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薄暗い酒場の片隅。壁にかかった古びた地図を前に、冒険者たちが小声で話している。
「な、なあ…聞いたか?この国に、魔帝と呼ばれる者がいるってさ」
「ああ…奴か。あの、誰も生きて帰れなかった学院の事件を起こした…」
一人の若い冒険者が震える声で続ける。
「魔帝は、黒い甲冑に身を包み、声を失ったとも…いや、機械の声で話すっていう話だ。あの声を聞いた者は、皆、震えが止まらなくなるとか…」
別の老いた冒険者が、酒を舐めながら目を細めた。
「ふん、俺が聞いたのは、魔物を自在に創り出すって話だな。学院を襲ったのも、奴の仕業に違いない。誰にも姿を見せず、影だけで支配する…まるで化け物のような奴だ」
若者の一人が怯えながら問う。
「でも…その魔帝は、生徒や市民を傷つけることはないんだって…」
老冒険者は鼻で笑った。
「それがまた怖いんだよ。敵が誰に危害を加えるかわからない。学院の研究員や教授たちはすぐに対策を立てるが、奴の方が何枚も上手だから、誰も手が出せない…まさに『影の支配者』さ」
壁の隅で、少女がそっと呟いた。
「…でも、本当は誰も知らないのね。魔帝の正体も、どこから来たのかも…」
酒場の空気がひんやりとした。冒険者たちは皆、言葉少なにグラスを傾け、魔帝の名を口にすることさえ恐れている。
「魔帝…ロスティル…奴は、見えない場所で世界を動かしている…」
その名前は、酒場の奥まで静かに、しかし確実に響いた。