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「バブ」
「クウ~ン」
遺跡のような巣窟を進んでいくと大きな扉が現れる。僕が声を上げると白い子犬も相槌を打つように声を上げる。
僕が赤ん坊っていうのもあるけど、流石に大きすぎる。巨人でも通るかのような扉だ。
「ワンワン!」
「バブ?」
子犬が吠える。吠えている方向を見ると扉の前の両端から大きな盾を持つゴブリンが現れる。
さっきまでのゴブリン達よりも明らかに大きさが違う。上位種って奴かな?
「ゴア! ゴアゴア!」
「バブ!?」
大きなゴブリンが大きな斧を投げ込んでくる。僕は驚きながらも斧を水の魔法で叩き落とす。ついでに奴らに水魔法をかける。後は簡単だ。
「バブ!」
雷の魔法を放ち一掃していく。武器や防具を残して大きなゴブリンは消えていく。あの武器や防具は使えないな。僕には大きすぎる。
『称号【生まれて一年以内にハイゴブリンを倒した】を獲得しました』
『レベルがあがりました』
「バブ!?」
大きなゴブリンはハイゴブリンというらしい。
そして、レベルもアップ。楽しすぎるな~。
称号とレベルアップの声にワクワクしていると扉がゴゴゴと音を立てて開きだす。まるで今のハイゴブリンを倒したから開いたみたいな反応。
「グルルルル」
「バブ……」
扉の先、大きな部屋が広がっている。部屋の中には明らかに大きさの違うゴブリンがいる。子犬が威嚇をしてるけど、敵対してるのかな?
跪いているのに3メートルはあるか? 立ったら7メートルくらいになるんじゃ?
あれを倒さないといけないの? 明らかに赤ん坊の倒す相手じゃないような気がするんだけど?
まあ、やるしかないかな。レベルも上がるかもしれないし。危なかったら逃げればいいしね。
「バブバブ」
僕は軽い気持ちで扉をくぐる。子犬もおびえながらも僕の後ろに隠れるようについてくる。
待っていればいいのにと思っていると大きな扉がゴゴゴと閉まり始めた。
……あれ? これってもしかして逃げられない奴? そう思っていると、
「愚かな人間。ロードに挑むか。その不敬、死をもって償うがいい」
跪いて待っていた大きなゴブリンがそんなことを言って僕を睨みつけてくる。
ロード? もしかして、このゴブリンはゴブリンロード? そんな悠長に考えているとロードが立ち上がって地面から剣を作り出す。土魔法!?
「バブ!?」
「キャン!?」
ロードが土の剣を大きく振りかぶる。
土というよりも岩のつぶてが襲い掛かってくる。つかさず僕は水の壁を作り出してガード。こんな魔法使ったことないから難しい。
「赤子だというのに今の攻撃を防ぐか。流石はキングを倒したものだ」
ロードはそう言うと数歩ユウユウと近づいてくる。
余裕が見える。僕は怖い、あんな大きな巨人に勝てるわけないじゃないか。シディーさんは本当にこんなのを倒せると思ってるの?
「ワンワン!」
「バブ!?」
僕と同じように怯えていた子犬が声を上げて僕を咥えて走り出す。背中に乗れと言わんばかりに唸り声をあげてくる。
「バブ?」
「ウ~、ワン!」
子犬は自分も怖いくせに僕を乗せて戦おうとしてくれる。こんな子犬が戦おうとしてるのに僕はなんて馬鹿なんだ。
相手が強くて大きいからって逃げても仕方ない。またあんな死を迎えるのは嫌だ。ルードやオリビアを悲しませるなんて、僕は嫌だ!
「バブバブバ~!」
魔法球を作り出す。大きな大きな雷の球。水魔法をロードに浴びせる。
「雷に水? お前達もくらうぞ?」
「バブ」
ロードは僕の様子を伺って感心して見せてくる。僕はその余裕に空を飛んで答える。
僕が浮かせた魔法球を片手でつかんで子犬を足で持ち上げる。不格好な飛び方だけど致し方ない。
そして、片手で雷の大きな魔法球を水の魔法で力いっぱい撃ちだす。
魔法のパワーが強くなってる。レベルアップのおかげか。雷の魔法球はロードを壁まで吹き飛ばしてその場で爆ぜた。黒焦げになるロードが口から煙を立たせる。
「……神か。お前は人の神だとでもいうのか?」
黒こげのロードが訳の分からないことを呟く。僕は地面に降りて再度大きな雷の魔法球を作り出す。殺気よりも大きな魔法球、ロードと同じくらいの大きさ。これを撃ちだすには更に強い力が必要だ。溜めに溜めて!
「させると思っているか!」
ロードが土の大剣を投げてくる。土の大剣は雷の魔法球に当たって爆ぜる。雷の力に負けてしまったみたいだ。
僕は躊躇しない。今世は恵まれた環境ですくすく成長するんだ! こんなところで死んでたまるか!
「バブ~~~!」
「や、やめろ~~~~~~!」
僕の叫びに呼応するようにロードが断末魔を上げる。雷の魔法球が水魔法を纏って吹き飛んでいく。ロードに命中すると部屋全体に雷が飛び散る。
「クウ~ン」
「バブ……」
流石にやり過ぎたか。部屋全体が雷でピリピリしてる。子犬が帯電して毛が逆立ってるよ。
ロードは黒焦げで動けなくなってる。しばらくすると霧散して大きな魔石をのこして消えていった。そして、待ちに待ったレベルアップ。
『称号【生まれて一年以内にゴブリンロードを倒した】【伝説】【生まれて一年以内に伝説となった】を獲得しました』
『レベルがあがりました』
『レベルがあがりました』
『レベルがあがりました』
「バ、バブ!?」
す、凄い。称号が三つとレベルが3上がった。それだけ格上の相手だったのか。
ってよく勝てたな僕……。これも魔力アップの称号のおかげかもな。それくらいしか僕が勝てる要素はないし。
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ステータス
アルス
職業 赤ん坊
レベル6
HP 120
MP 620
STR 78
DEF 78
DEX 78
AGI 77
INT 310
MND 310
称号
【異世界転生者】【翻訳】【言語理解】
【生まれて一年以内に魔法】【MPアップ】
【セブン】【魔法の威力アップ】
【生まれて一年以内にゴブリンを倒した】【ゴブリンへのダメージアップ】
【生まれて一年以内にビッグフットを倒した】【物理攻撃にボーナスを得る】
【生まれて一年以内にゴブリンロードを倒した】【全ステータス1000アップ】
【伝説】【聖剣を扱える】
【生まれて一年以内に伝説となった】【剣を振ると光魔法で追加攻撃】
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「……バブ」
なんかすごいことになって来た。聖剣なんて勇者みたいなものじゃないか? ステータスのプラスはステータスの数字にプラスされないんだな。自分で理解する必要があるのか。
まあ、とにもかくにもロードでこの巣窟はおしまいだね。行き止まりみたいだし。帰ってシディーさんに報告しよ。