TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

王立フューチャー学園の合格発表から早一ヶ月が経った。

この一ヶ月は変わらず冒険者の依頼、ゼフとの訓練を繰り返し行う。

ただ、一つ変わったことといえばクーインが冒険者ギルドに登録をしたことだ。

今まで入試の勉強、魔法の練習をしていたクーインだが、ゼフからの実戦の経験をしてはどうかというアドバイスをもらい、ギルドへと登録したのだ。

ただ、何故今まで登録しなかったのかと言えば、母親から反対されていたことが原因だ。

俺は学園に入学するならある程度の実戦はしておいたほうが良いと思った。

そこで俺とゼフが実際にクーインの母親の元へ訪れて説得をした。

俺が訪れたとき、クーインの母親はかなり驚いていた。

クーインは俺のこと話していなかったのか疑問だったので確認してみると、クーインの母親は話半分で聞いていたらしい。

ちなみにクーインは、自分の母親の驚いた反応を見るなり笑っていた。

最初は驚いていたクーインの母親は、途中からぎこちなさは残りつつも、話し合いに参加する。

結果、俺とゼフが付いていくことの条件付きであるがすんなり許可をくれ、そして頼まれごとをされた。


「息子と仲良くしてあげてください」


そう言われた。

クーインの母親が教えてくれたのだが、クーインは捨て子らしい。

旦那さんは結婚してすぐに他界してしまい、その後すぐに捨て子のクーインを拾い、それから女で一つで育てたとのこと。

こんな辛い過去を話してもらって大丈夫だったのか?

そう問いかけるも、「アルト様には知っておいてほしかったのです」と返された。俺は「クーインは親友です。任せてください」と返すと、クーインは母親は「お願いします」と笑顔で言ってくれた。

この一件で俺はクーインについて知らなすぎだと実感した。

今後、友人付き合いは長く続くだろう。

だからゆっくり知っていこう。そう決めた。



そんな一幕があり、無事に許可が降りた為、現在俺、クーイン、ゼフの三人は討伐依頼を受けている。

依頼内容はオークの討伐。

初心者には少し難しい依頼かもしれないが、俺もゼフの二人がいるから問題ない。

俺はソロでオークを狩れるし、ゼフは俺を圧倒する実力を誇る。

それに何かあった時の対応については話し合い入念な打ち合わせをした。

作戦としては俺が至近距離で翻弄、ゼフが中距離で俺の援護とクーインの護衛、クーインが後衛でトドメのための魔法を放つ。

クーインは純粋な魔法使いだ。属性は土。

一番属性持ちが多いと言われ、評価されづらい面がある。

しかしそれは扱う人間次第。

クーインは平均を上回る魔力量を誇っている。

普通平民でここまでの量の人はそういない。

貴族の血が混ざっていればわありえるのだが………。

クーインは捨て子、もしかしたらどこかの貴族の血が混ざっているのかもしれない。

まぁこの話は置いておこう。

それに本人も気にしているかもしれないから、このことについては触れないほうがいいかもしれない。


クーインは紛れもない天才だ。

余裕のある魔力量、戦闘においての発想の転換、対応能力は普通の冒険者を逸脱している。

本当に羨ましい。

俺がこのくらいの才能があれば訓練で苦労することなかったろうに。

もうどうでもいいが……。

しかしそんなクーインにも弱点が存在する。

それは近接戦闘。

クーインは俺と違い、体術等を習った経験がない。

そのせいで接近されてしまったらおしまい。

でもクーインはそれを自覚し、逆に弱みではなく、強みに変えるための訓練をし始めている。

現在のクーインは純粋な魔法使いタイプだ。そして接近戦にも対応可能な万能な魔法使いを目指して訓練をしている。

本当に努力家だなと常々思う。

まぁ、だからこそ王立フューチャー学園を合格できたのだろうが。


閑話休題。


俺たちは今一体のオークを観察している。

逸れオーク、運がよく見つけることできたのだ。

クーインの初めての実践としてはいいシチュエーション。

俺たち三人はターゲットを決め、お互い視線を合わせ全員準備ができたことを伝えた。

俺たち三人の基本作戦は、俺とゼフがクーインが魔法を完成させるための時間を稼ぎ、クーインがトドメを指す。

もしもダメなら俺とゼフが補助に入る。

いろんなシミュレーションをし、何が起きても平気なようにした。

準備万全。

俺はまずオークの気をひくために『身体強化』を行い、斬り込む。

もちろん相手の死角からだ。


「ブニョ!」


奇襲は成功!

驚きオークは悲鳴をあげる。

オークは混乱して周囲を見渡す。

俺はすぐにわざとオークの視界に入り注意集める。

今回、俺はやろうとすれば『部位強化』を使えば初撃で倒せた。

しかしそれをやらないのはあくまでクーインの実戦訓練だからだ。


「ブギャ!」


オークは俺に気付くとすぐに手に持っていた長さ1、5メートルほどの棒で右上から振り下ろしてくる。

俺は八相の構えのまま右に大きく避ける。


ドン!


オークの攻撃で棒で叩かれていた場所はクレーターができていた。

……その場にいたら即死してたなこりゃ。

俺は眉間の先に『バレット』を二つ生成。

オークがこっち向くのを確認後すぐに放つ。


「ギャ!」


魔力の弾丸が着弾、オークは悲鳴をあげ目を押さえる。

俺はオークの動きが一瞬止まったことを確認したら、距離を取り視線をクーインに向ける。

魔法の構築具合を確認するためだ。

……後約十秒といったところかな?

魔法構築までの秒数確認を終えたら、オークと向き合う。

オークはまだ目を回復しきっていないのか動きが鈍い。

俺はそんなオークの方面に走り始める。

役目はあくまで囮。

オークとの距離が大体三メートルほど、オークが本能的に勘違いするギリギリまで近づいた後、突進するフリをやめて左へ大きく飛ぶ。


ドン!


オークは俺のフェイントに引っかかり、棍棒は空振りをし、またも地面にクレーターを作った。

そして、俺は体の向きはオークに向けたまま、またも『バレット』を二つ生成しオークに撃ち込む。

しかし今度は外れて数秒の再起不能は叶わなかった。


「ブギーー!」


俺との戦闘でオークは怒っていた。

そして怒りに任せて俺に向かってきた。

狙いは成功!

俺は元々奴を怒らせることが目的。怒りは頭の回転を遅くし、視野を狭くする。注意を俺に向けさせることに成功した。

だが、もう俺の役目は終わったようだ。


「アルト!」


クーインが俺の名を大声で呼ぶ。それを聞いた俺は、射線を開けるため大きく左へと飛ぶ。



「ギャ!」


次の瞬間、クーインが発動させた魔法で生み出した、長さ二メートルほど、太さ五〇センチほどの先が尖った物がオークを貫通する。



オークは叫びと共に魔素が消えて魔石のみが残る。

クーインは魔法発動から発射まで大体十秒かかる。

これでも十分早く、威力がある。

本当に才能というものはすごい。

まぁ、とにかく作戦は見事に成功、オークの魔石を回収した後クーインとゼフのところへ向かった。


「お疲れ様!流石だなクーイン」

「そちらこそお疲れ。いや、そんなことないよ。今回の戦闘は全部アルトのおかげだよ。僕はアルトが狙いやすいように誘導したオークに魔法を放っただけだし」

「そんなに謙遜しなくいいのに。初めての実戦で正確に魔法を当てるのはすごい。それに今の戦闘でそこまで分析できるなら大丈夫だよ。今後それを課題に訓練、工夫をしていけばいいから」

「そうなの?」

「そうなの。実際俺もそうだったし」


本当にその通りだ。

俺はひたすら訓練、工夫の繰り返しで今のレベルまで到達できた。

だけどクーインは何か焦っているみたいだな。

大丈夫だと思うが、念のため釘を刺しておくか。


「同じことを言うけど、クーインは今回が初めての実戦なんだ。そして自分に何が足りないのか、やらなきゃいけないのか、それを明確に分析している。あとはその分析を次にどう活かすか、どう改善するか、それが大切なんだ。そこまで焦らなくてもいいよ」

「そうか……」

「クーインさん、アルト様のおっしゃる通りです。焦らずにやっていきましょう。……それに本日はまだまだ時間はあります。何か考えがあるのでしたら次の戦闘で試してみればよろしいのでは?」

「……そうですね。分かりました」


さすがはゼフだな。

クーインは俺の話では納得はしていないが、ゼフの意見を聞いたらすんなり受け入れた。

結果はどうあれこれで良かった。

そしてこの後も三人で討伐依頼を続けた。

結局ゼフは俺とクーインにアドバイスはしたが戦闘に参加することはなかった。

ただ俺とクーインの戦闘中、周囲の警戒は続けるが俺の動きをずっと見られている気がした。

まぁ、何も言われなかったから気のせいなのかもしれないが……。

今日の成果はオーク四体、ゴブリン六体。

初めてにしては結構討伐できたと思う。

無事に依頼を達成。依頼終了後はクーインの初依頼達成の祝賀会をしたいと思ったのだが、クーインが母親を心配させたくないとのことだった為今日は解散した。

loading

この作品はいかがでしたか?

22

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚