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萩原なちち
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ご飯に誘うのは気まずいか。いや、でも「友達」なんだから、今更意識することもないだろう。
「……またみんなでご飯の時、誘ってください。ほんっと楽しかったから」
「……うん。そうだね、そうする」
今、あからさまに話を逸らされた。もしかして、本当は怒らせたのか? さっきの失礼な言い草、やっぱり自分でもまずかったと思う。
「じゃあ」
「はい。また、明日」
小さく手を振って別れる。本当に送らなくて良かったのか? 明日あいつらに何か言われないか? いや、それよりカレンちゃんが安全に帰れるかどうかが問題だ。
「やっぱり――」
呼び止めようと振り向いたら、もうカレンちゃんの姿はなかった。……足早すぎない!? 陸上部なの? カレンちゃん!?
「分厚……。めっちゃ現像してくれてんじゃん」
手渡された封筒を開けると、一番上に俺の笑顔があった。きっしょ。俺、死ぬほど笑ってるじゃん。
「あれ、これ……」
一番最後の写真を引き抜くと、中からお札と白い紙がひらりと落ちた。
さっき冗談で言った五千円札と、あの相関図を書いたメモだ。
「……待ってよ、もぉ~~~!!!」
急に敬語になった理由も、陸上部並みの逃げ足の速さも、全部これが理由かよ! いつ書いたんだよ、これ。
俺に向けられた矢印の先にだけ、小さく「♡」が書き加えられている。
こんなの……最上級のラブレターじゃん!!
「カレンちゃん、女の子なんだって! ダメだって!!」
ダメだ、ニヤニヤが止まらない。なんなんだ、告白されたのなんていつ振りだよ。心臓がうるさくて、変に興奮してしまう。
明日からどうすればいい? もう、普通に「友達」のままじゃいられない。写真を見ていないふりをして、気づかないフリでも通すべきか。
けれど、それも何日誤魔化せる?
LINEでそれとなく話を済ませておくか。……だって、こんなの完全に「告白逃げ」じゃん! 次、俺から声をかけるしかないやつじゃん!
連絡先を聞くのを忘れていたから、いつきくんにLINEで聞けばいいか。
『は? なんで?』
『プライバシーの問題だから。ちゃんとカレンちゃんから直接聞いて』
『俺らはカレンちゃんの前でグループ組んでますからね? 常識ですよ、だいきくん』
「ああ、もうめんどくさい! なんなの、プライバシーって!」
『いつも口うるさく言ってるの、だいきくんですからね』
皆んなしてそんな結託する事ないだろう。特にいっちゃん、めちゃくちゃ冷たい。絶対俺らの事勘ぐってるだろ?
なにも始まらないからね? 女の子は絶対「ない」からね!?
翌朝、緊張のあまり横目で会釈しかできなかった。向こうも話しかけてこないし、空気は最悪だ。
けれど、このまま自然に友達解消……それだけは絶対に避けたい。
今のこの関係だけは、絶対に壊したくないんだ。
♢♢♢
意を決して昼過ぎに受付へ向かったものの、カレンちゃんの姿がない。
……しゃあない。もう一人の子に話しかけてみるか。
「今、社長室に呼ばれてまして。戻りましたら、ご連絡しましょうか?」
「あ、いや……。……やっぱり、お願いできる?」
「はい、承知いたしました」
私用でこの子を動かすのもどうかとは思うけれど、この機を逃せば、一生緊張して話しかけられない気がする。今はもう、彼女に託すしかない。
「……あ。昨日、すごく着物綺麗だったね。あれ、自分たちで写真は撮ってないの?」
「え?」
「あ、いや、ナンパとかじゃないよ!? 俺、和服が好きでさ。もうちょっとちゃんと見たかったなって思っただけだから」
うわ、言い訳が下手すぎる。めちゃくちゃ女好きみたいで、自分でも嫌気がさすな。
「……あ、撮りましたよ。お送りしましょうか?」
「え? いいの? できれば、赤い着物の方もあると助かるんだけど」
「もちろんです。カレンちゃん、可愛かったですもんね?」
にこぉ、と満面の笑みで言われ、照れくさくて返事が詰まった。
いや、違うから。俺は着物が見たかっただけで、カレンちゃんはその「ついで」なんだからね。
「あ~!! だいきさん、ダメですよぉ。お仕事中にナンパしちゃあ」
カウンターの隅でこっそり画像を送ってもらっていたら、カレンちゃんが戻ってきた。……最高にバッドタイミングだ。
「ナンパじゃないよ。ちょっと資料落としてないか確認してもらっていただけ。だよね、ミレイちゃん?」
「ハイ、ナンパジャナイデス」
「めっちゃ棒読みやん! 絶対ナンパやろ?」
「ハイ、ナンパジャナイデス」
「ロボットみたいになってるじゃん……。なんなの、この会社の受付嬢は変な人ばっかりなんだけど」
カウンター越しに馬鹿笑いしていたら、来客があって慌ててその場を後にした。
――なんだ。俺、案外女の子も平気になったかもしれない。
……まあ、今のところ、あの「ちょっとおかしい二人」限定だけど。
「うわっ、めっちゃ機嫌良く帰ってきたじゃないですか。カレンちゃんと何かいいことありました?」
「いや、ちょっと話弾んじゃって。もう一人の受付嬢の子も、めちゃくちゃ面白かった。あの二人、いいコンビだよね」
「珍しい! だいきが女の子を褒めてる!」
いつきくんが素で驚いている。俺だってさ、カレンちゃんと「友達」になって成長しているんだよ。前までの俺とは一味違うんだぜ?
「あ、そういえば。あの二人、どちらかが社長の娘さんだって噂、ありませんでしたっけ?」
いっちゃんが不意に、そんな話題を振ってきた。
「確か、お兄さんが後継ぎを断ったから、婿養子を取らなきゃいけない……みたいな」
「あ、俺もその話聞いたことある。今の奥さんは後妻で子連れ再婚だったはず。前妻との間のお子さんが、娘さんだったような……」