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みことはキッチンの端で

湯を沸かしていた。

カップの中には

まだ何も入っていない。

それでも、手は止まらなかった。

___見える。

断片的に。

音も、匂いも、感情もない。

ただの“場面”。

暇72が、

窓の外を見ている。

誰も叫ばない。

誰も殴らない。

ただ、同じ場所にいる未来。

「……」

みことはその先を見なかった。

未来は、

覗きすぎると選択を奪う。

だから、


今必要な分だけ。


今日の未来は、大丈夫。

それだけ分かれば十分だった。

湯が沸く音がして現実に戻る。

「おはよう」

声をかけると、

暇72は、少し遅れて振り向いた。

「……おはよう」

声は小さい。

でも、逃げない。

みことは、

それを”成功”だと思った。


朝食は豪華じゃない。

パンと、

スープと、

焼いただけの卵。

でも、机の上には”足りている”があった。

俺は黙って食べていた。

音を立てない。

急がない。

___残したら、怒られる?

思考が浮かんで、

すぐに消える。

誰も皿の減りを見ていない。

こさめがぽつりと言う。

「こさね、嘘じゃない朝、好き」

誰も突っ込まない。

LANはコーヒーを一口飲んでから

「今、言わなくてもいいけどさ」

と、前置きした。

「言いたくなったら、言っていい」

それだけ。

手が、止まる。

喉が、ぎゅっと縮む。

言葉は、怖い。

でも、

「……」

一度、息を吸って。

「……ありがとう」

声はかすれていた。

でも、ちゃんと届いた。

誰も拍手しない。

誰も大げさに喜ばない。

ただ、

「どういたしまして」

と、いるまが言った。

それだけで、

胸の奥があたたかくなった。


食後。

誰かが玄関の方を見た。

外は明るい。

「……外、出る?」

みことが聞いた。

命令じゃない。

一瞬、固まる。

心臓が早くなる。

でも、

「……今日は、出なくていい」

すちが先に言った。

「準備だけ、してもいいけど」

準備。

出なくていい準備。

靴を揃える。

上着を触ってみる。

それだけ。

俺は玄関に座り、自分の靴を見る。

___まだ、怖い。

でも、

「……いつか」

小さくそう言った。

誰も聞き返さない。

誰も約束にしない。

ただ、

そこに置く。

未来は、

まだ、決めなくていい

今は家にいる。

それだけで十分だった。

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