時間が迫っています。」
その通知が表示された瞬間、部屋の空気が重くなったように感じた。次の「善行」を果たさなければ、アプリが何をするかわからない。それでも、もうこれ以上、誰かを傷つけることはできないと決意した美咲は、強硬手段に出ることにした。
「もう…終わらせるしかない」
スマホを手に取り、彼女は最後の手段に出た。スマホそのものを破壊することに決めたのだ。ハンマーを手にし、恐る恐る画面に向かって振り下ろす。
ガシャーン!
画面は粉々になり、液晶が破れ、電源が完全に落ちた。美咲はしばらく放心状態でその場に立ち尽くしていた。これで終わったはずだ。そう信じたかった。スマホが壊れれば、アプリも消えるはず――そう思った。
だが、安心するのは早かった。翌朝、彼女が学校に向かう途中、奇妙な違和感が彼女の背後に漂っていた。誰かに見られている気配。振り返ると、そこには誰もいない。しかし、その視線は消えない。
そして、学校に到着し、ロッカーを開けた瞬間、彼女は絶望に包まれた。
ロッカーの中に、元通りの状態になったスマホが置かれていたのだ。画面は無傷で、壊れたはずのスマホが再び美咲の前に現れた。そして、画面にはアプリの通知が表示されていた。
「時間が残りわずかです。」
美咲はその場に崩れ落ちた。涙が溢れ出し、震える声でつぶやいた。
「もう…無理…」
それでも、スマホは冷たく、機械的に次の指示を送り続ける。
「アンインストールできません。アプリはあなたの善行が完了するまで、消えることはありません。」
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